第48話 亜人
魔物……ではないよな?
アトモスは見るからにネズミだ。その姿から魔物という考えが浮かんだのだが、それにしては余りにも態度がフレンドリーすぎる。魔物ってのは基本、人間と敵対してる存在だ。仮に言葉が話せても、こうもフレンドリーに接して来るとは思えない。
となると亜人? にしてはビジュアルに人間要素がなさすぎる気が……わからん。天才であっても、情報が全くない物を見極めるのは無理がある。
「さて、君に来て貰ったのは魔法の事を聞くためなんだが……その前にまず、君の疑問に答えて上げようと思う。凄く気になるだろう?僕の事」
アトモスが俺の考えを読み取り、そう申し出て来た。流石賢者……いやまあ、賢者じゃなくてもそれは分かるか。本人が驚く事を楽しみにしてたぐらいだから、一般的には知られてない種族だろうし。そんな彼に対して、興味を持つのはごく自然な反応だからな。
「ええ、まあ……」
「ふふん。そうだろうそうだろう」
アトモスが後ろ脚だけで立ち上がり、腰に手をやって胸を張る。この動きは人間っぽい。やっぱ亜人かな?
「僕の種族はアースワイズマン。地の賢人という種族さ。君達人間から見たら、亜人って事になるね」
やっぱり亜人だった。
「僕達の種族は魔法の能力に優れ、ずっと地の底で生活して来た。まあ少し前までだけどね。だから、人間で僕達の事を知っている者は少ない。で、人間は僕を見るとみんな決まって驚くって訳さ。どうやら僕達の種族は、地上にいるネズミという下等生物に似ているらしいね」
「そうですね」
「あ、因みに僕達が地中で暮らしていたのには訳がある」
「訳ですか?」
「実は僕達は地底の覇者、魔竜アーグレンの眷属だったのさ」
「魔竜アーグレンって……」
「そう!偉大なる我らが皇帝!ジークフリート陛下が下した魔竜だ!!陛下万歳!!」
アトモスが興奮気に叫び、その前足を上げて万歳する。眷属だった割に魔竜が倒された事を喜んでる節があるので、きっと魔竜からの扱いは宜しく無かったのだろう。
「あ、今、なんで主殺されて喜んでるんだって思ったでしょ?」
「はぁ、まあ……」
「魔竜アーグレンは凶暴な奴だったからね。ちょっとした事で、自分の眷属を殺しまくってたのさ」
それは嫌われて当然だな。
「あ、今のはあくまでも別の眷属の事ね。僕達の種族はそういう扱いは受けてないよ。だってほら……僕達ってプリチーでしょ?流石の暴君も、コーンな可愛い僕達には酷い事は出来なかったって訳さ」
アトモスが机の上で手を広げ、優美にくるりと一回転した。まあ可愛らしいと言えば可愛らしい見た目と動きではあるが、若干あざとらしさが滲み出ているので、ぶりっ子を見てるみたいでどちらかと言えば不快だったりする。まあ一々それを口にはしないが。
「けどまあ、僕達に害がないとはいえさ……やっぱ見ていて気分は良くないじゃない?だから僕達も魔竜アーグレンの事が嫌いだったって訳だ」
自分に害がなくとも、傲慢で暴虐な存在を嫌いになるのは当然の事である。まあそういうのがいいとか言う奴がいないとは言わないが。普通は大体そうだろう。
「という訳で……皇帝陛下にその魔法の能力の高さを買われ、この天才アトモスは帝国所属の大賢者をやってるって訳だ!自己紹介終わり!因みに体長体重スリーサイズはヒ・ミ・ツ」
ネズミのスリーサイズには全く興味がないので、尋ねるつもりはない。どう見ても寸胴だし。というかそれを秘密にするって事は、アトモスは雌って事だろうか? まあそれすらも果てしなくどうでもいいが。
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