盗られた!うめぼしの謎

4-1 盗られた!うめぼしの謎 事件発生

 スーパーの駐車場にて。

「万引きです!誰か捕まえて!!」

 スーパーの店員である私が、犯人を指さしながらそう叫ぶと、私の近くにいた背の高く恰幅の良い男性が犯人の腕を掴んで引き止めてくれた。男性の顔は塩顔イケメンをひどくたいらにしたような顔だった。男の着ているジャケットからは強烈な煙草の匂いがした。

「おじいさん、その梅干し盗んだのか?早くスーパーに戻りな…」

 男は冷徹な声で、今回の犯人であるご老人に向かってそう呼びかけていた。

 遠くからその様子を観察している私の後ろから、店長がやってきた。


「ありがとうございます。」

 店長は、男性に笑顔でお礼を言うと、すぐさま表情を切り替え、眉を吊り上げて

「ちょっと!こっちまで来てください!!」

 と怒声を放ち、おじいさんの腕を強く掴み、スーパーのバックヤードの方に引き連れて行った。いつも万引きに対応するときのように、恐らくバックヤードにある休憩室まで連れて行くのだろう。

 これから事情徴収(のようなもの)があるのだ。


 一件落着という感じで、私がお菓子売り場の品出しに戻ろうとすると、先程おじいさんを捕まえた男が私のもとにのっそりと歩いてきた。まさか、ナンパか?私ってそんなに可愛い???

「あの、間口宏まぐち ひろしと言います。俺、実は刑事やってまして…まあ、今日は休日なんですが…先程のおじいさんが梅干しのパックを盗ったときの様子についてお伺いできませんでしょうか?何か手助けできるかもしれないので…」

 私はその言葉を受け、自分の自意識過剰っぷりに恥ずかしさを覚えながらも、男の行う非公式の捜査を手伝うことにした。

 


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