第15話 開かれた世界!


「俺たち戻って来たのか?」

 ユウトは空を見上げた。霧はまだ世界を覆っていた。霧の合間から空が見えた。青く、壮大な青空だった。

「ううぅ。わたしたち帰ってきたのねぇ」

 カーマンは嬉しさのあまりフォークダンスした。

「わたしたち、すごいことをやり遂げたみたいです」カナミは言った。「古代王国に行って、歴史を知って、それから古代魔法を使って、世界をおおっていた霧まで晴らしてしてしまいました」

 今なお霧はくすぶっている。だが、ゆっくりと晴れて行く。

「ああ、俺たち、本当にやりげたんだな」

「これから、どうするんだ?」

 カナミは霧の合間から世界を見た。

「この先に何があるんでしょう?」

 ユウトも霧の合間から世界を見た。世界はまだまだ厚い霧が残っている。すべての霧が晴れわたるまでには、時間がかかるだろう。

「俺は、この世界の先を見てみたい」ユウトは言った。

「わたしは、ユウトさんについて来ます」

「あちし、あちしは、気ままに旅に出るわ」カーマンは言った。

「じゃあ、ここでお別れか?」

 カーマンは涙をふいた。

「悲しくなんかないぜ。あちしたち、また会える!」

 三人は互いに握手した。

「ああ、そう言えば」ユウトは言った。

「何ですか」

 ポケットから小瓶こびんを取り出した。

「これ、ゼロスから渡されたものがあったんだけど」

 ユウトは小瓶のふたをとった。次の瞬間、小型の船が現れた。そこには、マストとが付いていた。

「これは!?」

 ユウトは驚いた。「すげぇ」

「どうしたんですか、これ」カナミは言った。

「最後の瞬間、ゼロスからもらったんだよ」

 カマーンは言った。「すごいじゃないの。これきっと、古代王国の宝よ。あなた、凄いじゃない!」

 三人は嬉しさのあまり一緒にフォークダンスした。

 それから、船内を確認してみた。すると、驚くことに、船内は見かけよりずっと大きく、部屋が幾つもあった。ベッド、キッチン、風呂、トイレ、食料貯蔵庫まで、すべて整っていた。

「うおぉ、最高だ! これなら、今からでも旅に出られる!」

 カナミは言った。「でも、私たちギルドの依頼で、いったん帰らないと」

 ユウトはカナミの話を無視して、かじをにぎった。

「出発するぞ」

「ギルドへの報告はどうするんですかぁ!?」

 ユウトはかじをきった。「そんなの知るかぁ。俺には、冒険が待っているんだぁ」

 カナミは船に飛び乗った。

 カーマンは寂しそうに船体を見上げた。

「お前、来ないのか?」

「だけど、わたし……」

「俺は何も聞いてないぞ。一緒に来たいのなら、飛び乗れ!」

「あちし、やっぱり行く」

「おうし、みんな乗ったな。じゃあ、きりの彼方へ向かって出発だ!」

 三人を乗せた船は飛び出した。そして、まだ深く残る霧の中を進んで行く。霧の中は、ものすごい低気圧がおおっていた。風が吹き荒れ、嵐が渦巻うずまいていた。

 出発した船はかじをとられ、何度も風に流されて、進めなかった。

 ユウトは地図を広げ、方向を確認した。地図にはうっすらと地形が見えた。これから向かう先が、うっすらと見える。

「この先に、俺たちの目的地がある!」

「ダメです、ユウトさん」カナミは言った。「風と雨が強すぎて、まっすぐ進めません」

「あれは何だ!?」

 空に稲光が走った。稲妻が道となった。

「いま一瞬ひとが見えたような」

「気のせいです!」カナミは叫んだ。「暴風に込まれて、かじがききません」

「何とかこらえろ」ユウトは叫んだ。

「まずいわよ」カーマンは叫んだ。「船が、低気圧の中心に向かって流されている! このままじゃ、船がばらばらになってしまう。とにかくかじを切って。舵を切って脱出よ。早く舵を切りなさいよ!」

 ユウトは首をふった。「このまま直進だ」

「あなた、わたしたちを殺す気!?」

 次の瞬間、船に強い衝撃が走った。稲妻いなずまが直撃していた。

「やばい、船が損傷そんしょうした!」

「あれを見て」

 カーマンは低気圧の奥を指差した。

 そこには、五体の稲妻があった。まるでりゅうの姿だった。

「一度、にげろぇ」

 ユウトは、無理やり舵を切った。船は、大きく左に旋回せんかいして、霧の中に潜った。船は、きりと、くもの間を進んだ。暴風は吹き荒れ、上下左右に向かって、風が吹いている。一歩、かじを間違えば、船体が分裂して、ばらばらになってしまう。

 ユウトは、船内になる舵をにぎり、霧の中心に向かった。

 と、突然、船が何かにすべり込んだ。それは、まるで着陸するかのようななめらかな衝撃だった。

 船は、ミルキーロードに入った。それは、雲の道だった。ミルキーロードは、雲の道で、雲の道から外れない限り、その道を通っていける。

 ユウトは、船内から外の様子を見ると、それを見た。

「雲の道だ!」

「な、何なのよ」カーマンが叫ぶ。「わたしこんなの見たこと無いわ」

 カナミも叫ぶ。

「すごい。すべり台をすべっているようです」

「よし、このまま進もう!」

 ユウトはかじを握り、二人はミルキーロードから外れないように外の様子を詳しく、伝えた。

 そして、一時間後、船は暴風雨を脱出したのだった。

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