魔王よりも暗く。

Rotten flower

現在編

第1話

馬車が揺れる。重たい空気を載せながら。そんな中、軽やかな声がそこに響いた。

「それでね、」

笑顔で話した調理師の姉の方も、結局空気に包まれて口を閉ざしてしまった。

全員がこんなに暗くなったのも、魔王は別に関係ないのである。いわば、人間関係に疲れてしまったのだ。まぁ、僕の場合であるが。

「おっと、お疲れ。」

そう、斧使いが馬を撫でながら言った。

「着いたみたいだぞ。」

斧使いがそういう。村に着いた頃には村中が大火事、パニックになっていた人も多かった。

「ああ、神様。仏様。お願いします。どうか我々にご加護を。」

火に向かってそう、土下座して祈るものも居た。結局、火は治らず、尚更燃え広がっていった。村をどんどんと阿鼻叫喚の嵐が包んでいく。

「で、どうする?」

魔法使いが言う。

「どうするって別に俺らは人を助けに来たんじゃない。魔物を倒しに来たんだ。」

それだけ言ってどこか火の方向とは違う方向へ歩いていった。


その背中を私は呆れた目で見ていた。この刺々しい目線が相手に伝わらないのだからとても不愉快だ。

それから、「まぁ、いいや。」と心の中で呟くと、

「ネス!」

そう私は火に向かって叫ぶ。上空に水の塊ができたかと思うと瞬きを一、二回程度できるぐらいの間隔を空けて、火に降り注ぐ。

全く、あんなんだから人間関係がうまくいかないんじゃない。そう私は思う。

「やっぱり、私は困っている人を野晒しになんかできない。」

幹が腐ってしまった倒木に腰をかける。

「何?考え事?」

姉のメラーが話しかけてくる。続けざまに、

「聞いてあげるよ?」

と、妹のコリンも話しかけてきた。

「いや、別になんとも。」

私はそう嘆くと、

「「いやいや。」」

二人が同時に話すと同時に私の隣に座ってきた。特に隣に座られても問題はないし、私が避けた方がいいのではないだろうか。と考えてしまう自分がいる。


「ねぇ、私、うまいこと笑えてる?」

「うん、上手いこと笑えてるよ。」なんて口に出さなくても気づいてるよね。

「貴方のことは信じていいものなの?」

「うん、信じていいよ。」君も私も互いに心配したくはないでしょう。信じたいものだけ信じて、信じたくないものは信じなくてもいい。逆も然りだ。

「コリン?」

「何?」

大丈夫。心配させないようにするから。二人とも苦しまないようにしたいじゃん。

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