第109話 密室テントに響く声

 海の家でテントやらパラソルやらをレンタルして、まずは拠点を整える。

 レンタルのサンシェードテントはワンタッチ式のものだったので、本格的な組み立てとかもなくてすぐに準備ができた。


 いざ利用してみるとレンタルのありがたみが染みるな。

 俺達みたいに車の運転ができない学生にとってかさばる荷物……レンタルできるものでいうならテントやパラソル、あとは浮き輪とかもそうか。

 用意できるのならそれに越したことはないのだろうが、使い時も限定されるものを用意するのは中々に気が引ける、持ち運びの懸念もある。

 だが、海の家のレンタルがあれば用意できなくても現地調達ができるため問題ない。これなら多少値が張っても借りる人も多いだろう。


「思ったよりも大きいですね」


「ああ、二人で休んでも余裕あるな」


「そうですね。休憩がとても捗りそうです」


 ポンと完成したテントを眺めて感想を言い合う。

 いったいなんの休憩を捗らせようとしているのかはさておき、とりあえず海ではしゃぐ前の準備をしなければいけないが……緊張するな。

 日焼け止めを塗る。炎天下の太陽の下でならば普通のことだが、人に塗る、もっと言えば女の子に塗るというのは自分の彼女であってもドキドキしてしまう。


「ほら、玲くんも早くきてください」


「分かったって」


 俺の緊張などお構いなしにテントの中に連れ込まれる。間髪入れずに開いていた入り口部分を閉じられ……密室ができあがった。

 着替えとかにも使えるフルクローズタイプのテントなのでこうすることで日差しだけでなく周囲の視線もシャットすることができる優れモノだが……なんだろうな。陽菜に出入り口を押さえられているような気がしてならない。ここから出たければ私を倒していけ……みたいな謎の圧をひしひしと感じる。


「さ、日焼け止めをお願いします。あっ、それともサンオイルの方がいいですか?」


「日焼けしたいの? したくないの?」


「玲くんが日焼けでできた水着の跡を楽しみたいというのならば頑張って日焼けします」


「……まあ、陽菜なら日焼けしても健康的な感じでかわいいと思うけど……せっかく色白で綺麗な肌なんだから守っておけよ」


「えへへ、そうですか。では、玲くんの好きな色白な肌がダメージを受けてしまわないように、全身隅々まで塗ってもらわないといけませんね」


 日焼け止めか、サンオイルか。どちらにせよ俺にすべてを委ねるということには変わりはないのか。

 サンオイルの効果で綺麗な小麦色の肌を手に入れた陽菜を想像してみた。正直グッとくるものはあるが、やはり陽菜は色白で吸い込まれそうな肌がよく似合う。その二択を迫られるのなら日焼け止めでしっかり肌を守ってほしいと思った。


「では……お願いします。全身好きなようにしちゃってください」


「あの……一応言っとくけど日焼け止め塗るだけだからな。それ以上のことはないぞ」


「それはどうでしょうか? 玲くんの気が変わらないとは言い切れないですよ?」


 うつ伏せになってビキニをはだけて背中を露わにさせた陽菜。相変わらず脱ぐことに躊躇がないのはさすがというべきか。大胆に晒された綺麗な背中から腰のラインに目が釘付けになってしまう。確かにこんな姿を見せつけられたら俺の気もころっと変わってしまいそうだ。気を強く持たねば……!


「どうしました? こっちは準備万端ですよ」


「ああ、じゃあ……触るぞ」


 言い出した陽菜が聞かないのはいつものことだ。このまま固まっているとビキニを脱いだまま襲ってくるかもしれないので、心の準備がどうとかうだうだ言ってられないな。

 日焼け止めクリームを手に取って馴染ませる。日焼け止めに関してはそれほど詳しくはないが、種類がいくつかあることは知っている。その中にはお手軽に散布できるスプレータイプのものがあるのも知ってはいるが、わざわざ手で伸ばして塗る必要のあるジェルタイプのものを用意してあるのはこの展開に持っていくためなんだろうな。


「ひあっ」


「悪い、まだ冷たかったか」


 一応自分の手で遊ばせてから塗ったのでそれほど冷たくはないと思ったが、艶のある声が漏れ出てドキッとしてしまう。

 わざとじゃないのは分かっているが、あんまりそういう声を出されると意識してしまうな。

 とにかく無心で塗ろう。


「ん、は……あ、あっ」


「あんまり変な声出すなよ。聞かれたらどうするんだ」


「ひゃっ、そんなこと、んっ……言われてもっ、あんっ、玲くんの指が気持ちよくて……っ」


「はいはい、よかったよかった」


「あっ、そこっ……すごいっ」


 陽菜の柔らかい肌を指先が滑るたびに艶やかな声と共に身体が跳ねる。

 ヌルっとしたジェルを広げる度にどんどん声は大きくなっていき、テントの外に聞こえていないか心配になるが、声を抑えるつもりはないのか思うがままに喘いでいる。

 これ、声だけ聞いたら完全にそういうことしてる声だよな。

 そう思うと余計にもんもんとする。


 水着選びの時も試着室でこんな感じだったなとふと思い出してしまった。

 背中、弱いんだろうか。耳と一緒に責めたらもっといい声が聞けるのだろうか……なんてな。

 それを試すのはまた今度でもいいだろ。このまま理性を捨て去るのは簡単だが、それでは陽菜の思う壺だ。どこまで抵抗できるか分からんが、俺は最後まで抗うつもりだ。


「よし、こんなもんか」


「はぁ……はぁ……。まだ、足とか前とか塗ってませんよ」


「こういうのって自分の手で届かないところを塗ってもらうもんだろ? 自分でできるところは自分でやりなさい」


「拒否します」


「なんでだよ」


「それは……玲くんに塗ってもらった方が気持ちよくて、幸せを感じられるからです」


「あのなぁ……」


「ダメ、ですか?」


「ぐっ……ダメ、じゃないけど」


 そんな蕩けた甘い声でおねだりされるとどうにも断り切れない。

 潤んだ瞳で見つめられ、こてんと首を傾けた陽菜のお願いについダメじゃないと口にしてしまった。


「玲くんならそう言ってくれると思ってました。では、当初の予定通り、しっかり隅々……水着の下の方までよろしくお願いしますね」


「……いや、水着の下は日焼けしないだろ」


「……水着が波に攫われて流されてしまうことも考慮して念入りにお願いします」


「……それは困るな」


 日焼け云々ではなく、そのような事態は避けてほしいが……足とか前とかはともかくさすがにそこまでは塗ってやらないからな。

 仰向けになり、はだけたビキニを胸に乗せただけの無防備な状態の陽菜に手を伸ばす。うつ伏せと違って顔が見えるとまた違ってなんだか恥ずかしさが倍増している気がするな。


「じゃあ、頼むから変な声出すなよ」


「それは……お構いなくです、あっ……ん」


 追加のジェルで指をぬめらせて、陽菜の綺麗なお腹に手を添えると案の定というべきだろうか。俺の理性を叩き壊そうとする甘く痺れる声が耳を通り抜けていく。

 蒸し暑いテントの中に響く声は……まだもうしばらく収まりそうにないな。


 ◇


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