第13話 スキルアップ


「慎さん、今日もよろしくお願いします。」



ハルの異動先が無事に来月から決まった。



急な異動のため、

みんなが怪しく思わないように、

指導者とキャリア育成を兼ねて

本社からすぐの物流倉庫に

行くことになったのだ



ハルのスーツ姿が毎日見れるのかなと

期待はしていたけど、

作業着姿のハルもカッコいいから

私はどちらも好きなんだけどね。



引っ越しを前に、

食材をキッチンに並べた私は

慎さんとのお料理教室を

とても楽しみにしていた



だって‥‥ハルに色々してもらってるから、

一緒に住むなら料理をもっと覚えたい



なので、あれから週に一度忙しい慎さんの

貴重な時間を貰いながら

料理のレシピを増やしているのだ



『なんか奈央ちゃん変わったね。』


「えっ?私変わりました?」


『んー、いい意味でどんどん素敵に

 変わってってるよ。』



素敵‥‥‥


カッコいい慎さんに言われると

少し恥ずかしいけど、私が変わったとしたら

ハルの存在が大きいから、

素直に嬉しいな。



引っ越しのため荷造りしながら

時々自分の家に帰り、

殆どをハルのマンションで過ごしている。



家具とかは社長が全部持ってっていいって

言ったけど、それもスタートを兼ねて

二人で全部選び直したいって伝えて、

週末映画を見るのを辞めて、

二人で色々出掛けて見たりしていた。



部屋も広めの2LDKで良さそうな物件が

見つかったので、準備は色々進んでいる



だからこそ私は今できる料理を頑張りたい



『慎、悪いな。頼まれた仕事残ってて。』


『おう、気にすんな。』


『サンキュ。‥‥奈央楽しみにしてる』



ドクン



なんか最近のハルは益々色気が増してる。


ふとした仕草や表情ひとつひとつに、

情けないくらい体が反応して

恥ずかしい‥‥



「うん、頑張る。夕飯楽しみにしてて。」


そばまで来たハルが私の頭を撫でると、

嬉しそうに笑って自分の部屋に行ってしまった



『‥奈央ちゃんだけじゃなく、臣もだな。』


「えっ?」


『ううん、じゃあ時間許す限りやろうか。』


「はい!よろしくお願いします。」



いつもはおつまみとか軽い食事メニューや

洋食中心が多かったけど、体のこと考えて

ヘルシーで栄養高いメニューを覚えることに。



ハルも慎さんも30代なのに、

スタイルかなりいいし、お酒飲むのに

無駄なお肉がついてない。



私はこのままだと確実に太る‥‥



今はまだ何も体型に関してはハルから

言われてないけど、そのうち‥‥



あーーやっぱり今のうちにちゃんと

しておかないとダメだ!!



慎さんが私を見て笑っていることにさえ

気づかないまま、私はこの日も沢山

レシピや、アイデアを教えてもらった。



ガチャ



『あれ、慎もう帰ったのか?』



「うん、仕事の前に用事あるから

 早めに出るって。ハルはお仕事中だから

 よろしく伝えてって。」



首をコキコキ左右に揺らしながら、

うーんと伸びをしたハルを手招きし、

ソファに座らせると、上手ではないけれど

肩揉みをしてあげることにした。



首から肩にかけてのライン綺麗‥‥



あまり後ろからハルのこと見たことないかも、

なんて思いながらも気持ちよさそうに

しているので、しばらくやってあげた。



『ありがと、本当に肩凝ってたから嬉しい。』


「良かった、お役に立てて。ご飯食べる?」


『おっ、楽しみにしてた。』



上を向いて嬉しそうに笑うハルの頬を包んで

唇を重ねると、下から見上げるハルが

口を開いて舌を覗かせた



「‥‥ご飯‥‥食べないの?」


『食べるよ‥‥キスしたら‥な‥』



こんな体制で、私がハルのことを

食べているかのようなキスなのに

好きが増して止められない



『奈央‥‥こっち来て』



腕をひかれるままソファの前に行くと、

そのままハルの足の上に跨って

深いキスに溺れた



好きな人とするキスって止まらない‥‥



気持ち良くて、嬉しくて、幸せで

もっとしたいって思えてしまう。



「‥‥ハァ‥ハル‥‥」


『ん?‥‥ちゃんと言って‥奈央』



上顎をザラりと舐められ、

熱が一気に込み上がると、

私はハルの首にしがみついた



「‥‥ご飯あとに‥しよ‥‥ハル」



恥ずかしくて顔から火が出そうになるけど、

ここまで昂る熱をそのままにして

とてもご飯なんて食べられない‥‥



首筋に小さく音を立てて唇を落とすと、

そのまま服の下からハルの両手が滑り込み

一気に服を脱がされてしまった



もう一度深く唇を重ね合い、

私の首筋や耳に舌が這い、

嫌らしい唾液の音にさえ熱が上がる



『ここ‥‥綺麗で可愛い‥』


「ンッ!‥‥アッ‥‥ハル‥」



ハルと初めて体を重ねた時よりも、

胸がどんどん敏感になってるのが分かる‥



‥‥どうしよう

気持ち良くて動きたいのに、

体からどんどん力が抜けていってしまう‥



撫でられる手一つにも体が素直に反応し、

這う舌の生温かさに痺れていく



スカートを捲し上げられ、

ハルの硬くなった熱を受け入れると

そこからは自分が自分じゃないくらい

乱れてはしたなくなる



‥‥‥この体制

恥ずかしいけどハルが目の前にいて

ずっとギュッてできちゃうね‥



奥深くまで激しく動く熱とハルの息遣いに

いつもより興奮さえしてしまう



「アッ‥アッ‥‥ハル‥アアッ!!‥」



晩御飯前に、リビングのソファで

引っ越しの荷物と美味しいご飯の香りに

囲まれながら感じた大好きな人の体温



汗ばんだ二人の肌が心地よくて

ご飯も食べずに、そのままシャワーに行き

二人で一緒に体を温めた



『‥‥ん、美味い。』


「でしょ?慎さん天才だと思う‥‥

 元々料理好きって言ってたけど

 センスいいよね。」



低温調理した鶏ハムに白ワインを飲み

ハルがもう一口それを美味しそうに頬張る



今まで週末しか一緒にいなかったけど、

平日過ごすようになって、ハルは

朝ランニングに行っていることを知った



あんな綺麗な体を維持してるから

食事も毎回とはいかないけど、

なるべくヘルシーで美味しいもの

作ってあげたいな‥‥



「ハル‥‥あのね、私まだまだだし、

 不器用だからゆっくりだけど、

 一緒に楽しくハルと過ごしたいから、

 料理もっと頑張りたい。

 慎さんにこれからも習ってもいい?」



慎さんはいつでもいいって言ってくれる。



でもハルの友達だから、

やっぱりちゃんと内緒にするんじゃなくて

気持ちを伝えたかった



『いいよ、やりたいことなんだろ?』


「‥うん」


『奈央、無理しないって約束するなら

 やりたいことどんどんやるといい。

 ただ、頑張りすぎて余裕なくなるなら

 一旦必ず休憩すること。約束な?』



差し出された小指に、自分の小指を

絡めると、そのままそこにハルが唇を

触れさせた。



私のことよく分かってくれてるハル‥‥



頑張りすぎるとダメになるってことも‥



「約束‥‥ハル‥‥‥ありがとう」



もうすぐ今の倉庫内から

ハルが居なくなる‥‥



付き合ってなくて片思いだったら

こんなに悲しいことはないと思う。



でもハルは帰れる場所が同じ選択を

私の気持ちも確かめながらしてくれた。



それはすごく嬉しいけれど、

やっぱり東井晴臣の存在は大きくて、

毎日あの場所に居ないのをきっと

寂しいって感じる



きっと私だけじゃなく、

勤めてる多くの人がハルのこと大好きだから、

それを奪ってしまった私は、

その気持ちに恥ずかしくない人でありたい



ハルがそうしてくれたように‥‥



『来週から僕の代わりに来てくれる

 渡会主任です。僕より経験がある方なので

 みなさんも分からないこと

 色々聞いてください。』



ハルが異動する少し前に、

引き継ぎで来たのは、ハルとは違うタイプの

カッコいい男性だった



‥‥なんかこの会社カッコいい上司

多めな気がする‥



緩めのパーマがかかった男性は

どちらかというと中性的なかっこよさで、

色素が薄いのに、背は高くて

色々整っている



『初めまして、渡会 麻人(あさと)です。

 前の場所も倉庫内でしたが、色々

 やり方など違うと思いますので、

 僕の方も色々質問すると思います。

 よろしくお願いします。』



優しそうだしいい人っぽいから

安心した‥‥



みんなが拍手をする中、

渡会主任とバチっと目があったので

ニコリと笑いかけると、

相手も嬉しそうに笑ってくれた。



殆ど関わることなんかないと思うけど、

倉庫内の雰囲気がピリピリするのは

嫌だったから大丈夫そうだね。



ハルも前を向いてる。

私も新しい環境でまた頑張ろうって思えた。




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