第21話 牢獄からの脱出!


 ユウトはおりに閉じ込められていた。

 おりみついて、脱出しようとした。だが、おりはびくともしなかった。

「ぜんぜんダメだこりゃ」

「わたしたち、捕まって閉じ込められました」カナミは檻を揺すった。「やっぱりダメですね。おりは頑丈で、人間の力では脱出できそうにありません」

 妖精のパッチがやって来た。

「こら、お前たち、大人しくするデス」

 ユウトは檻をゆすって、抵抗した。「ここから出せ」

「ダメです。お前たちは、裁判にかけられるのです」

「何だよそれ」ユウトは言った。

「裁判は裁判です。そこで審議しんぎされ、お前たちのつみが決まるのです」パッチは言った。「もっぱら、もう判決は決まっているです」

「どういう事だ?」ユウトは尋ねた。

「妖精の畑を荒らしたんですから、死刑しけいです。妖精は森の命そのもの。その妖精が守っている畑をらしたとなれば、それは自然への反逆はんぎゃく行為。それは、つまり、自然そのものものを滅ぼそうとした、だい大罪人たいざいにんなのです!」

 ユウトは叫んだ。「俺はそんなことしてねぇ!」

 ユウトは怒りに任せて、おりを蹴飛ばした。

「何と、荒々しいか悪魔か」パッチは、身震いして立ち去った。

「困りましたね」カナミは言った。

「あいつ、とでもねぇ、勘違いしているぞ」

「そうですね。わたしたち、大罪人になってしまいました」

「何とかを打たねぇと」ユウトは考えた。

「このまま、裁判を待てば、まずい判定が下りそうです。だから、いったんここから逃げ出した方がよさそうです。でも、逃げ出すにしても……」

 ユウトは首にかかっていた笛を吹いた。すると、先ほど助けたハリモーグラが現れた。ハリモーグラはお礼を言った。

「いいって」ユウトは照れた。「それより、俺たちこのおりから出たいんだけど、助けてくれないか?」

 二人は、穴からおりを脱出した。




「ありがとう」

 二人は、助けてくれたハリモーグラにお礼を言った。

「よし、ここからは、二人だけで脱出しよう」

 ハリモーグラに別れを告げた。

「じゃあな。サンキュウー」

 ユウトは視界の先を見た。妖精の住処は、地下と、地上に大きく住処を広げていた。地下は、いくつもトンネルがあり、まるでアリの巣穴のようだった。

「これは、道に迷いそうだ」

 カナミは、通路を見た。「表に見張みはりりがいます。数分おきに見張りが巡回しているよです」

「よし、俺が先に行くから、着いて来い!」

 カナミは、ユウトのあとに従って、ついて行った。




「うわ、まずい」

 いきなりピンチだった。いきなり、見張りに見つかってしまった。

「どどどど、どうしますか!?」

 ユウトは、近くにあった部屋に入ってとびらを閉ざした。内側から、カギをかけた。

「これで、しばらくは安全だ」

「で、でも、すぐに捕まってしまいます」

 ユウトは部屋を見た。部屋は作業部屋になっていてガラクタや、作業机が置かれていた。

「何するですか!?」カナミは言った。

 ユウトは作業机のイス座ると、工作を始めた。仮面を作り、衣服を作った。素材は、そこらにあったガラクタを使った。

「よし、できた! これは名付けて変装へんそう大作戦!」

「まさか、これを着るんじゃないでしょうね?」サナは一歩後ずさった。

「心配するな。ちゃんと着せてやる!」

 サナは首をふった。「いやです。ダサいです」

「大丈夫。これを着れば、正体がバレない」

「絶対に着たくないです!」

 ユウトはサナに無理やりを着せた。緑の仮面に、葉っぱを加工して作ったスカートを穿かせた。

「もう、およめにいけないです」カナミは、座り込んだ。

 ユウトは思わず笑った。

「何だか、原始人の衣服みたいだ」

「もう、嫌です」

「似合うって」

「絶対に許さないです」

 ユウトは真面目な口調で言った。「でも、これなら妖精の仲間に見える!」

 カナミは首をふった。「そんな風に見えないです。ただの、野蛮やばんで、頭のおかしな女の子に見えるです」

「仮面で、顔を隠していあるし、自然にあるものだけで作った衣服だ。バレっこないって」

 カナミは涙目になりながら立ちあがった。

「ユウトさんの衣装が見当たりませんが?」

「材料がなかったんだ。だから、俺は、この仮面と……この海パンだけだ」

 ユウトは衣服をぬぎ捨てると、仮面と海パンを穿いた。

「へ、変態です!」

「そんな事ねぇよ。俺は真面目だ」ユウトはポーズを決めた。「うん。なかなか似合っているな」

「いえ、ただの変態です!」

 やがて、とびらが押し開かれ、二人は立ち尽くした。入ってきた、妖精達は、困惑した。

「お、お前たちは?」

 ユウトは答えた。「わたしは、マスクマン!」

「そっちの少女は?」

 カナミは呆然とした。かわりにユウトが答えた。「マスクマン、レッド」

 妖精たちは、しばらく考えた。だが、すぐに結論に至った。

「うん。怪しいものじゃない」

「当然だ!」

「それで、ここに怪しい奴が入ってこなかったか?」

「バレなかったぞ」ユウトは小声でささやいた。

「奇跡です」

「で、侵入者を知らないか?」妖精は言った。

「知っている!」

 その瞬間、ユウトはバレないようにマスクをとった。そして、油断していた妖精の隙間を通って、外に逃げ出した。そして、さらにまた仮面をつけると、妖精達に、「あっちに逃げたぞ」そう言って、廊下の向こうを指差した。

 妖精たちは、仮面と変装に弱かった。

 妖精たちは、その方向に向かって走り出して行った。

 バレていない。

「危うかった」ユウトは安堵した。

「マスクマン、あなたたちも一緒に」

 なぜか戻ってきた妖精の一人に、一緒に来るように告げられた……。




「カナミ」

 耳をそばだてた。「何ですか」

「俺が時間を稼ぐから、お前は先に外に逃げていてくれ」

「分かりました」

 ユウトは、仮面をとった。その瞬間、妖精たちが振り向いた。

「そこに居たか、悪者め!」

「私は、海パン人間だ!」

「おのれ、変態め! そのコスチュームは何だ」

「我がコスチュームを愚弄ぐろうするか」ユウトは言い放った。

「そんな変態な姿すがたで何を言う!」

「ならば見せてやろう」ユウトは小声て言った。

「今のうちに逃げろ」

 ユウトは小声でささやいて、カナミは逃げ出した。

「何を言っている?」妖精たちは言った。

「では、俺の必殺技を見せてやろう」

「何だと!?」

 ユウトは海パンでハレンチな踊りを披露ひろうした。

「くは、目がくさる! 変態な踊りをしやがって」

 妖精たちは目を覆った。

「やめろ変態!」

「まだだ。どうだ? 股間こかんを、回して、回してトウ!」

股間こかんを強調するな!」

「では、この海パンをぬぎ捨ててやろうか」

 妖精たちは驚愕した。「そんなハレンチな!」

「やろうか? やらないか……やろうか、やらないか」ユウトはおどった。

「やめてくれ!」

「まだまだ! 海パンは伸びるんだ」ユウトは、海パンの両側を引っ張った。

「うわああああ」妖精たちは目をが飛び出した。

「あいつ、海パンを引っ張り上げたぞ」

「こ、股間の部分がめ付けられている!」

 妖精たちの中に、気絶するものが現れた。

「半数を倒したぞ」

「なにという卑劣ひれつなな攻撃! これは、兵器にほかならぬ!」

 妖精たちは、伝令役に叫んだ。

「罪人は、兵器を持ち出したぞ」

 伝令役は、外と向かってかけて行った。

 ユウトは見守りながら、隙をついてこの場所を離れようとした。だが、妖精の警備隊が現れ、ユウト取り囲んだ。これでは、仮面をつけて誤魔化すことも、逃げ出すことも出来なくなった

 ユウトは覚悟を決めた。

「そこをどけ」

 警備隊はユウト取り囲んで、詰め寄った。

「どけと言われて通せるものか!」

「いいのかよ、俺にこの技を使わせて」

「何を言っている! 頭のおかしな奴め!」

「ふふふ、本当にいいのか、ダメなのか? いいのか、ダメなのか?」

 妖精たちは後ずさった。

 次の瞬間、ユウトはんだ。そして、妖精の顔面に向かって、またを開いて、海パンを押し付けた。

 股間こかんが密着し、妖精の兵士の一人が悶絶もんぜつした。

 言葉で表すなら、死んだ……。

 妖精は、精神的に抹殺まっさつされ倒れたww。

「な、名という恐ろしい技……」

 妖精の兵士たちは、口々に叫んだ。

 それからパニックになって慌てて逃げ出した。




 ユウトはその場から離れると、正体がバレないように仮面をした。

「ああ、これはマスクマン」

 ユウトは離れた場所で、妖精から事情を聴かされた。

「なるほど。では、わたしも脱出しなければ」

「ではこちらへ」

 妖精たちに手を引かれて、緊急脱出用のポッドに向かった。たどり着くと、そこには、カナミと数人の妖精達が待機していた。

「ささ、お乗りください!」

 ユウトとカナミは、ポッドに乗った。

「これより、緊急脱出ポットが発射します!」

 ポッドが発射した。すると、勢いよく地上に向かって、放出された。だが、その際、妖精達が見ているまえで、二人の仮面が吹き込む強風によって飛んで行った。

「うむううう!?」

 妖精たちは、驚いた。「まさか、お前たちだましていたのか!?」

「ち、違うんだ」

「いいや、違わぬわ!」

 ポッドは地上に投げ出され、森の外れまで飛ばされた。ユウトとカナミは、魔法のリュックから、ロープを取り出すと、妖精たちを全員をしばり上げた。

「な、何という屈辱くつじょく……」

 ユウトは、妖精たちに、すぐに解放すると約束した。それからすぐに変装を解いて、いつもの姿に戻った。

「ふぅ。すっきりしました」カナミは伸びをした。

 ユウトは海パンを手放した。

「これからどうしますか、ユウトさん?」

「俺は、治療薬をもって、化け物のところに行く!」

 それを聞いていた妖精たちが、質問した。ユウトは、丁寧に答えた。すると、幾人かの兵士たちは、その話に興味を示した。そして、話しが終わる頃には、その場にいた妖精たちは、ユウトの話を信じてくれた。

「なるほど、では、あなたたちは無実だったと?」

 ユウトはうずいた。「だから、じめからそう言っているだろ。俺たちは、森で狂暴化した者たちを救いたかっただけだ」

「だったら、事情を話せば?」

 ユウトは首をふった。「信じてもらえなかったから、だから俺たちはここにいるだ」

 妖精たちは申し訳なさそうに謝った。

「気にするな。俺は、お前たちをうらんでない。ただ、ちょっと話し合いが足りなかっただけだ」

 妖精たちは感動した。そして、ユウトとカナミは歩き出そうとした。

「でも、本当なの? 森の動物たちが、狂暴化するって?」

 ユウトは頷いた。

「なら、わたしもそれを見に行く!」

 一瞬、周りの妖精たいの目が見開かれたように思えた。

「それはなりません」

 周りの妖精達は口々に止めた。だが、少女は首をふった。

「行きましょう。このままここにいても、すぐに追手が来る!」

「それはマズいな」

 少女は言った。「私を連れて行きなさい。すこしは時間稼ぎになるから」

「だけど」

 少女は頷いた。「わたしは、サーシャ。あなたたちの本当の姿を見極めるために、しばらく同行することにします」

 ユウトは肩をすくめた。

 それから、その場を去ると、サーシャを連れて森の奥に向かった。

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