第24話 その後


 ユウトは、トームの元に戻って来ていた。

「調査ご苦労だった」トームは深々と頭を下げた。

「俺は当たり前のことをしただけだ」

「いや。本当に、助かった。ワシはここの保護管として感謝している。報酬はやれんが、おまえにさずけたその笛を、本当の意味でプレゼントしようと思う。本来は、プレゼントするものではない貴重なものなんだ。ここの宝だと思ってい欲しい」

「うん。受け取った!」

 トームは微笑んだ。「お前は、どうやら動物たちに愛されているらしい」

 なぜか、辺りには森の動物たちが集まって来ていた

「おお、みんな元気か?」

 森の動物たちは、一鳴きした。

「わははあっは。俺も元気だ」ユウトは、サーシャに振り向いた。

「お前はこれからどうすんだ?」

 カナミは言った。「サーシャが、まさか妖精のお姫様だったなんて」

 サーシャはそっぽを向いた。

「別に隠していた訳じゃないわ。ただ、訊かれなかったから、答えなかっただけ。それと、私は妖精のひめとして、今回の騒動について調べる義務があったのよ」

 ユウトの頭から、鳥が顔を出した。

「おお、その鳥は」

 親鳥は、自分の子どもを見つけると、飛んで行った。

「ピヨ子の両親も連れ帰ってくれたのか?」

 ユウトは頷いた。「たまたま蜘蛛の身体からだに張り付いていたのを見つけんたんだ」

 久しぶりに再開した親子は、元気よく飛び立って行った。

 事件は解決した。

「じゃあ、俺たちはそろそろ出発するぞ!」

「別れか」トームは言いながらミーナのおしりを触った。

 殴られ、吹っ飛び、何事もなかったかのように、元の位置に戻った。

「おお、それでどこへ行く?」

「痛くないのか?」

「何のことだ」トームは首を傾げた。

「それで俺たちは、船が治ったら、まっすぐ霧の中心に向かって飛んでいくつもりだ」

 トームは首をふった。「それはやめておけ」

「なぜだ?」

 トームは眼鏡を取り出して日記帳を本棚から取り出した。

「ここに記されている。ここには、冒険者の記録がある。霧の奥深く先には、とこしえの闇が眠っている。魔物は強くなり、大地にかかる魔法は色濃くなり、生身の人間では、奥へは進んで行けない。その者は、最後にこう記してある。わたしは、一度冒険をあきらめることにする!」

 ユウトは首をふった。「俺は諦めねぇぞ」

「まあ、待て。話には続きがある」トームは語った。「この地から南東に行った場所に、魔法学校があると聞く。そこは遠くいにしえの時代より、魔法や、見識を学ぶ場所があると聞く。そこに行って、わたしはこの先に進むための英知を授けてもらおうと思う。だが、その場所には閉ざされた場所にあり、他の侵入を許さない。入る為には、通行証が必要だ。それを持たなければ、いかなる者も侵入することはできない」

 ユウトは頷いた。「俺は、そこに行きてぇ。俺は、もっと強くなりてぇ」

「なるほど。何かあったようだな」

 ユウトは頷いた。「いろいろあった」

「なら、手助けすることぐらいはできる。これを持って行け」

 ユウトはそれを受け取った。それは、魔法の文字で記された入学証だった。

「これなんだよ?」

「入学証じゃよ。この先必要にある!」

「どこで手に入れたんだ? おっさんのか」

「ワシを疑っているのか?」

「どうして持っているのか気にった?」

 トームは笑った。「この手帳をはじめ、入学証はわたしの祖先が受け取ったものだ。過去に、怪我を負った冒険者が運ばれてきた。その冒険者を助けたことがあったのだ。そして、元気になった冒険者は旅立っていった。だが、また戻ってきて、これらの品を置いて行ったという話だ。まあ、我が、家宝かほうだな」

「くれるのか?」ユウトは目を見開いた。

「やる!」

「受け取った」ユウトはふところに収めた。

 カナミはユウトに突っ込みを入れた。「すぐ受け取らない!」

「感謝ならしている!」ユウトは胸を張った

「確かにまぶしい瞳をしている」

「ほら、感謝が伝わっているじゃないか」

 カナミは吐息をらした。「それで、いいんですか?」

「勿論だ」トームは深く頷いた。「これを残した先祖は、いつかお前たちのようなものに、これをたくすように受け継いできたものだ。ワシも、これをたくすことができてうれしい!」

「よし。俺は、魔法学校に行くぞ」ユウトは決心した。

「あの」サーシャは言った。

「何だよ」ユウトはり向いた。

「私も連れて行ってくれない?」

 その場にいた、護衛の兵たちの目が飛び出した。

「ひ、姫様!」

「ねぇ。お願い。迷惑はかけないわ。わたし、このまま妖精の王国に居たら、我儘わがままなお姫様になってしまう」

 ユウトは笑った。「いつか、お前と喧嘩したな」

 サーシャ頷いた。「私をちゃんとしかってくれるのは、あなただけだわ」

 ユウトは頷いた。「よし。おまえもこい!」

 護衛の兵士たちは、反対した。「姫を連れて行かせるわけにはいきません。あなたちの嫌疑けんぎが晴れたとはいえ、わが国では、大罪人たいざいにんとして名が広がっているのですよ。そのあなたと姫が一緒に行くとなれば……」

 ユウトはサーシャを手でつまんだ。「なら、俺は海賊かいぞくだ」

 ユウトは、サーシャを手のひらに包み込んだ。「しばらくお姫様は、預からせてもらうぞ」

 兵士たちは、慌てて後を追った。

「じゃあな、トーム」ユウトは首にかけていた笛を吹いた。

 空から、怪鳥が現れた。

「よし、カナミ行くぞ!」

 ユウトとカナミを怪鳥の脚につかまると、その場から飛び立った。そして、船のある方向に向かって、飛び立って行った。





「あら、何よ。外が騒がしいわね」

 ユウトは怪鳥から飛び降りて、大地に着地した。

「よお。カーマン。久しぶり」

「いい休暇だったわ。船もこの通りピカピカよ」カーマンはユウトの一緒にいる少女を見た。「何、手のひらサイズのかわいい子?」

「サーシャだ。妖精のお姫様。俺たちの仲間になったんだ」

「あら、いいわね」カーマンはくるくる回った。

「よし、仲間も増えたところで、出発だ!」

 ユウトの合図で、船が動き出した。

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