1-2 神細寺経太とは何者か?

 神細寺経太しんさいじ きょうたと俺、間口宏まぐち ひろしは小中高を共にした幼馴染だ。神細寺は小学生の頃から変わった奴だった。

 小学校の頃やつは休み時間、周りの子供がコロコロやボンボンの話題で盛り上がっているのにも関わらず、ガン無視して貪るように図書室で借りた人体の不思議に関する本をずっと読んでいた。

 中学生になると、『妻を帽子とまちがえた男』や『レナードの朝』などのオリバーサックスの著書を読み漁っていた。好きなマンガは『脳噛探偵ネウロ』だったが、これは俺も好きだったな。

 高校生の頃になると「俺はPTOTST全ての資格を取る」というよくわからないことを言い始めた。詭弁だと思ったが、奴はそれを10年近くかけて実行した。実をいうと神細寺の親は地域の土地をたくさん持っている所謂大地主というやつで、あいつは経済的に恵まれていた。神細寺家は何でもやれ束縛はしないという所謂放任主義の家庭だった。にしても、PTOTST全ての資格を取るというあいつのよくわからない目標のために出資したのはさすがに親バカだと思われるが。

 あいつが言うには資格を取るのは仕事に就くためではなく、三療法士の視点での神経心理学を学びたかったらしい。変な奴である。なぜ医師の資格を取らないのかと問うと人の肌を切るという行為がダメだからという理由だった。臨床実習の際、違う療法士の学生として数年後同じ病院で実習をすることがたまにありびっくりされたこともあったらしい。

 有言実行をした後のあいつは27歳になった。PTOTSTの三療法士の資格を持っても結局医療職には就かず、何故か探偵を始めた。本当変な奴である。奴が言うには、探偵業に昔から憧れていたらしい。ただそれだけ。ただ、探偵という職は合っていたらしく地頭が良いやつなので、探偵になってから3年間で様々な事件を解決している。

 俺も、今回のような脳が関係している事件の際は助言をもらっている。助言を超えて奴が意気揚々と事件解決に乗り出すことも多々あるが。報酬はあいつの好きな本や漫画を買い与えたら良いから楽だ。

 

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