第7話 温もり


暖かくなってきた三月上旬


噂になっていた東井さんの異動はなく、

あの後心底ホッとし、バレンタインには

慎さんにリキュール入りのチョコの作り方を

習って一緒に食べたり、相変わらず

金曜日の夜からはハルの家で過ごしていた。



付き合い始めて一月


いまだに体の関係はなく、

触れたり一緒に眠ったり、時々まぁまぁ

激しめのキスでとろける日々を過ごしている



仕事場には相変わらずノーメイクに近い

薄化粧で言ってるものの、前よりも

スキンケアを大切に手入れは欠かさず、

髪の毛も綺麗に束ねるようになった。



清香的には甘い!!って叱られそうだけど、

ハルに週末以外はしなくてもいいって

言われてるし、やれることだけ

私なりに頑張っているのだ。



『奈央、来週末グランピングに行かないか?』



相変わらずの金曜日の夜、

ハルにもたれて映画を見ていると

提案されたグランピング



「私‥そんなのやったことない‥‥

 でもハルとなら行ってみたいな。」



一緒に作ったオリーブの塩漬けと牛肉、

ミニトマト、アスパラをピンチョスにして

一口頬張る



ここで過ごすようになって、

ハルと作る料理のレシピも増えてきた。



簡単なご飯しか作れていなかったのに、

ハルと慎さんのおかげだよ‥

本当に美味しすぎる。



『キャンプだと準備大変だけど、

 グランピングなら手ぶらで行けるし

 週末なるべくお互い疲れすぎず

 ゆっくり過ごせる方がいいだろ?

 近場でいいとこ教えてもらったから

 奈央と行こうかなって。

 それ俺にも一つちょうだい。』



お皿から料理を手に取り、

後ろにいるハルの口にそのまま入れる。


「美味しい?」


『ん、組み合わせ最高だな。』



こんなやりとりが付き合ってからも

かなり自然に出来るくらい

私はリラックス全開だ



今までは気にしすぎて話せなかったり

素直になれずに後悔していたけど、

ハルとはちゃんと向き合っていたい



グランピングかぁ‥‥


パソコンで泊まるところを見せてくれると、

新しめだけど、周りは自然が多くて、

ちゃんとお風呂とトイレもそれぞれに

あり、隣同士とは緑に覆われて

あまり顔も合わせず過ごせるような

構造になっている。



「楽しみだね。初めての旅行だ。」


『温泉とかの方が良かった?』


「ううん、温泉は歳とってからでも

 ハルと行けるから。」



お酒を一口、口に含むと、

顎を持ち上げられ、そのまま口の中のお酒を

ハルが吸い取っていく



「んっ‥‥な、なに?びっくりする‥」


『歳とっても行けるってそれって‥‥

 そう受け止めるけど?』



えっ?


最初はなんのことかわからなかったけど、

すぐに温泉の話だと気づいて一気に

恥ずかしさが増していく



自然に出た言葉だからそんなに深く

考えてなかったけど、もう一度唇を

塞がれると、手に持っていたグラスを

ハルに取られて、そのままソファに

二人で寝転んだ。



「‥ンッ‥‥‥」


唇を啄むハルの薄い唇が、

何度も角度を変えて口内を捉えていく



どうしよう‥‥‥

これ‥‥気持ちいい‥‥



字幕の映画の音声よりも、

唇を重ねる音が耳に響いて頭が

どんどんぼーっとしていく



ハルの舌が、耳の中に移動すると、

体が震えて反応し、首筋から鎖骨を

丁寧に舐めると私の息が熱くなる



ハルともう何回キスしたんだろ‥‥

するたびにどんどん好きになってく‥



「んっ‥‥ハル‥‥」


『‥‥なに?』





「ハルと‥‥‥その‥してもいいよ‥‥」



息も上がる中ハルにしがみつき、

自分の口から出た言葉にハッとすると、

私から離れたハルが頭を撫でて

上から見下ろし小さく笑った



いつも映画を見る時は電気を消してるため、

画面からの光が届く薄暗い中で、

ハルと視線が交わる



『ん、ベッド行く?』  



ドクン


こんなこと初めてでもないのに、

ハルとだといちいち心臓がハネる。


寝る前にキスするときは、

激しいものだと、ハルのが硬くなってるの

ちゃんと分かってた。



いつこういう日が来るのかなって、

付き合ってると期待と不安で

落ち着かないけれど、

私はこのまま抱いて欲しいって思える



「うん‥‥行く。」



こんな時でも一旦落ち着いてから、

いつも通り二人で一緒に歯を磨いて、

リビングを片してから寝室に行くのは

朝までくっついて寝たいから。



でも今日は‥‥‥


ベッドに腰掛けるハルが服を脱ぐと、

私の服に手をかけて、そのまま脱がし、

私達は下着のみの状態で

いつも通りベッドに横になった。



初めて服越しじゃなくて、素肌が

触れ合う感覚の中、ハルの手が

私の体を引き寄せると静かに抱き締める



『奈央のこと優しく抱く‥‥』


「んっ‥‥‥」



下着はつけてるものの、

肩のラインや背中、腰、お尻に触れる手に

体がビクッと反応して体が熱くなる



唇を重ねると、角度を変えながら奥まで

舌で責められ、上顎にハルの舌が触れると

体が大きく跳ねた



『ここ好き?』



こんなところ舐められたことないけど、

ハルがまたそこを責めてくると

体がゾクゾクして熱くなっていく



今までは同じような流れで

なんとなく気持ちよくなって終わっていた

行為だっただけに、こんなにもゆっくり

体が熱を持つのは初めてだ‥‥



「ハルが‥ずっと‥見てるから恥ずかしい」



頭を撫でたらり、首筋に舌を這わせるときも

ハルが私を見ていてどんどん息が上がる



『奈央のいいとこ知りたい。

 今後も何回も抱くから、ちゃんと

 何がいいのか男としては知りたい‥

 だからちゃんといい時は教えて。』



「ッ‥‥‥ンンッ」



何回も抱くって‥‥

時々漏れるハルの色っぽい吐息やセリフに

こっちまでのぼせそうになる‥‥



でも‥‥こんなこと言ったら引くかな‥

触られてるところ全部気持ちいいなんて‥

こんなこと思うの初めてだよ‥‥



下着をお互い全て脱ぎ去り

素肌と素肌が100パーセント触れると、

何も考えられないくらい

ハルでいっぱいになってしまう‥




あ‥‥‥

ハルのすごく硬い‥‥



息遣いも私と同じで

熱っぽいのに加えてすごい色気が感じられる



ずっと待たせちゃってごめん‥‥


こんなに大切にしてくれるなら、

早く答えるべきだったね‥‥



「‥ンンッ‥ハル‥はぁ‥もう‥きて」



下を手と舌でほぐしてくれるハルに

恥ずかしさで顔を手で覆って伝えると、

覆い被さるハルに手を取られて、

唇を深く深く奪われる



『‥奈央‥‥好きだよ』



下腹部に圧迫感と甘い痺れを一気に感じ、

ハルの動きについていくのがやっとだけど、

繋がった後お互い見つめ合うと、

私もハルも小さく微笑んで

またキスを交わした。



ハルの熱‥‥

動く度に増すたまらなく愛しい気持ちよさ‥

上から見下ろすハルの視線‥‥



その全部に包み隠さず答え、

二人で気持ちよくなったあと、

素肌のまままた抱き合った。



『奈央大丈夫?‥‥息ちゃんとして‥』



肺が上下に激しく動いて、

体に残された夏の余韻が冷めず

ぐったりしてしまう‥‥



意識‥‥飛ぶかと思った‥‥


「‥‥‥ハル」


『ん?体ツラい?』


「‥‥‥‥気持ちいい‥し

 ハルとこうなれて‥嬉しい‥‥。」



恥ずかしいけど、私のこと知ろうとしてくれた

ハルにちゃんと伝えたかった。



沢山私のこと全身気持ちよくしてくれて、

ちゃんと大事にしてくれるのが分かる

行為だったから。



『俺も‥‥やっと抱けた。』



お互い服も着ないまま抱き合って笑い、

もう一度唇を重ねた。



二人とも汗をかいたからシャワーを済ませると、途中だった映画をまた見てから

朝までぐっすり眠った。



次の日、遅めに起きた私達は、

来週のグランピングに向けて

必要なものを買いに二人で出かけ

初めて一緒に夜までの時間を過ごした。





そういえばハルとちゃんとデートみたいの

したことなかったな‥‥



会社の人にも付き合ってること言ってないし、

休日に出逢った時のこと何にも

考えていなかった。


ハルはどう考えているんだろ‥‥


役職もついているうえ、私と違って

本社や支社にも時々顔を出す人なだけに、

社内恋愛みたいのはいいのか不安になる


今度それとなく聞いてみようかな‥‥



『それじゃまた月曜日。』


「うん、楽しかった。気をつけてね。」



相変わらず部屋に入る前まで

車は停まったままで、ベランダから手を振ると

ハルの車を見送るのが普通になっている



こういう小さいことでも

大事にしてくれてるの分かるから

嬉しいんだよね‥‥


ハルのために何か出来たらいいんだけど‥



あれだけ温かい温度に包まれて眠ることを

覚えてしまうと、一人きりのベッドは

冷たいけど、体につけられた痕に触れ

その日はまたぐっすり眠った


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