蘇る記憶のなかで
「っふ〜…これでひと通り終わり!」
屋根に布団を干して、これからくつろごうと考えているときだった。
「じーちゃん!ただいまぁー」
「えっ誰誰!」
あまりに大きい声だったので驚いて階段を駆け下りて一目散に玄関へ向かった。
玄関で靴を脱いでいるのは…
「やっほーつぼみちゃん。」
「カホちゃん!」
私の大好きないとこ、カホちゃんだった。
「いやー、じーちゃんとこにつぼみちゃんがいるって聞いてさ、いてもたってもいられなくなっちゃって!来ちゃったよ〜」
「久しぶりにカホちゃんと同じできるのは凄く嬉しい!今夜は泊まっていく??」
「ううん、ちょっと身内が忙しくて…
泊まりはまた正月に考えるよ!」
少し悲しかったけど、お正月も一緒にいれるなんて幸せ!と考えられるくらい私はカホちゃんのことが本当に大好きだった。
「ねえつぼみちゃん、ちょっと散歩しない??」
昨日の夕方に歩いた道と同じ道を歩く。
なんだか分からないけど変な気分。
海人さんのことを思い出す。
またいるかなあって、次はいつ会えるかなあって、思いながら。
「つぼみちゃん、公園に行く時のここの道、すごーく怖かったのって覚えてる??」
私はここの記憶は景色以外うっすらとしら覚えていないので、当然そんなことも覚えられていなかった。
「いや、全くなんのことかわかんないな〜
なんか怖いものあるっけ??」
ここの道は森でもないし、ただの通りだから恐怖を覚えるようすもないのにどうしてだろうか。もくもくと考えるとカホちゃんが急にピタリと止まった。
「カホちゃん、どうしたの??」
「ここの家。ここに住んでる女の子だろうけど網戸に顔をはっつけて必死に私たちに訴えかけてきた。下に落ちた紙を取ってって。」
家を人差し指でちょこんと指す。
「それがあたし達とっても怖かったみたいで死にものぐるいでここの道を走ってた。
つぼみちゃんなんか涙目だったし。」
くすっと笑ってカホちゃんはまた進み続けた。
「今はシャッター閉められてるみたいね。
こう思うとあの子にもまた会いたいな。
今あの子って何してるんだろー。」
なんだか切ないような、楽しいような、
そんな話し方でカホちゃんが話すから私は余計に昔に戻りたくなった。
「つぼみちゃん、また正月にね。」
「うん!またね〜!」
カホちゃんを祖父と2人で見送って、寝る準備まで済ませていたのですぐ布団に入った。
(そんなこともあったのかなあ)
蘇る記憶のなかで、私はなぜかあることを
ぱっと思い出した。
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