第3話 カイSide
会ってみたい、あの女の子に。
その気持ちでいっぱいだった僕。
学校に行ってもそれは一緒だった。
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「お、おはよう、海澤くん。」
隣の席の葉月花音が声をかけてくる。
あの手紙のことが気になってしばらく気づかなかったけど、返事をした。
「おはよう、葉月さん。」
ふわっと笑顔が葉月さんの顔に浮かび上がる。彼女は僕の親友・吉田智也が好きらしいが、なぜか僕に優しい笑顔を見せてくる。
「あ、そういえば、智也とはどう?」
僕が聞いてみる。葉月さんの笑顔が消えた。
「海澤くんまで…。私は吉田くんは違うのに…。」
「へ?」
思わず言ってしまった。
「わ、私はね、その、吉田くんじゃなくって、海澤くんが…。」
「え、僕が何?」
ハッとしたように葉月さんが笑顔を戻した。
「ううん、海澤くんが今日はなんだかぼうっとしているように見えただけなの。何かあったの?」
僕は海の女の子の話をすることもできず、苦笑いを返した。
「今日は少し寝坊をしちゃって。眠くてぼぉっとしてて…。」
葉月さんもちょっと笑った。
「ふふっ、そういう時ってあるよね。でも、今日は特別授業があるらしいから、ちゃんと起きてね。」
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「皆さん、こんにちは!水族館飼育員の海澤です!今日は海についての特別授業をしていきます。よろしくお願いします!」
笑顔で話す水族館飼育員は僕の姉・海澤波だ。
頼むから目立たないでくれ!と心の中で叫ぶ僕を無視して話し続ける姉は持ってきたコンピューターと教室のテレビを繋げてスライドをみんなに見せている。
「皆さんはこの画像が何かわかりますか?」
海だけどなんだか白っぽいものがある。
「あ、あの、レジ袋、ですか?」
できるだけ初対面という感じを出すために敬語を使って答えた。
こんなの全部わかる。海洋研究者のお母さんに全部習った。
ニヤリと姉が笑った。
「そうですね。実はカメがふよふよ泳ぐクラゲだと思って食べてしまうこともあるんですよ。」
ドキッとした。もう知っているはずなのに。一度だけ、カメを助けたことがあった。そのカメはレジ袋に甲羅や足が絡まって動けなくなっていた。僕じゃない誰かが捨てたレジ袋だったんだ。
涙が出そうになって必死に抑えた。
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