第106話 入浴ピロートーク

 寝起きから快楽に溺れる背徳的な過ごし方をして、今は二人で入浴中だ。

 昨日はタオル着用と濁り湯だったが、本日はお互い裸で入浴剤無しでの入浴になっている。

 透き通る湯。白い肌。今から隠すこともないが、平然と振る舞うことはまだ難しい。


「玲くん、玲くん。私達って……身体の相性もいいみたいですね……!」


「ぶっ!? いきなりなんてことを……」


「だって、そう思いませんか? 私も初めてだったので詳しくは分かりませんが、あれだけ何度も続けるのは相当相性がよくないと難しいと思います」


「それは……まぁ、そうだろうな」


 いきなりのことにむせてしまったが、言いたいことは理解できる。

 言わんとしてることは昨夜の激戦と先程のアレについてだろう。


 夜通し続けると言葉にするとそれだけのようにも聞こえるが、きっと簡単なことではないだろう。

 まず大前提として、行為が気持ちよかった。何度も繰り返すにあたってもっとも重要なことだ。

 お互い初めてで手探りで進めていた。俺だって女性経験は皆無だし、性行為なんてもってのほか。どこをどんな風にすれば快感を得られるのか知る由もない。


 それでもちゃんと気持ちよかったと言ってもらえて、演技では無いと分かる絶頂で乱れてくれたのは心の底から嬉しかった。


 あとは、ずっと気持ちよかったため、気持ちが萎えるということもなかった。

 初めてなので最初は陽菜の方に負担をかけてしまったが、それ以降痛いとか、気持ちよくないとか、そういうマイナスな気持ちを抱かせずに快感を高めていけたのは、やはり身体の相性もあるのだろう。


 萎えるタイミングも一切なく、性的興奮も途切れなかった。

 そういうの全部含めて、初めてとは思えないほどに気持ちいい初体験だった。


「やっぱり見立て通り、玲くんの指捌きは凄かったですね。どこを触られても気持ちよかったです」


「やっぱりってなんだよ?」


「前々から思ってました。玲くんに触られるとどこでも気持ちよくなってしまうので、えっちなことをされたらそれはもう乱れてしまうんだろうなって」


「そんな風に思ってたのか……」


 確かに耳とか背中とか触った時も、まるで性感帯を触られてるかのような反応だったっけか。

 そういうのと、実際に敏感なところを弄る愛撫は勝手が違うだろうが、気持ちよくなってくれているのならそれに越したことはない。


「でも、玲くんって本当に優しいというか、気遣いがすごいですよね。初めてのえっちなので上手くいかないこともあるかと思っていましたが、玲くんが優しくて丁寧で……一つ一つの声掛けや所作に愛を感じられて、とっても幸せでした」


「褒めすぎじゃないか?」


「そんなことありませんよ。乱暴に動いて痛くするなんてこともありませんでしたし、キスも愛撫も私が欲しいと思ったタイミングで必ずしてくれました。キスされながら弄られるの……本当に気持ちよくて、頭がおかしくなりそうでした」


 乱暴に……か。

 自分の快楽だけを優先したらそうなってしまうのだろう。

 あるいは、性知識の取り入れ先がアダルトなビデオなどに限定され、偏った知識をインプットしてしまった結果か。


 もちろん激しいのが好みだという人もいるのだろう。でも、基本的には痛いと思う女性の方が多いんじゃないかと思う。


 初体験であることを抜きにしても、AVなどでよくあるみたいにガンガン動くなんて俺にはできなかった。

 とにかく慎重に。俺が気持ちよくなるためだけの欲望の捌け口にしないことを意識して臨んだのが功を奏したみたいだ。


 幾度となく思うが、性行為が下手すぎて好感度に悪い影響を及ぼすなんてことがなくて本当によかった。


 風呂で話してるから厳密にはピロートークではないのかもしれないが、こうして感想などを言い合って、心が満たされる感覚を味わう。

 ただ……あまりにも褒めちぎられるので恥ずか死にそうだ。


「のぼせそうだからサッと身体洗って上がろうかな」


「あ、じゃあその前に……昨日は頭洗ってもらってないので、今日はお願いしますね」


「……頭だけでいいのか?」


「えっ、身体も洗ってくれるんですか? それは願ったり叶ったりなのですが……!」


 食い気味に目を輝かせる陽菜。ちょっとした冗談のつもりだったが、この感じだと引き返せなさそうだな。


 まあ、初体験も済ませた後だし、そのくらいならいいかと思っている自分もいる。


「その代わりどこ触られても文句言うなよ」


「はいっ、いっぱい気持ちよくしてくださいっ」


 うん……身体洗うと言っているのに、いったいナニをされるつもりなのか……。

 お望みとあらばやぶさかではないが。


「じゃあお返しで玲くんの身体は私が洗います」


「……せっかくだしお願いするか」


「素直でよいです。おっぱいで背中流すの……やってみたかったんですよね」


「……やっぱり遠慮しておこうかな」


「もうキャンセルできませんよ。気持ちよくなってもらえるように頑張るので覚悟してください」


 俺の軽率な発言のせいで、お互いの身体を洗い合う感じになったが……これ、洗うだけで済むのだろうか?

 洗って、汚して、もう一度洗い流して……なんて無限ループになったり……。

 まあ、まだ夏休みだし……許されるか。

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