1-3 スラッシャー山本殺人事件②
ぎこぎこぎこ。
チェーンに油を指していないのだろうか不協和音を響かせたママチャリに乗って奴が現場まで来た。
「おっす」
そう中学生のような挨拶を手を挙げてする神細寺はいつも通り寝癖を直しておらず髪の毛はぼさぼさだった。太い額縁の眼鏡は頭を良く見せるためというだけで本当は視力は裸眼で2.0ある。眉毛は剃っておらず常にボサボサ。髭も剃り残しが目立つ。しかし、全体の顔立ちがモナリザのように整っており、それが様になっている。まるで、衣料品店の壁に貼ってある写真のモデルのようだ。俺なんかは、塩顔イケメン俳優の顔をマリオ64の最初の画面みたく縦横に引き延ばしたような顔つきであり、眉毛や髪の毛を整えてもイケメンとは程遠いので奴の顔にはあこがれはしないが腹が立つ。
「お前約束の時間過ぎてるぞ!!また自転車で来やがって!!」
そう俺は眉を吊り上げて怒った。神細寺はいつも節約のためと言って自転車で現場に来る。たとえ、片道1時間かかる場所でもだ。
「いやさあ、プロレスの試合何度も見返していたら気づいたら朝でさ…寝落ちしちゃったわけよ。」
奴は昨日、電話をして依頼をした際、スラッシャー山本が現役を引退するハメになった
寝落ちしたと言っても、遅刻した時間は15分程である。自転車で来なかったら普通に間に合ったはず…俺はその部分が引っかかったが、事件を早く解決するためにあえてツッコミはしなかった。
現場に着く。被害者の遺体はすでに検死に回されており、殺風景なリビングのフローリングには血痕が残るのみだった。
神細寺は部屋を一通り嘗め回すように見回り始めた。
何も置かれていない殺風景なキッチン、洗浄スプレーとトイレットペーパーしか置いてないトイレ、洗濯洗剤と洗濯機しか置いてない洗濯スペース、洗浄スプレーとシャンプー、ボディーソープしか置かれてないお風呂場を見回ると今度はリビングへ。
リビングは独り身の男性にしては小ぎれいだった。床拭き用のモップは見当たらないので、雑巾がけでもしているのだろうか。奴はリビングではベッドの下を眺めたり、部屋の片隅に畳まれた衣類をじっと見つめていたりした。意気揚々として見回るその姿はまるで宝物探しをしている幼稚園児のそれに近かった。
「…なるほどな」
奴はそうボソッと小声で呟いた。
「どういうことだ?」
俺は素っ頓狂な声を出した。
一緒に見回っていた俺は何も気づかなかったのに、奴は何かに気づいたらしい。
「謎は解けたぞ間口…」
奴の顔が先程と違って急に真剣な面持ちになった。
「この部屋には先っぽが鋭利なものが何もない!」
かと思いきや、すぐにしたり顔でそう叫んだ。
「つまり、どういうことだ???」
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