2-2 消失した少女② 介抱

 私には意味が分からなかった。

 ―――私が少女を突き飛ばした???

 そんなはずはない。少女は私の前方から突然消えて転げ落ちたのだ。

 私には何も関係ないはずだ!

 しかし、事件の際の周りの様子を思い返すと少女と私の他に誰も人はいなかった。

 私が彼女の言葉を受けて、そのように考えを巡らせて立ち止まっていた。そのとき、寝癖の付いた男がちょうど階段を下りてきた。男は呑気に鼻歌を口ずさんでいた。

『誰か呼んできてください!女の子がケガをしました』

 私は呂律が回らなかったが、その男に彼女の介抱をする要員を呼ぶように頼んだ。私の声は歪んでおり、男には私が伝えようと思った言葉そのままでは伝わっていないだろう。

 久々に叫んだからか涎がいつの間にか垂れていたらしい。私の入院服の胸の中心当たりに水に浸したような跡ができた。

「了解です!」

 男はこの場の雰囲気が読めないのか、俺に任せとけ!という感じのしたり顔で抑揚をつけてそう答えた。そして、階段を引き返しどこかに駆けて行った。

 数分後、看護師の集団が来た。

 看護師は女の子をとりあえず、ナースステーションまで連れていくという。

 ナースステーションには絆創膏や包帯などのケガをした際の応急処置のアイテムも揃っているからだ。女の子は看護師に引き連れられ、階段をしくしく泣きながら上がって行った。何度も私の方を振り返り何か言いたげそうだった―――

 

 

 

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