第4話 冒険者ギルド
冒険者ギルドの前に立った俺はそのまま中に入る。
始めてはいる建物に抵抗があったが、冒険者ギルドは多くのもので溢れていたので、彼らの後ろに続くことが出来た。
冒険者ギルドの一階は郵便局のようなカウンターがあり、受付番号を引く箱があった。受付番号を引いたらその番号が呼ばれるまで後ろの椅子に座っていればいいようだ。
「病院の待合室みたいだね」
とは女神の言葉だが、女神様の世界にも病院があるのだろうか。
「そりゃあ、女神だって不老不死じゃないからね。ちなみにボクは今歯科に通っています。歯石を取って貰っているんだ」
「あー、あれって気持ちいいよな」
「うんうん、歯茎の間をぎゅいぎゅいするのは快感になってくよ。さて、その番号はいくつ?」
「七番だ」
「それじゃあ七番後に呼ばれるのか」
「そうだな。順番が前後しなければ」
「それまでゆっくりだべってまってようか」
イシュタルはそう言うと冒険者ギルドの壁に貼られた依頼を眺める。
「飼い猫捜索だって。ぷぷ、子供見たい」
「依頼者は本気だろう。笑っちゃ悪い」
「まあね。あ、以外と報酬がいいね」
「練習依頼としてちょうどいいかもしれない」
依頼にはF~Aランクの等級が張られており、Aに近づくほど高難度で報酬が高い。
チートスキルを持ってない俺としては低ランクの仕事からきっちりとこなしたい。
そのような感想を抱いているとギルド受付嬢に呼ばれる。
「七番の札をお持ちのお客様」
「俺たちだ」
イシュタルの手を引き、カウンターに連れて行く。
「新規登録の手続きでよろしいでしょうか?」
「うん、そうだ。冒険者になりたいんだ」
「おふたりとも登録でよろしいですか?」
「あ、ボクはいいよ。ボクはこの世界の女神様だからね。ライセンスは不要さ」
「などと訳の分からない供述をしているが、頭が弱い子なんだ、許してやってくれ」
そのようにカバーすると受付嬢は書類を差し出す。
「それではここに情報を記入してください」
「げ、異世界語だ」
軽く絶望しながらイシュタルを見つめるが、「頭の弱い子に頼るの?」と意地悪な表情を浮かべた。
前言は取り消すのでなんとか代筆して貰うように願うとイシュタルに貸しを作った。
「牛乳ラーメンより美味しいものを食べさせてよね」
「それは約束しよう」
そのようなやりとりをするとイシュタルが代わりに俺の書類を書いた。生年月日や住所などを聞かれる。
「簡単な質問しかないんだな」
「冒険者は名前を書ければなれると揶揄されているよ」
「馬鹿高校みたいなものなんだな」
「ただ、ひとつだけ厄介な質問がある。これだけは自分で確認してサインしてもらおうかな」
イシュタルがそのように言うと書類を見せる。
「ちなみにここにはこう書かれています。いかなる危険に接しようともギルドは一切関知しない」
「自己責任条項か」
「そう。死んで文句言うな、かな要約すると。ここにサインすると裁判所に訴えられなくなる」
「改めて聞くとビビっちまうが、まあ、冒険者とはそんなもんだろう。俺は気にしないぞ」
そのように断言するとサインを書く。
さらさら――。
「よどむことなく綺麗に書くんだね。それだけの決意があるってことか」
「まあ、そういうことだ」
「よし、じゃあ、これをギルド受付嬢に渡せば君は冒険者だよ」
「早速渡そう」
流れるような作業で書類を渡すとギルド受付嬢は書類の不備を確認し、ギルドの印鑑を押す。
「書類になんの問題もありません。これであなたは今日から冒険者です」
「冒険者か。なんか格好いい響きだ」
「この街のギルドはもちろん、世界中の冒険者ギルドを通じて仕事の依頼を受けられます」
「さっそく、依頼を受けたいんだが」
「そうですね。あなたのライセンスはFなのでFのランキングの仕事を受けてください」
「なるほど、それじゃあ、早速さっき見かけた猫探しをしようかな。あれはFだろう」
掲示板に貼られた依頼書を持ってくるとギルド受付嬢は頷いた。
「最初の仕事としてよろしいものかと」
「よし、それじゃあ、町中で行方不明になった三毛猫を探すぞ。名前はみーちゃんだ」
そのように言い放つとイシュタルは「おお!」と拳を振り上げた。
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