38 始まった
「はい!
これで全員行き渡った? 行き渡ったね?
それじゃあ改めて。」
「よろしくお願いします!」
最初の挨拶はどうやら正解だったようで、女性陣にもそれなりに好意を持って受け止めてもらえたらしい。
開始の挨拶として、今回の発起人らしい金髪の女性、
改めて合コンが開始された。
「よーし、それじゃ改めて、みんな配った名札は付けたかにゃー?
軽く全員で自己紹介してから本格的に始めよお!
まずはあたし!
同期の平林くんから高校生相手の合コンを紹介されました、
彼氏は、いません!」
ショートに整えられた金髪の女性、草津さんがカップ片手にディスプレイ前に立って自己紹介をした。
改めて聞いたが、大学のOBの先輩が世話をしてくれたというのは本当のようだ。
体育会系の見えない縦のつながりを改めて強く感じてしまう。
「えー、平林先輩とは一年だけですが一緒に部活させてもらった
今日はキレーなお姉さん方いっぱいでドキドキしています、よろしくお願いしゃっす。」
「比奈城と同い年の
違う部活ですけど、こいつとは仲良いんで呼んでもらいました、バスケしてます。
よろしくお願いします!」
尊敬すべき先輩たち、だったはずなのだが微妙に固くなりながら杯を掲げている。
そんな先輩方の緊張を敏感に感じているのか、女性陣の方から小さく笑うような声が聞こえてくる。
「えっとぉ、私、
クーちゃんから誘われて来ましたぁ。
あ、クーちゃんっていうのは奈々ちゃんねぇ。草津で、クーなの。可愛いでしょ?
可愛い男の子と遊べるって聞いて、楽しみにしてきましたので一緒に遊んでくださいねぇ。」
「
一応、ストッパーのつもりで来ているので酒は飲ませてくれるなよ。
ほら、北川。」
「
文学部、二年。」
「あぁほら、名前だけじゃなくてちゃんと挨拶もしろ。
若い子があんなに元気に挨拶してくれたんだぞ。」
「……よろしく。」
五人の中では高めな身長で。一番胸が大きい茶髪セミロングのお姉さんが大村さん、ホワホワしているように見えるのだが、何だろう、時折こちらを見る表情に鋭さを感じるので、割と演技しているのだろうか。
黒髪で、型で切り揃えられたいかにもできる女って感じの人が瀬川さん。
ちょっと言葉は強い感じがする。
ロングの金髪だが根本だけ黒くなっている、いわゆるプリンヘアで俯きがちの北川さん、微妙に目線が合っていないような感じがして、視線の先を追うと俺たち男がいない隙間にその目を向けているような感じだ。
男に免疫ない系お姉さんなのだろうか。
「あ、はい。
今日は楽しみにしてました、えーっと、
よろしくしゃす。」
「ブッハ!塚っちゃんちょーガチガチ!
まじウケるんだけど。
んじゃー俺、
勝つ人間って書いてカツヒトでっす!
今日はぜひ彼女ほしいんでまじ頑張ります!
はい!
お姉さん!」
「え、えぇ?
えっと、
えっと、はい、それだけ、です。」
「えー?少ない少ない。好きなスポーツとか教えてよ。」
「す、スポーツですか?
わ、あんまり見ない、ですけど、その。」
「もったいねー! サッカーとか興味ないですか? 俺サッカー部っすよ!」
「お前ちょっと黙れ。」
「すみません、大久保さん。うちのバカが。」
名瀬に迫られ、たじたじになっていたのが大久保さん。
大村さんの隣で、大村さんの影に隠れるように引っ付いている。
守っているのかな、なんて思いもしたが、名瀬のぐいぐいくる感じに壁になろうとはしていなかったので、そこまでしっかり守る感じではないのだろうか。
結局先輩二人を動かすわけにもいかないので、俺と戸塚で立ち上がり、近づこうとしていた名瀬を無理矢理に席に戻す。
何も言わない先輩方が、微妙に怖い。
「いやー、元気いいね、名瀬くん!いいよいいよその肉食な感じ!」
「マジっすか! 奈々さんあざす! もっと褒めてください!」
火に油を注がないでくれ。
そんなことを思いながら、また立ち上がる名瀬をソファーに押し付ける。
「んじゃー、せっかくだし歌入れながら話そうか。
アイスブレイクはテキトーに行こう。
とゆーわけで、名瀬君、なんか歌って。」
「ラジャっす!」
「はい、そんじゃ他のみんなはこの名札に名前書いてねクリップで挟んでねー。」
なるほど、こうやってうるさい奴をまず外す方法もあるのか。
ただむやみやたらに延焼させるだけだと思ったが、さすがは大学生のお姉さん。
電目を操作し始める名瀬を尻目に、奈々さんが戸塚を見て、ウインクをすると、それを受けた戸塚の顔が真っ赤になる。
落ちたか。
そんなことを考えながら、先輩方の方に目を向けると、いつの間にやら固まっていた先輩方も席替えをしていたようだ。
やはり、経験者は違う。
どう動けばいいのかもわからない自分がやたらと子供のような気がして、つい目の前の全てに感心してしまう。
そんな感じで、俺にとっての初めての合コン、飲み会? は、女性に緊張するよりもお互いのやり取りを眺めて感心するところから始まったのだった。
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