第27話 伝説のおっさん、答える
そして夜。
俺はSNSに質問配信について投稿した。
『今日の21時から、質問に回答しまくる雑談やります! よろしく!』
フリートークに近いのでドキドキしているが、落ち着け。
問題はない……。きちんと準備をしたのだから。
21時、ローゼンメイデンのスタジオを借りて配信を始める。
「こんばんわ、伝説のおっさんです。配信に来てくれて、ありがとう」
”始まった”
”質問回答来たコレ”
”待ってました!”
”今日はダンジョンの中じゃなかったか……”
そこで配信画面の横からにゅっとカリンが出てくる。
「こんばんわーー!! カリンもいるぜ!」
”は?”
”コラボなん!?”
”聞いてねぇぞ!”
そう、カリンが考案した作戦とは、自分も配信に出ることだった。質問回答はする……しかしひとりで、とは言っていない作戦だ。
「リスナーの質問とかはあたしが読み上げるから、よろしくな!」
「よろしくお願いします」
これは俺にとって相当心強い作戦だった。どういう質問に答えればいいのか、彼女がある程度選別してくれるならやりやすさは段違いだ。
慣れるまでは短時間のほうがいいということで、時間は1時間。その間に、リスナーからの質問に答えていく。カリンがささっと俺に質問を振る。
なお、これについては事前の回答作成はない。その場その場で答えること――その誠実さは守っている。
「えーと……じゃあ、まずはプロフィールについてから! 出身地はどこですか? ○○地方でもいいです、とのこと!」
そしてドローンからはAIカンペが送られてくる。
ちらっ、ちらっ……。
『こだわりがない限り、地方にとどめるのが無難!』
やはりあまり詳しい出身地は問題だよな。ま、もう俺には家族がいないから実家に突撃されるみたいなことはあり得ないが……。
「関東地方ですね。詳しい都道府県はご想像にお任せします……」
「おー、これは初出の情報かな?」
「そうですね、言ったことはないはずです」
カリンの合いの手が上手くハマる。ラジオの対談に近い……というより、そのままのノリだな。
「じゃあ、次! 伝説のおっさんは公共のデータベースでの実績や戦歴がありません。なのに、どうしてそんなに強いのですか? 言えない実績が多い感じですか?」
「まぁ、海外での活動が長かった面はあります。なので国内での色々な事情に疎かったり……。実績については今後、積み重ねていければなと」
「まーまー、伝説のおっさんの強さについてアレコレ疑問を持つ奴はもういねーぜ。マジで凄いんだから! わかるよな!?」
カリンが配信画面に顔を近づける。そして遠ざかる。凄い……臨機応変に画面での映り方も工夫しているのがわかる。俺は座って答えるだけで、かなり神経を使うのに。
”強さに疑問はないよなー”
”まぁ、もう慣れてきた面はある”
”ヴォルケーノザウルスとの戦いは色々な意味で痺れた”
「ヴォルケーノザウルスとの戦いを思い出してる人もいるみたいだなー。あたしもどうなるんだって思ったけど……あれはやっぱり予想外だった?」
「もちろん予想外でしたよ! あと数分待ってくれないかなーっと思いましたけど、やっぱり戦闘になって――」
”草”
”やっぱりあれはアクシデントだったか”
”でも魔獣そのものは瞬殺でワロタ”
そしてコメントを拾って話を広げるのも上手い。うーむ、この辺は学んでいかないとな……。
そして何とか質問コーナーの配信を終えた。上手いことカリンが回してくれたおかげで、退屈にも危険な話題にもならなかったな。
リスナーも今までの疑問がある程度解消されたようで、満足そうな反応だった。
「今回は助かったよ、カリン」
「これくらいは全然なんでもないって! それよりホスト側の立場で先生と話が出来て、色々と面白かったぜ」
どの辺りが……?
と思ったが、多分初出の情報のことかな。出身地方とか好きなコーヒーの飲み方とか居酒屋で頼むものとか。そういうのは聞かれないと答えないし。
「これでレイナにも勝った気がする……」
「お、おう……」
満足げなカリンに俺は頷いておく。
翌日、レイナから『対談配信やりたいです!』と言われることになるとは、この時は夢にも思わなかった。
―――――
おっさんは意外と愛されキャラ……?
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