第3話 悪魔との契約


 俺が剣を抜くのと同時に、アリアさんはスケルトンに対し、聖魔法を唱えて浄化させてしまう。


「すごい……」

「私にはこれぐらいしか出来ませんので」


(これぐらいがすごいんだけどなぁ)


「アリアさん、ダンジョンを抜けるのにどれぐらいかかるのですか?」

「私も初めて入った場所ですので、正確には分かりませんが、多分半日ほどだと思います」

「わかりました」


 その後も何度かアンデットと出くわすが、アリアさんがことごとく倒してしまう。


(俺、必要ないのでは?)


 ここまで一度も戦闘に参加することなく進んでいる。


「何もできなくてすみません」

「適材適所ですよ。それにダイラルさんの強さは知っていますから」

「え?」


(俺の強さを知っている?)


「私を助けてくれたじゃないですか」

「あ~」


 そう言えば、そうだった。だけど、なぜあの時に力をつかえたのかわからないんだよなぁ。


 俺が少し考えたそぶりを見せていると、アリアさんが上目づかいでのぞき込んでくる形で見てくる。


「どうかしましたか?」

「えっとですね。あの時に使った力は、俺の力では無いと言いますか」

「それはどういう意味ですか?」

「突然、声が聞こえて力を貸してくれたのです。それが誰なのかすらわからない」


(まず、あいつは誰だったのだ?)


 なぜ力を貸してくれたのかすらわからないし、俺がそれを扱えたのも理解できない。


 すると、アリアさんがボソッとつぶやく。


「あなたは……」

「??」


 首を横にかしげる。


「まあ今考えても解決しませんので、先へ進みましょうか」

「はい」


 王宮に近づいていくごとにモンスターの数が増えていき、俺も戦闘に参加するようになって行った。


(幼少期から剣術や魔法を学んでおいてよかった)


「ダイラルさん、強いですね」

「強いのですかね?」


 俺自身が強いのかわからない。なんせ、誰かと比べたことがなかった。それに加えて、前世の知識にあるダイラルは、ゲーム世界ですぐに死んでしまう存在であったのだから。


「強いですよ!!」

「あ、ありがとうございます」


 その後も軽く雑談をしながら先へ進んでいき、大きな広場にたどり着く。


「あと少しです」

「はい」


 すると、暗闇の中から数人の騎士が現れる。


 隣に立っているアリアさんを見ると、険しい表情をしていた。そのため、俺はすぐに剣を抜く。

 

 すると、騎士の一人が話しかけてくる。


「やっぱり生きていましたか」

「エリバ、あなたからその言葉を聞けるなんて思いもしませんでした」

「あはは。アリア様なら流石に気づいているのでしょう? だからここにいるってことが裏付けていますしね」


 俺は話の状況が理解できず、アリアさんに質問をする。


「目の前にいる人は誰ですか?」

「兄に使えている騎士であり、騎士団長を務めている方です」


 アリアの回答に対し、エリバが言う。


「そこにいる男、お前には恨みがないが死んでもらう必要がある」

「……」


(やっぱりこうなるよな)


 エリバに使えている騎士たちが一斉に攻撃を仕掛けてきたため、俺は一人で応戦する。


(数が多すぎる)


 一対一なら負けることはないが、数体一なら話が別だ。


(どうする?)


 今使える魔法を使いながらギリギリの戦いを繰り広げるが、時間が進むのに対し、死ぬことが現実味を帯びてきた。


(俺はこんなところで死ぬのか?)


 確か、ダイラルは変死体として死んでいたが、まだ時間の猶予があるはずだ。


 そう考えているとき、またしてもあの時聞こえた声がした。


{しょうがないな。契約をしてやろうか?}

{え?}

{だから、俺と契約をしてやろうかって聞いているんだよ}

{……}


 誰なのかもわからない奴と契約できるわけがない。俺がそう思っているのを読んでいるかのように言われる。


{お前に考える余地はあるのか?}

{……。契約をする}


 すると、腕に紋章が現れて、見たことの無い存在が目の前に現れる。


 それを見た俺とアリア、騎士たち全員が驚く。


「今からお前は俺の力を使うことができる。思う存分使うんだな」

「だけど、どうやって?」

「そんなこと自分で考えろ。だけど、さっきお前は剣で戦いながら魔法を使っていた。そんな感じにすればいいんじゃないか?」


(あ~。そういうことか)


 持っている剣に死炎ヘルフレイムを宿して騎士たちに切りかかると、斬撃が起きてエリバ以外の全員を殺す。


 目の前にいる存在が、笑いながら言う。


「やっぱりお前と契約してよかった」

「え?」

「俺は、七代悪魔の一人、イフリートだ」

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