第6話 冒険者って何!? いざ冒険へ


「俺たち、冒険者になったのか?」

 ユウトは歩きながら言った。

「うん。今冒険者ギルドから、冒険者カードが届いた」カナミは言った。「冒険者カードには使い道がいくつかあって、一つは物資などの補給ほきゅうができる事。二つ目は、手に入れた現金を保存しておく機能。通帳のようなものです。三つ目は、ランクが表情されるです」

「なんだよ、そのランクって」ユウトは首をかしげた。

「ランクは、その冒険者の実力や、功績こうせきによって評価される。評価が高ければ、それだけ優遇ゆうぐうされたり、特別な依頼を受けられるです」

「俺たちのカードは、ほし一つか……」

「ランクには、七段階あるです。現在は、七つ星冒険者が最高ほうとされているです」

 ユウトは目を輝かせた。

「七つ星って、どんな冒険者なんだ?」

 カナミは、ほほに指をあてた。「わたしが知る限り、七つ星冒険者は、魔法の発展に大きく貢献こうけんした人物です。確か、どこかの遺跡を調査して、凄い魔法を発見したんだとか」

「それすげぇのか?」ユウトは尋ねた。

「そうです」カナミは頷いた。「この世界には、魔法が存在するです」

 ユウトは頷いた。「それは、知っているぞ」

「だけど、もともとは、あやふやなものだったです」カナミは説明した。「ある日、そのすごい人が現れて、魔法とはこうやって使うんだぞ、って言って魔法を広めたよ人物です。すると、それまで魔法がほとんどん使われていなかった世界で、みんなが魔法を使えるようになったのです。それは生活を一変させ、暮らしを豊かに変えたとされています」

「その人物がやったのか?」

「まあ、そんなところです」

 ユウトは夢見るようにつぶやいた。「凄い奴だったんだな」

「ま、それが七つ星冒険者と呼ばれる所以ゆえんです」

 ユウトは頷いた。

「俺も、七つ星冒険者になるぞ」

 二人は、歩き出した。

「で、今回の初依頼だけど、未開の地の調査です。これに成功すれば、二つ星冒険者に昇格すると言われたです」

「すげぇのか?」

「はい。それはもう、立派な功績こうせきだと思います」

「俺は、がぜんやる気が出て来たぞ」

 カナミは荷物を見た。「いま、ここに、三日分の食料と、水が用意されているです。さっき、ギルドの人から支給されたです。わたしたちは、これを持って依頼を遂行すいこうするです」

「依頼って、何だっけ?」

 カナミはユウトにチョップした。「未開の地の探索たんさくおよび、進めなくなっている場所についての、謎を解き明かすことです!」

「おお、思いだした」ユウトは手を打った。

「しっかりして欲しいです」カナミは言った。「じゃあ、今から出発するです」

 二人は、森の奥に向かって歩き出した。




「ああ、疲れた」

 ユウトは早くも息切れした。

「思ったより、険しい道のりね」カナミは息をはずませた。

「俺、ちょっと休憩きゅうけいしたい」

「さっき休憩したばかりです」

 ユウトは、森の中で何かを発見した。それは、こけむした岩のようだった。

 ユウトはそれに座った。

 すると、それはゆっくり顔を上げた。

「おお、高い!」

 ユウトは、地上から十メートルほどの光景を見た。

「ちょっと降りてくるです」

 ユウトはそれの首元までのぼった。

「お前も乗れよ」

 カナミは一歩後退した。ユウトは、カナミに乗るよう伝えた。すると、なぜか、そのこけむしたそれは、カナミが乗れるように、首を下げた。

「わたし乗っていいですか?」

 カナミは恐る恐る登った。そして、大きな甲羅こうらの上に乗った。

「座りやすいです」

「しっかり掴まれよ。ふるい落とされるぞ」

「居心地抜群です」

「見晴らしもいいぞ」

 ゆっくりとそれは、移動を開始した。それは、どんどん、速度を上げて行く。

「わたし、こいつ知ってるです」カナミは言った。

「何だよ?」

「高速ガメです」

 ユウトは笑った。「カメなのにのろくない!」

「こいつはレアです」カナミは頷いた。「高速ガメってと言って、普通は岩のように隠れていて、見つからないように隠れているです。だから、普通は出会えないです。でも、私たちすぐくラッキーのようです。このカメは気性も穏やかだし、頼めばどこまでも乗せて行ってくれはずです!」

「なら、目的地まで楽できるなww」

 それから、半日ほど、歩き続けた。夜になった。

 二人は、カメから降りると、その場で野宿することにした。ユウトは、野宿は初めての体験ではなかった。山の近くに住んでいたので、こういった経験は前に何度もしてことがあった。だが、カナミの家柄は、お嬢様だったので、野宿は初めてだった。

 ユウトは、手慣れた手つきで、炎を起こした。

「こうしておけば、けものがやって来ない。無用な争いをけられる! 俺、天才!」

 カナミは言った。「火をいておかないと、どうなるです?」

 ユウトは笑った。「カナミは、頭はいいけど、本当に何も知らないな」

「いいから教えてほしです」

「教える……? 教えない?」ユウトは、踊った。

「何しているですか」

 ユウトはお尻をりさせた。「教え……なーい!」

 カナミはほほを膨らませた。「わたしに教えてくれないですか? 意地悪です。なぜ、火を付けておくのか教えて欲しいです」

 ユウトは、カナミを散々からかってから教えた。

「火をいておくと、けものが寄って来ないんだ」

「なぜです?」

 ユウトは言った。「動物は、火を怖がるんだ。だから、火を焚いておく。すると、獣よって事ない。襲われない。無用な争いこらないから、安全なんだ!」

「なるほど、分かったです」

 ユウトはゆっくり頷いた。「カナミのいた裕福な家と違って、外の世界ではきほん弱肉強食だ」

「うう。そうだったですか」

「強いものが弱いものを食べ、弱いものはしいたげられる、ここはそんな世界なんだ」

「なんだか悲しいです」カナミは言った。

「でも、それが生きるって事さ」

 カナミは頷いた。「わたしは、弱いです。でも、ユウトさんは強いです」

「そうか?」

「私は知っていたです」カナミは少し俯いた。「わたしは弱く、何もできない人間です」

 ユウトは優しくさとした。

「強さの種類が違うだけだよ。俺は両親がいなかったから、何でも一人でやって来なければならなかった。だから、生きる強さは人一倍強い。だけど、俺には、カナミみたいな繊細せんさいさや、知識や、教養というものがまるでない。俺は、ただの野生児だ」

「だけど、この世界では、強く生きて行けるです」

「自分をほこれよ」ユウトは言った。「カナミは俺にはない、良さを持っている!」

 ユウトは、寝転びながら、空の星を見た。

「見えるか?」

 カナミは空の星を見た。「赤、青、黄色、むらさき……何色もの星が輝いているです!」

「綺麗だ」

「ええ、本当に」カナミは大きく息を吸った。

 ユウトは空を見上げながら言った。

「俺は、個性こせいは一つだけじゃなくていいと思っているんだ」

「何ですか、急に」カナミは首を傾げた。

「俺が言いたいのは、俺には俺の良さがあって、カナミにはカナミの良さがあるってことさ」

「わたしの良さですか」カナミは星を見た。「わたしは、あの中の星でいったら、どの星なんでしょうね」

「ピンク色に輝いている、あれだ!」

 カナミは横になって星を見上げた。

「何だか、はかないです」

 ユウトは笑った。「あの星は、一年に一回、すごい輝きを放つ星らしい。いつも、輝いている星ばかりが集約じゃない。カナミには、カナミの良さがあって、いつかすごい輝きが放たれるのを待っている、そんな人間だ何だよ」

 カナミはは笑った。「何だか、ユウトさんにはげまされたです」

「俺は知らねぇよ」

 ユウトは、脇で眠っていたカメに寄りかかった。

「ありがとうです」

「ま、あまり考えすぎるなよ」

 カナミは頷いた。

 二人は、夜の帳の中、ゆっくりと眠りに落ちて行った。




 翌日。

 高速ガメに、途中まで案内してもらうと、別れを告げた。

 二人は、手をふって、カメに別れを告げた。

「ここからは歩きだ」

「道が狭くなって、歩きづらくなっている」

 二人の視界の先には、ごつごつした渓谷けいこくが広がっていた。

「おお、何だこれ」ユウトは、ひとみを輝かせた。

 その先には、き出した温泉があった。そこには、野生の生き物たちが集まって来ていて、温泉で温まっている。

「おお、可愛いなお前!」

 ユウトは、あたまに葉っぱをかぶった妖精に出った。

 妖精は、何やら不思議な言葉で、会話した。言葉は理解できない。だが、不思議と何を言っているのか分かった。

「こいつ、挨拶しているぞ!」

 ユウトは、妖精に向かって、頭を下げた。すると、辺りで見ていた他の妖精たちもお風呂から上がると、律儀りちぎ挨拶あいさつを返した。

 カナミも頭を下げた。しばらくすると、すっかり仲良くなった。

 妖精たちによると、渓谷の奥に進むと、どくどくサソリがいると言った。

 どくどくサソリは、肉食で、毒と、前足のハサミで、獲物を切り刻んでしまう凶悪な魔物だった。

 この場所にやって来ないのは、温泉に含まれている成分が、蒸気に含まれているためだった。

 ユウトは、お湯にしばらくつかって、支度を整えた。

「カナミ行くぞ」

 カナミもお湯から上がり、支度を整えた。

 妖精達と別れを告げた。

 渓谷の奥に進んで行くと、どくどくサソリが現れた。はさみをカチカチ鳴らし、威嚇いかくした。ユウトは、妖精達に教わったように、立ち止まらずに進んだ。どくどくサソリは、立ち止まると獲物に襲いかかる習性があった。

 しばらくして、せまい渓谷内を歩いていると、行き止まり出くわした。後ろには、どくどくサソリが付きまとっている。

「まずい、行き止まりだ」

 二人は、やむなく立ち止まることになった。

 次の瞬間、どくどくサソリがおそいかかった。

「どうするの?」カナミが叫んだ。

 ユウトは、サソリの攻撃をかわして叫んだ。

「直進だ」

 カナミは驚いた。「前方には、どくどくサソリのれがいるです」

「どくどくサソリのれの中を進む」

 二人は、サソリたちの中を歩いた。どくどくサソリが二人を囲い込む。途中、ユウトがあやまってどくどくサソリの足を踏んでしまった。

 どくどくサソリは怒って、ハサミをカチカチ鳴らした。

 しばらく、無言で歩き続けた。すると、ゆっくりと、どくどくサソリたちが、引き返していった。

 二人はピンチを乗り越えた。

 だが、それもつかの間だった。前方には、盛り上がった土が見えた。妙に盛り上がっていて、不思議な感じの土が五つほど盛り上がっている。

 ユウトは警戒して立ち止まった。

「あれ、何だと思う?」

「できるだけ、けて通りたいです」

 次の瞬間、盛り土の中から、黒い何かが噴き出した。

 カナミは叫んだ。「あれは、デス・アントです。れたものをなんでも、食べてしまうまずい魔物です」

 ユウトは慌てながら、持っていた果物を投げた。

 次の瞬間、果物が一瞬にして食いつくされてしまった。ユウトは慌てた。もし、自分たちがデス・アントに触れてしまえば、一瞬で食いつくされてしまう。ユウトは思った。それにしえても、カナミは博識はくしきだな。

 二人は、一目散に逃げ出した。

 渓谷けいこくを抜けると、とうとう目的の場所にたどり着いた。

 そこには、大いなる霧がおおっている場所だった。

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