消失した少女

2-1 消失した少女① 事件発生

「きゃあああああああああああああ」

 小学校低学年くらいであろう女の子のか弱い悲鳴が聞こえる。

 突然、宙に舞った女の子の左足が目の前に現れたかと思ったら―――

 すぐに、”ドン”と鈍い音がした。

 気が付くと、彼女の細い体は階段の踊り場の角にあった。

 幸い息はあるようだ―――

 しかし、階段から落ちた際の衝撃か摩擦からか両手両足からは血が流れ、両目から大粒の涙を流している。

「いたいよおおお」

 女の子の悲鳴が階段周辺に響き渡る。

 一体女の子はどのように階段から転げ落ちたのだろうか?

 私にはわからなかった。

 女の子は私がリハビリを兼ねて階段の上り下りの練習をしている際(事故直前は下りだった)、前方からまるで誰かと駆けっこするかのようなスピードで階段を駆け上ってきてのだから―――


 女の子の許に歩き寄り介抱をしようと右手を差し出したが―――

 女の子は私を見て恐れおののいた。

 暫しの沈黙の後、女の子は声を震わせてこう聞いてきた。

「おじさん、何で私を突き飛ばしたの?」


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