第25話 魔法学校……デュラン


 魔法の船は、きりの中を渡って、魔法都市に向かった。

「霧の先に何か見えます」

 カナミは言った。

 ユウトは、目を凝らした。霧が絶え間なく視界をおおっている。次の瞬間、覆われていた霧が晴れ、突然その先に魔法都市デュランが現れた。

 雲が流れ落ちるように、消えていく。

 カナミは言った。「日記に記されていた通りの場所にありました!」

 カーマンはくるくる回った。

 サーシャは机に広げられた地図の上に目をしばたかせた。

 雲が開かれ、まるで雲が大河のように流れ、魔法都市全体を雲が包み込むように渦巻いている。

「すごい」

 やがて、船は航路を辿ってデュランに到着した。一行は船から降りた。辺りを見回したが、出迎えの者はいなかった。

 それにしても静かだった。まるで、人の気配が消えてしまったようだった。

 一行は、船から降りると、奥へすすで行った。

 奥には壮大そうだいな石のとびらたたずんでいた。

「旅人か?」

 石のとびらは声を上げた。

 ユウトは、立ち尽くした。

とびらが喋るのか?」

「話せたら問題なのか?」

 ユウトは首をふった。「別に問題ないさ」

「何の用だ?」

「俺たちはここで魔法を学び、見聞を広めやって来た」

 扉は笑った。「それは誰もがそうだ。ここは魔法学校デュランで、魔法の学校がある場所だ。そして、ここは誰でも入ることができる場所という訳ではないのだ。そこの事を分かっているのか?」

 ユウトは入学証を出した。

「なるほど。入学証を持っていたか」石の扉は笑った。「では、テストをしてやろう!」

 ユウトは首を傾げた。

「入学証を示せば入れてくれるんじゃないのか?」

「それは違う」扉は言った。「入学証は、あくまで入学証。たとえそれを持っていても、相応しくないものものは入れない」

「どういう事だ?」

 とびらはゴンゴン鳴った。「ふるい落としが必要だ」

 ユウトは肩をすくめた。それから、石の扉は問題を出題した。

「では、この中で一番、強いものと、頭のいいものの二名を合格とする。それ以外の人間は立ち去れ。合格できるのは、二人だけだ。どうだ、答えよ!」

 ユウトは呆然とした。全員が合格できない?

 カナミと、カーマン、それにサーシャは文句を言った。

「ひどいです」

「インチキよ」

「なんて傲慢ごうまんなの!」

 ユウトはとびらに背を向けた。「ならいいや」

「何だと?」石の扉は言った。「お前は、今何と言ったのだ?」

「俺は、興味なくなったと言ったんだ。俺がここに来たのは、仲間を見捨てる為じゃねぇ。仲間と一緒に強くなるためだ。仲間と一緒に、冒険出る強さを手に入れに来た。だからここで、誰かが欠けるようなら、そんな学校に興味はねぇ」

「ならお前は特別に認めてやろう。あと二人、選ぶがいい?」

「俺は帰る!」

 ユウトは背を向けると、歩き出した。その瞬間、ファンファーレが鳴り響き、石の扉が重い音を立てて、開いた。

「これは!?」

 扉は言った。「お前たちは合格だ!」

「なぜですか?」カナミは言った。

「ここでの試験は、実力を試すものではない。あくまで、この学園にふさわしい者たちかどうかを試していた。ここで簡単に仲間を見捨てるようなものは、学園にふさわしいとは思わず、不合格だった」

 ユウト笑った。「なんだ、お前、おどろかすなよ」

 カーマンはくるくる回った。「本当よ。わたし、一瞬どうしようかと焦ったもの」

 サーシャは言った。「あの、オカマさん。一瞬、仲間の誰を見捨てようか、考えていませんでした。わたしは新人だから、真っ先にとか……」

 カーマンは笑った。「んなわけないでしょ。わたしは、あなたとおも友達よ。まだわたしたち、これからもっと仲良くなれるわよ」

 カナミはそんな二人を見て笑った。

 ユウトは、とびらに礼を言うと歩き出した。

 とびらの先には、魔法を学ぶ者たちであふれかえっていた。建物は動きや姿を変えた。突然、壁からとびらが消えたり、顔が現れて、そこに居た者たちを驚かせたりした。案内する、者もいた。

 生徒たちは、人間だけでなく、多様な人種だった。

 ある生徒は、指をくるくる回しながら、呪文を唱えると、口から不死鳥ふしちょうが炎とななって飛び上がった。

 天井をぐるぐる回って、燃えきた。

「おお、すげぇなここ」

 一人の眼鏡をかけた男が現れた。

「あなたちは入学申し込みのものですね?」

 ユウトは頷いた。

「では、こちらへ」




 通された場所は、校長室だった。

 校長室には、見たこともないような不思議なものが置かれている。紫色の液体に収められたのうがあった。からびたうで。キラキラと光る七色の石像が置かれている……。

「おお、久しぶりの特別とくべつ学生じゃな」

 校長はおもむろにお辞儀した。

「初めまして」

 ユウトと、仲間たちも同様にお辞儀した。

「では、さっそくじゃが、きみたちをこの学園の生徒として迎え入れよう」校長は、指をくるくる回した。

 すると、ユウトの持っていた入学証が浮かび上がった。

「これはまことに古い。だが、間違いなく、我が学園の入学許可証。これをもともと持っていた者は、、さぞ優秀なものだったんじゃろうな。なになに。ここに記されている経歴書によれば、お前さんたちずいぶん苦労してここまで来たみたいじゃな」

 ユウトは言った。「何か書かれているのか?」

「ここにはの。お前さんたちがこれまで行った、物語が記されている。お前さんたちが、どこに行き、何をして、何を考え、どうやってここまでたどり着いたのか。その簡単な経歴が記されているのじゃ」

「俺は、そんなの書いた覚えねぇぞ知らねぇ」ユウトとは言った。

「これは魔法の羊皮紙じゃ。だから、勝手に記憶してくれるのじゃ」

 カナミは尋ねた。

「わたしたちは本当に入学できるんですか?」

 校長は笑った。「まさしく。きみたちはとこの魔法学園と生徒になった!」

 校長が指を鳴らすと、胸に金のバッチが取り付けられた。

「うわ。すっげぇ」

 ユウトは目を輝かせた。

「簡単に説明する」校長は言った。「これからしばらくりょうに入ってもらう。男女、別々になっておる。学校では、誰もが学び、教えをうことができる。期間は、ここで学びたいもの達が、満足いくまでだ。何か質問はあるかな?」

 ユウトは質問した。

「飯の時間は?」

「基本的には、朝、昼、晩に決まった時間に食べる事が出来る。だが、食欲旺盛おうせいな生徒もいるじゃろ。そいう生徒には、秘密でご飯を作ってもらうこともできる。これは、特別に秘密なのじゃが、オヤツも隠れてもらうこともできるぞ!ワシなどは、学生の頃、よく隠れて食べておった。おかげで、少々太ってしまってな……」

 ユウトは頷いた。「ここは最高の学校だ」

 そのあと、カナミがあれこれ質問していた。だが、ユウトには難しくて理解できなかった。

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