第5話 魔王候補
「俺は俺だよ?」
「それは知っている。なぜ悪魔と契約ができているの?」
「それは俺も分からない」
俺の言葉に対し、アリアは不審な表情をする。
そんな表情をされてもなぁわからないものは分からない。すると、イフリートが助け船を出してくれる。
「ダイラル、お前がなぜ俺と契約できるのか教えてやろうか?」
「た、頼む」
「お前は悪魔に愛された存在だからだ」
「??」
(悪魔に愛されている?)
何を言っているんだ。イフリートと会うまで、悪魔と出会ったことがなかったのに、悪魔に愛されているなんて意味が分からない。
「まず前提として、悪魔と契約できる存在は限られている。それは分かるよな?」
「多分?」
俺が首をかしげていると、アリアが言う。
「悪魔と契約できる者は、いずれ魔王として君臨する存在になるの」
「え!? じゃあ、俺って魔王になるってこと?」
俺が驚いていると、イフリートがため息をつく。
「それには少し語弊がある」
「語弊?」
「あぁ。魔王になるのではなく、魔王になれる素質があるわけだ」
「それの何が違うの?」
アリアが首をかしげながらイフリートに尋ねた。
「全然違うね。最初から魔王になることが決まっているのと、魔王になれるかもしれない。過程が違う」
「あ~。そういうことか」
アリアの認識だと、悪魔と契約した存在すべてが魔王になることができると思っている。だが、本当は魔王になれる可能性があるだけで、魔王になれると確定しているわけではないということ。
「だから、魔王になるかどうかはダイラル次第ってことだ」
その言葉を聞いたアリアは納得したような表情をする。
「だからなのね」
「え?」
「ダイラルと初めて会った時、魔族側の人間だと思ったの。でも実際には違った。それがやっと納得いった」
「……」
(俺が魔王にねぇ)
なるつもりはない。だって、魔王になったらいろいろと大変そうだから。だけど、この状況になった時点で危険な状況になっているのは変わらない。
「アリアさん、一つだけ頼んでもいいかな?」
「何?」
「俺が魔王候補ってことは誰にも言わないでほしい」
俺の問いに対し、警戒しながら尋ねてくる。
「なんで……?」
「もし魔王候補とばれた時、俺の身が危ないからね」
「普通は逆じゃなくて?」
「一対一ならともかく、大勢で殺しに来られると勝てるわけがない」
そう。どんなに強い力を持っていたところで、多勢と戦ったら勝てない。それは今までの歴史で証明されている。
それに加え、人間の性質上、強大な力を持っている存在がいるとおびえてしまう。そして、関りを持たないようにするか、排除にかかってくるだろう。
誰一人として話せなくなる環境に陥った場合、精神的に持たなくなるだろう。排除にかかってきた際は、逃げ切れたところで孤独には勝てない。
どちらになったところで、俺にとってメリットがないのには変わらない。
すると、アリアは少し考えたのち、答える。
「分かった。でも、当分私と一緒に居てもらってもいい? 万が一ダイラルが暴走した時、友達として止めたいから」
「あ、あぁ」
(ん、友達???)
「俺たちって友達なんですか?」
「ここまで一緒にやってきたし、友達だと思っているよ」
「そ、そっか」
「だからアリアって呼んで」
「うん」
ヒロインと友達になるなんてなぁ。まあ、現状だと友達より監視役に近いかもしれないけど。
「じゃあ少しここで休んでから先へ行きましょうか」
「あぁ」
俺とアリアは休憩を取りつつ王宮に入った後のことを話する。そして、お互いが動けるようになったところでダンジョンを後にした。
「地下一階と繋がっていたのね」
アリアがボソッとつぶやいて、現状の位置を軽く理解する。
すると、イフリートが言う。
「臭うねぇ」
「何が匂うの?」
「同類のにおいさ」
「じゃあやっぱり」
イフリートの言葉が正しければ、アリアの兄さんが魔族と関わっているが確定した。
「おっと、敵が来たぞ」
「「え??」」
俺とアリアが驚いていると、目の前にはアリアを襲ってきたモンスターに似たような存在が現れた。
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