第7話

『はろはろー』


 電話をかけた途端、こなたののんきな声がやってきた。


「今何してます?」


『んーとね。ヘビにご飯を上げてたよ』


「六課にいないんです?」


『情報収集なら家でもできるからねえ。ふふふ、いーでしょー羨ましいでしょー』


「……ちょっと調べてほしいことがあるんですけど」


 どうぞ、という声が返ってくる。シキは、滝月市長とそらみの関係性、それからそらみ

の住所を調べてほしいとこなたに頼んだ。


『りょーかい。ちなみに何かわかった?』


「まだですね。これから午後五時まで分かれて聞き込みをしようってことになってます」


『分かれるの? それはあんまりお勧めしないというか』


「危険だから?」


『うん。でも、君が考えてるのとは真逆だよ。危ないのはジュリじゃなくて、君の方』


「オレよりもあっちの方が頼りなさそうだけど」


『あっちは殺そうとしたってなかなか死なないわ。街の人たちが大変な目に遭うっていう危険性はあるけどね』


「は? どういうことです?」


『本人にでも教えてもらえば?』


 ころころと転がるような笑い声を耳にしながら、シキは周囲に視線をさまよわせる。電話をかける直前に、ジュリとは分かれていた。だから、案外まだどこかにいるのではないかと、シキは図書館の前を見回したがジュリの姿はどこにもない。


「しまった、連絡先交換しておけばよかったな」


『ってことはもういないのか。注意しなよー、君が関わってるのは超自然的な存在かもしれないんだから』


「でも、そうじゃないかもしれないじゃないですか。単に偶然って可能性も」


『そりゃああるかもしれないが、ジュリが乗る気ってことはそういうことなんだぜ』


「それ、どういう意味ですか」


『秘密ー。それも直接聞いたらいいんじゃない?』


 その言葉を最後に、こなたとの通話は切れてしまった。


 ツーツーツ―という音をしばらく聞いていたシキは、スマホをポケットに戻してため息をついた。何度目かはわからないため息。


 どうしてこうも、同僚たちは……。


 ため息はいつまでも出てきてしまいそうで、シキは天を仰いだ。真っ青な夏空を見ていると、気分が明るくなる……なんてことはなく、むしろ気分はどん底へ落ちていく。


「……聞き込みしよ」


 シキは道行く人々に声をかけようと、歩き始めたのだった。

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