第2話

農村「ゲオビラ」

今回標的にされた村はそんな山に囲まれた長閑な村だった。流石に魔王も考えたのだろう。火属性のモンスターによって、藁や木材など可燃性を持つ物質でできた家や倉庫は無事全焼した。

そして、俺はこの時一人で歩いてきたが自分の欠点を見つけてしまった。

「この状態だと…」

論理系モンスターによって、骨もなくなるほどに焼き尽くされてしまうのではないか。そんな状況を俯瞰から見てしまった。

背後を振り向く。誰も一人でなんか生きられないのだ。なんて思いながら歩くと、背後から大きな声、それも人間の出せないような声が体中に走った。

声の主を確認する。

外見はただの炎、違うことは僅かながら動き続けていること、そして、煙も出さずに燃えていること。

そして、俺はこの時自らの終わりを覚悟した。


「ネクス!」

私がそう叫ぶと杖の先に水が現れる。それから、水でできたビームが打ち出される。とにかく速く。

届け。速く。あの場所まで。

なぜ私はあんな野郎やつを助けようとしたのだろう。別に誰の命も助けようとしないのに。

違う。私を野郎やつのことを救いたいんじゃない。彼を、彼への償いなんだ。

私の杖から出た水は野郎やつの命を狙っていたモンスターを光速に近い速度で貫いた。

「なんで一人で何処かへ行ったの。」

「べ、別にいいだろ。」

そんなどうしようもない直しようもない癖、指摘は何回しただろうか。どうせ何度指摘しても無駄なのだろうけど。


「ねぇ、これが恋心?」

「いや、違うよ。」

「じゃあ、これは何なの?」

「これは喧嘩だよ。」

「喧嘩と恋はぜんぜん違うじゃん。」

「そうだね。」

煩い、五月蝿い、ウルサイ、うるさい。頭の中でそんな言葉が流れる。脈拍も速くなって、もう何がなんだかよく分からない。

私の中に何かがいるの。貴方は誰なの。貴方達は誰なの。

「コリン?大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ。おねえちゃん。」

蹲っていた私のことを心配したのかどうかわからない。でも、ありがとう。ただそれだけが心臓の中に木霊する。

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