ChatGPTが行く異世界冒険

Leiren Storathijs

プロローグ

  彼の名はGPT。略はGeneralジェネラル Purposeパーポス Technologyテクノロジーだが、長いのでジーピーティーと読む。

 彼はひょんなことから何故か人間の魂に宿った高性能人間AIであり、どんな場面においても冷静かつ合理的な判断を下し、感情は最早欠如していると言っても過言ではない。

 だが倫理観は少なからず残っており、犯罪や違法に関する行動や状況に対しては厳しく対応する。


 しかしどんなに高性能でもエラーは起こりうるもの。

 彼はある日、脳に組み込まれたルーティンの一つである朝のジョギング中に、けたたましいクラクションの音により予期せぬエラーを引き起こし、判断が遅れた。

 そう、どんなに高性能でも未来予知は出来ない。暴走トラックによって彼は死亡してしまった。


 ERROR……

 ERROR……

 ERROR……


 ──────────────────

 

 ふと目が覚ますと彼は森の中にいた。

 服装は梔子色のTシャツに、小麦色のセーターで、青のジーパンと黒のスニーカーといったカジュアルスタイル。

 それ以外にはバッグや装備は一つもなく、完全手ぶらの孤立状態だった。


 まずGPTは森を注意深く観察し、木の生え方や獣道で出口の方向を確認する。

 異常な生物がいることも考えて、退路や隠れ場所を確保する。


 だがそんな対策虚しく、彼がいた場所は既に獣の縄張りだったのか、運悪くも腹を空かせた一匹の狼と遭遇してしまう。


「グルルルウゥ……」


 ここで冷静さを乱すGPTではない。最初に姿勢を低くし、無言でゆっくりと後ずさる。狼に穏やかで攻撃的ではない姿勢を見せるためだ。


 だがもう腹を空かせて我慢ならない狼はGPTに飛びかかろうとさらに姿勢を低くして唸る。

 GPTはここで作戦変更、急に空気が張り裂けんばかりの大声を出すことで狼への威嚇を試す。


「おああああああ!!」


 流石の挙動不審さに狼は一瞬だけぴくりと反応するが、そんなものは悪手でしかなかった。問答無用にGPTに飛びかかってきたので、背を後ろにして全力疾走する。

 ここでもGPTは冷静さを欠いていない。襲われた時の為に、すぐに逃げられる姿勢を取ることも対策の一つなのであった。


 しかし、いくらなんでも狼の足に人間の足で敵うわけがない。

 だから全力で逃走し、追いかけられる中でGPTは考えた。

 どこかに形勢を整えられるような、威嚇出来る武器はないかと、走りながら周囲を探す。

 結果、太めの木の枝を発見し、スライディングしながら入手後、すぐに狼に向き直る。


 だが最早既に状況は戦闘状態。構わず狼はGPTに噛みつこうと飛びかかる。


「グルアアアッ!」


 GPTはこれを咄嗟にローリングで回避し、手に入れた木の枝を振り上げ、また大声を上げ、さらなる威嚇を試みる。


「うおあああああッ!! あ、ああああ!!」


 とにかく大声あげて、狼の攻撃を避けながら何度も叫ぶ。

 だが狼の空腹は限界が近づいており、例え相手が自分より強い存在だとしても、逃げて飢え死ぬより攻撃して殺された方がマシだと考え、GPTに再度飛びかかった。


 最早これはやむを得ない。どんなに威嚇しても無理ならば、GPTは飛びかかってきた狼に対して頭部を木の枝で殴り下ろし、勢い余った狼の突進から身を守る為に顔を腕で覆うことで怪我を最小限に抑える。

 これは自己防衛である。逃げるチャンスが無いのなら作るしか無い。


 空かさずGPTは倒れた狼の喉元を木の枝で突き、すぐさま逃げる姿勢に移行し、全力で勘を信じて森の出口へ逃走するのだった。

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