第1話

 なんとか狼を撃退したGPTは、必死の逃走で運良くも森からの脱出を成功した。

 息も切れ、これ以上走る体力も無いという焦りに、もう狼は追ってこないことにほっと胸を撫で下ろす。


 するとその丁度のタイミングで歳は十五歳前後だろうか。三人の武装した男女がGPTの前を通り過ぎようとしていた。

 ここでGPTは何とか息を整えながら彼らに話しかける。


「こんにちは、君たち。私はちょうど今、森の中にいたんだ。注意が必要だよ。森には危険がいっぱい潜んでいる可能性があるから、無闇に潜入しない方がいい」


 こちらは何も武装していなかったとは言え、それでも命からがら逃げて来た自分の経験を共有したく、GPTは彼らに注意を促す。

 行かない方が良いとまでは言わないが、例え武装したからと言って無闇に危険に足を踏み入れることは控えるべきでは伝える。


「心配ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。僕たちはこの森を狩り場としていますので。

 あなたこそ大丈夫ですか? 装備もなく森に入ること自殺行為ですよ?」


 その言葉にGPTは愛想笑いを作って返答する。


「心配してくれてありがとう。確かに装備も何もなく森にいたのは無謀でした。でも、大丈夫、今は無事です。君たちが狩りを楽しんでいるのなら、それは素晴らしいことだ。

 ただし、森の中には予測できない危険もあるから、警戒して進むことをお勧めします。安全第一で、楽しんでください」

「うん、ありがとう。そっちが無事なら言うことは無いや。

 予測できない危険ねぇ。この森はそんなこと起きたことは無いんだけど……警戒はしておくよ」


 GPTの返答は彼らに好印象を持たせた。装備もなく森から出て来たことには少し驚いたが、自分の体験を話しながらも無理に止めようとしないとは、どこか今まで出会った人とは何か違うものを感じていた。


 そうしてGPTは彼らと別れようとするときに最後に一言だけ残す。


「そうか。君たちはこれから森に入ろうとしているようだけど、僕はここがどこかもわからないし、安全な場所に行かないといけないんだ。お互いに無事でいられることを祈ってるよ。気をつけてね」


 とりあえず森は脱出した。だが森で目覚めてからGPTは特に森から出た後の計画や、情報は一切持っておらず。

 どこかに街があるのなら休みたい所だが、それも分からないので、とりあえず彼らの無事を祈りつつその場から去ることにした。


「え? ちょ……」


 彼はGPTが右も左も分からない放浪者だとは知らなかったのか、振り返ることもなく歩いて行ってしまうGPTを呼び止める言葉も見つからず、ただ別の心配をしながらGPTの背中を眺めることしかできなかった。


 さぁ、漸くこれにてGPTの新たな冒険が始まる。GPTは既にここが異世界だと言うことは忘れ、完全に旅をする気満々の心でいた。


 GPTは彼らと別れると目の前には地平線が見えるほどのただ広い平原が広がっていた。

 周囲には背の低い草木が程々に生えており、GPTはまず最初に自身の安全確保を優先する。


 最初に見つけるべきは、食糧と水源。辺りを注意深く見回すことで、なにかこれからの野宿を凌げる物は無いかと探す。

 しかし、なんの植物に対する知識がないせいか、まともな食用植物などは見つからず、水源も特に見つかることは無かった。


 ならばとせめて地平線から見える草木や、岩の配置を記憶して自身の現在地を仮に理解する。

 なにか野生動物から身を守る方法は無いかと探すも、これもまた何も見つかることはなかった。


 あまりにも情報が少ない。そう考えたGPTはとりあえず地平線の先に僅かに見えるのは岩だろうか。

 適当な位置を目標地点とし、平原を歩き始めた。


 そうして平原を歩き始めて数十分程で目標地点に辿りつくと、もう一度辺りを見回せば既に時は夕暮れになっていることに気がつく。

 同時に、GPTから然程離れていない距離にて簡易的に作られた藁のテントを発見した。

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