4-3 盗られた!うめぼしの謎 エピローグ

「卵全部売り切れてました…」

 間口さんは、そう言いながら、しょぼんとした、ひどく落ち込んだ表情を浮かべながら…私の担当しているレジにやってきた。間口さんの購入する商品はカップラーメン・レトルト食品・総菜が2、3個ずつあり、加えて大量のパックご飯があったので独身なのがうかがえた。

「へえそうなんですか。残念でしたね…」

 そう少し笑みを浮かべながら言い、私は、ピッ、ピッ。と次から次へと商品をレジに通す。

「そういや、おじいさんの件はどうなったんですか?」

 間口さんは事件の行く末を訪ねてきた。

「おじいさんはやっぱり一人暮らしだったみたいで。近所に住む親戚の方が引き取りに来られて、明日にでも、病院へ検査に行くそうです」

「そうか…近所に親戚の方が住んでいたのか…それなら少し安心ですね」

 間口さんは目を細め、にっこりと満面の笑顔を浮かべた。

 それまで表情が固かったので、私はそのギャップに心臓が撃ち抜かれた。

 レジ打ちが終了した後、合計金額を私が告げ、間口さんは商品詰め込みコーナーまで歩いていき、レジ袋に商品を詰め込み始めた。

 そんなに購入品の量が多くなかったので、早くしなければ…

 そう思った私は、すぐさまメモ帳とペンを取り出して自分の連絡先をメモし、紙をちぎった。これでこのメモ帳を使うのは入社して二度目だ。

「あの~」

 私は、恥ずかしそうにもじもじしながら、メモの書かれた紙を渡す。

「えっ?」

 間口さんはひどく驚いているようだったが、そのまま、メモの書かれた紙をレジ袋に入れて、スーパーのの出入り口に頭をかきながらトボトボと歩いて行った。照れているのだろうか。


 ―――私と彼の恋が始まったのかもしれない。ゆくゆくは結婚…etc


 そんな物思いにふけていると、レジの方からお客さんの怒る声が聞こえ、

「早く!何してるの!!来なさい!!!私、急いでいるのよ!!!!!」

 現実に引き戻された。

 

 お客さんに平謝りしながらレジに戻り、レジ打ちを再開する。

 私の心の中はまだ彼のことでいっぱいだ。

 

 ―――果たして、この恋は成就するのだろうか?


【参考文献】 

医療情報科学研究所(2017)『病気が見える vol.7 脳・神経 第2版』メディックメディア

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NO探偵 ニューロン 村田鉄則 @muratetsu

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