第108話 夏のお構いなく

「海ですよ、海! テンション上がりますねっ!」


「そうだな」


 俺達の夏を締めくくる一大イベント。

 海水浴、そして二泊三日の温泉旅行にやってきた。


 海水浴のできるビーチの近くの旅館を予約して、海と温泉を満喫する贅沢だが幸せな時間。

 旅館にチェックインし、荷物を軽く整理してビーチに繰り出すと、燦々の太陽と気持ちいい潮風、熱い砂浜がお出迎えしてくれる。これにはうちの陽菜さんのテンションも爆上がりで、かわいさが勢い余って2.5乗してしまっている。


 天気も良く非常に海日和なため、ちらほらと利用者も見かけるが、シーズンど真ん中と比べるとやはり落ち着いているのか、人酔いはしなさそうである。

 人目を気にせず楽しめそうで心が躍るな。俺も陽菜のことをとやかく言えないくらいテンションが上がっているのかもしれない。


「じゃあ、水着に着替えたらここで集合しましょう」


「おう。陽菜の水着……楽しみにしてる」


「もちろんです。玲くんを悩殺してしまって、思わず岩場の陰に連れ込みたくなる気持ちにしてあげますね」


「それは……困るな」


 綺麗に決まったウインクに胸を撃ち抜かれる思いだ。

 陽菜の水着姿は言わずもがな刺激的で破壊力で満ち溢れているだろう。せっかくの海なのだから純粋に楽しみたい気持ちもあるが、そのような宣言をされてしまうと本当に岩場の陰に連れ込んでしまいたくなってしまうかもしれない。


 まあ、なるべく耐えるつもりだが、俺の理性くんの耐久値もかなり低くなっている。海パワーを乗せた陽菜の全力攻撃をどこまで受け止められるか……不安しかない。


 そんな二重のドキドキを抱えたまま、海の家の更衣室で着替えを済ませる。

 海パンを履いて、上にラッシュガードを羽織って着替えは終わりだ。

 荷物は必要な物以外はロッカーにしまって、身軽でいいな。必要なものは貸し出しもあるみたいだし、休憩でパラソルとかが欲しくなったら適宜って感じだ。


 そうして準備を終えて外に出て、夏の日差しを浴びる。

 もう八月も終盤でありながらまだまだ暑い日は続きそうだ。

 そして、これだけ日差しが強いと日焼けに用心する必要がある。一応というかそちらもメインだが、温泉旅行も兼ねているため、日焼けで肌がダメージを受けて、せっかくの温泉を楽しめなくなっては大変なのでケアは怠らないようにしよう。

 ラッシュガードをつけてはいるが、油断せずに日焼け止めも塗らなくてはいけないな。


「玲くん、お待たせしました」


「おう……」


「どうですか? 岩場の陰に連れ込みたくなりましたか?」


「……それは気が早い。でも、めちゃくちゃかわいいよ」


 陽菜の声に顔をあげてそちらを向き、思わず唾を飲み込んだ。

 水着選びに付き合った時に俺が選んだ、ワンショルダーのビキニを着てくれている。落ち着いた色で派手さはないが、やはり着こなす人がいいからかとても美しくて目が離せなくなる。

 岩場の陰に……とまではいかないが、やはり意識してしまうな。


 幸いなことに俺の好みを反映させて落ち着いた水着ではあるが、攻撃特化で布面積少な目でこられてたら危なかったかもしれない。


「玲くんのもいいですね。かっこいいです」


「男の水着なんて似たようなもんじゃないか?」


「そんなことありませんよ。かっこよすぎて岩場の陰と言わず旅館に直行したいくらいです」


「おい、海の楽しみはどうした」


「…………冗談ですよ。半分くらい」


 じゃあ、半分は本気なのかよ。

 まだ海で何もしていないのに旅館にとんぼ返りはさすがに嫌だぞ。

 俺は陽菜と一緒に海を満喫したい。


「というかいきなり肌晒すんだな。日焼けには気を付けろよ」


「はい、日焼けしないように日焼け止めは念入りにお願いします」


「……もしかして俺が塗るの?」


「そんなの当たり前じゃないですか。全身隅々まで塗ってもらわないと……!」


 上着などを羽織らずにいきなり全開の陽菜。らしいっちゃらしいが、夏の日差しには気を付けてほしい。

 そう思ってケアを促す声をかける。だが、なぜか日焼け止めを塗るのは俺の役割らしい。当たり前か……塗る分には構わんが全身隅々はハードルが高いな。


「じゃあ、テント借りるか。どうせ後々使うだろうし、あった方がいいだろ」


「岩場の陰ではなく、蒸し暑いテントの中でということですか?」


「あの……そっちの思考に逸れるのやめない?」


「お構いなくです」


 構いなさい。

 まったく……すぐそうやって俺を誘惑する。

 いつからそんな悪い子になったのだろうか。いや、元々こんな感じで、自分の要求を押し通すためなら何でもする子だったか……。


「そういうのはまたあとで。せっかくの海日和なんだから、まずはこっちを楽しまないとな」


「分かってます。玲くんと一緒ならなんだって楽しいです」


「おい、抱き着くなよ。暑いって」


「お構いなくっ」


 テントを借りに向かおうと歩き始めると、小走りで隣にやってきた陽菜が俺の腕を絡めとり抱きかかえた。

 柔らかいものが押し付けられて幸せではあるが、歩きづらいし何より暑い。

 しかし、俺の抗議の声も伝家の宝刀お構いなくで跳ね返されてしまう。


 この強引な感じ……やっぱり陽菜はこうでなくちゃな。

 青い空。青い海。白い砂浜に白い肌。この暑さと熱さ……本当、夏って感じだ。


 ◇


 3月3日は本作のヒロインである陽菜ちゃんのお誕生日です。

 お誕生日おめでとうございます!


 3月3日の語呂にちなんで三上(みかみ)、雛祭りの日にちなんでの陽菜(ひな)となっているので、とても覚えやすいと思います!

 いっぱいお祝いしてあげてくださいね……!


 彼女へのお誕生日プレゼントに、感想やレビューなどお待ちしております……!

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 引き続き応援して頂けると幸いです~

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