第4話 覚醒


 イフリートの言葉を聞いた瞬間、全員が驚きを隠し切れなかった。


 それもそうだ。イフリートとは、神話の世界に存在していたもので、現在では生存しているのかすらわからない状態であったのだから。


「お前は俺たちに選ばれたんだ。いや、俺たちが選ばされたのか?」

「ど、どういう意味だ?」

「悪魔と契約できる存在は限られている。それぐらいはお前も分かっているだろう?」


(いや、知らないよ?)


 まずもって、悪魔と契約できる存在がいること自体、初めて知った。


(もしかしてだけど今の俺って悪魔と契約しているってことか?)


「その顔を見る限り、知らないっぽいな」

「あはは」

「まあ、この話はあとでいい。それよりも目の前の奴を殺すんだろ?」


 俺とイフリートはエリバの方を見ると、ゾッとした表情をしていた。


「お前は何者なんだ!?」

「俺も知りたいよ」


 まずもって、ダイラル・アークレイという存在がどのような人物が謎めいている。前世の知識でもあまり情報がない。


「ここで計画を崩すわけにはいかないんだぁぁぁぁ」


 エリバ叫びながらこちらへ切りかかってくる。


(あれ、遅くないか?)


 先ほどまでものすごく早く感じていたのに、今はスローモーションに見えた。そのため、攻撃をすんなりと避ける。


 そんな攻防を繰り広げていると、イフリートが言う。


「雑魚は行動まで一緒だな」

「え?」

「危機的状況に陥った奴らは、何も考えずに正面切って攻撃してくる」

「あ~」


 イフリートの言う通り、エリバが何か考えて行動しているようには見えないし、隙だらけの状況でもあった。


「時間も無いし、すぐにこいつを殺すぞ」

「あぁ」


 できれば人を殺したくはない。だが、現状で他の策が思いつくほど俺は頭がいいわけでもない。


 死炎ヘルフレイムを付与してエリバの剣とぶつかると、溶けていった。


 目の前で起きた光景に驚いていたエリバに対し、首を切り落とした。それと同時に体が焼け焦げていった。


(これが悪魔の力……)


 そう思っていた時、体の力が一気に無くなり、立つことすらできなくなった。すると、アリアがこちらへ近寄ってきた。


「ダイラル、大丈夫ですか?」

「あ、はい」

「やっぱり限界に近かったようだな」


 イフリートの言葉に首をかしげていると話始める。


「俺の力を使える代償は、お前の体力だ」

「そ、そうなんだ」

「あぁ。だから、俺の力を使いすぎるとお前は死ぬ」

「……」


(諸刃の剣ってことか)


 悪魔と契約したって時点で分かってはいたことだが、命に関わるほどの代償だったとはな。


 俺は一呼吸を置いて、アリアの方を向く。


「ごめん」

「え?」

「アリアにとってエリバは大切の人でもあったのだろ?」


 幼少期からアリアのことを知っていたエリバ。王族ということもあり知り合いが少ないアリアにとって大切な人であったに違いない。


 だが、俺の考えとは裏腹に、アリアは首を横に振った。

 

「大切な人ってわけではありませんよ。それに命を狙われた時点で死ぬ覚悟もできていたでしょう」

「そ、それもそうだな」


 アリアにそう言ってもらえてよかった。


 俺が安堵していると、アリアが俺とイフリートの方を向いて尋ねる。


「ダイラル、あなたは何者なのですか?」

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