番外編 BAR


『えー晴臣ってば甲斐田さんと

 ここで仲良くなったの?』



『いいだろ、別に。

 慎、呼ぶなら前もって教えろよ。』



金曜日、仕事終わりにハルと立ち寄った

慎さんのバーに行くと、先客として

カウンターに座って居たのが主任だったのだ



慎さんは夜の仕事で、主任は昼の仕事だから

こうして時間作ってるのかなとは

思っていたけど、今まで一度も

出会わなかったのが不思議なくらい馴染んでる



改めて見てもお似合いな二人だな‥‥



職場ではキリッとして優しい渡会主任も、

恋人の前だと甘えが増したただの人になる。



会社のみんなが見たら驚くだろうな‥‥



独身で見た目もカッコよくて優しいから、

慎さん心配にならないのかな‥‥



『奈央ちゃんごめんね。うるさくない?』



「はい、大丈夫ですよ。

 普段見れない主任が見れて新鮮です」



主任だけじゃなくて、

ハルが私には見せないような

男同士の友情の顔とか見れるのが

何気に楽しみだ



男三人に混じっても、仕事帰りで

大した色気もない私だからこそ

馴染めてるのかもと思う



『甲斐田さんさぁ、オフの日と

 どうしてこんなに見た目が違うの?』



ドキン



やっぱりそう思いますよね‥‥‥


主任には前にオシャレした私を見られてる。



仕事帰りなんて、Tシャツにパンツ、

自転車が多いから鞄だって

バックパックタイプのものが多いし、

日焼けが気になる季節は

髪縛ったままキャップを被ればいいかなって。



『奏、女性にそういうこと聞くの

 失礼だから辞めろ。』



慎さん‥‥私のこと女に見えてたんだ‥



「‥‥あ、えっと、ハルにだけ

 その‥‥可愛いって思ってもらえれば

 いいかなって‥‥」



自分でも言ってて恥ずかしくなり、

カクテルをゴクッと喉に流していく



本当のことだし、ハルにも伝えてあるから

今更なんだけど、慎さん達の前で言うのが

想像以上に恥ずかしかった



『奏さん、そういうことだから、

 これ以上彼女のことからかわないで

 くださいね。それに奈央は

 別にそのままでも可愛いですから。』



ドクン



『あーー晴臣の惚気なんて聞きたくない!

 慎、強めのお酒作って。』



『奏も可愛いだろ?俺の前では』



し、慎さん!?


私とハルのことなんて気にもせず、

カウンターから主任の手を取り絡めると

その手の甲にサラっとキスをした



‥‥‥大人の世界過ぎて

こっちの方が照れてしまう。



性別とか関係なく、

恋人同士ってやっぱり素敵だな‥‥



ハルと私がどう見られてるのか

分からないけど、これからも

自分らしく作り過ぎず、時々頑張って

寄り添えたらいいな。



「ハル」


『ん?』


「私もいつもハルがカッコイイと思ってるよ」



END





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