霊感

ボウガ

第1話

都市部にすむ女性、Aさんの友人B、Cとの話。大学生の頃、ほかの男ともだち二人を連れて心霊スポットに向かった。


BさんとCは仲が悪かった。

あるコンビニに立ち寄ったところ、小さな子供がBさんに近寄ってきた。Bさんは明るく会話をしていたり、その子にやさしく接していた。が、両親の姿を探してもみえず、コンビニ店員にその子を預けてかえってきた。


Bさんはその時その子供にこんな事を聞いていた、心霊スポットがどうだとかあそこの曰くを知っているかだとか、こんな子供に何を、とAさんはおもっていたが、子供も子供で小声で何かを話しているようだった。


心霊スポットにつくと、Cさんは、大勢の幽霊がそこにいるといいだした。そしてわざとらしくブルブルとふるえている。皆はそれでも盛り上がって、車で待っているのもなんなので、皆でスポット内にいくことに、そこは廃ホテルだった。


CさんとBさんはいやに静かにしていた。男たちはもりあがり、音に驚いたり、声がきこえたなどと騒いだりしている。


異変がおきたのは、帰り支度をしたころだった。男の一人が、赤い服を着た女性をみたと騒ぎだした。それは上半身がなかったという。もう一人の男はばかにしていたが、そのうち、足音までもきこえてきた。一同パニック状態になっていたが、Cだけが冷静だった。


何やら、塩をとりだし、わけのわからない祝詞のようなものをとらえると、ピシっと指を前につきだした。すると室内はシーンと静まり返った。


「これで大丈夫」


Aさんは内心ほっとした。というのもAさんはCさんのほうを強く信頼していたし、何度も払ってもらったこともあり、彼女の霊的能力は間違いないとおもったのだ。


だがそのときBさんが叫んだ。

「よくない!!」

「!!」

Cさんは男の一人におそいかかられた。彼は半狂乱になっており、自分を失っているようで、白目になっていた。そして

「子供、子供をかえせえ!!」

とわめいている。

「どういう事なの……こども?」

Aさんと男友達は、Cさんからくるった男友達を引きはがした。


気が動転したCさん。というのも、これまで霊能力で見る事の出来なかった幽霊はいない。一人の男友達と一向は、くるった男を置き去りにして、いったん車へと向かう。


しばらくして、例の狂った男が車にちかづいてきた。そこで男友達がしげみにかくれており、彼を後ろからがんじがらめにした。


そこでBさんがいった。

「アメよ、このアメがきくわ」

Cさんがおこる。Cさんは必至にお祓いを使用としているのだ、

「何をいっているの!!こんな時にふざけないで!!」

「普通に沈めてもしずまらない、強い霊よ」

「あなた、霊能力も何もないくせに、うそばっかり、こんな時にめだたないでよ」

「……」

 お祓いは続き、しかし、一向に効果がないようだった。Aさんがいった。

「アメ……ためしてみたら?」

「あの子がいってたの、あの子は」

「少年に何がわかるっていうの!」

 しのごのいわずに、とAさんがBさんからうけとった飴玉を狂った男友達にのませる。と、少し症状が落ち着いたようだった、だが、それがとけて、はきだされると、また暴れはじめた。


 そこでBさんが何かに気づいたようにはっとしていった。

「コンビニ、コンビニいきましょう」

「何いってるの!」

「さっきの子供がいたところよ」

「はあ?」

 コンビニへと車を走らせる。身動きができない仲間のためにAさんがコンビニ店員に尋ねた。

「さっきの子は、どこに?」

「は?ああ、先ほどの方ですね、時折いるんですよ、ここで子供を見たっていう人が、でも私にはあなた方以外、誰もいなかったように見えましたが」

「そんなはずは」

と防犯カメラ映像をみせられる。そこで店員がふときづいた。

「あれ?なんだこの飴」

 みるとレジの隅に飴がおかれていた。

「この飴、下さい」

 直観的にAさんはそれをかって、あばれていた男にのませた。

「ふあ!!!」

 突如いきを吹き返したように正気を取り戻す男。

「なんか、長い夢をみていたみたいだ」

「どういうこと?」

 と、CさんがBさんに尋ねる。

「私は、霊能力があるっていうのは本当なの、だけど私は特殊で、幽霊を“人に見せる”事ができる、それに私自信がその人が幽霊かどうかなんて気づけない、周囲の人間も、きっとさっきの子供は幽霊で、ここで母親を探していたの……何があったのかしらないけれど」

「……」

 ふと、Cさんが落ち込み、そして語りだした。

「ごめんなさい、私も未熟なのだけど、きっとここで事故があったのね、それで子供はここで即死して、母親は近くの病院に運び込まれようとして、あのホテルの傍でなくなった……それからずっと子供を探している」

Aさんが尋ねる

「子供は?」

「子供はきっと……母親が自分を見つけられないことをしっている、母親は理由はわからないけれど地獄に落ちたから、子供は、母親からあの廃墟に入る人を守っているみたいね」

Cさんが続けてBさんに尋ねる。

「どうしてあなたは、飴玉がきくとわかったの?」

「きっとあの子が好きだったものだったから、私は……誰が幽霊かわからないけれど、だからこそ、できるだけ人には親切にすることにしている、飴玉はさっき、子供に買ってあげたの、本当は心霊スポットにいく事は乗り気じゃなかったんだけど、もしまずい事があればこういう事があるだろうと思ってた」

「こういう事って?」

「私は、幽霊たちは、立ち入るものたちを選別していると思っている、真摯なこころかいたずらや悪さをしようとしているか、だから私にできる事は、いつも真摯に向き合う事だけだから」


 その時までBの事を誰も信じていなかったが、この一見以来、彼女は守り神のように扱われるようになり、Cさんとの仲も段々とよくなっていき、卒業してからは親友のようになっているらしい。




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霊感 ボウガ @yumieimaru

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