第5話 初めての依頼

 ユウトとカナミはお腹が減った。

「食い物ねぇ?」

「ありません」カナミは言った。「私たちは、隣村となりむらから何も持たずに出てみたので、お金も食料も何も持っていません……」

「このままじゃ餓死がししちまう」

「あのう」男は言った

「お前誰だ?」ユウトは尋ねた。

「わたしは、冒険者ギルドのものでして」

 ユウトは男を見た。

「お前、つの生えているな?」

「わたしは、カブト族のカブと言います。カブさんと呼んでください」

「おお、よろしくな」

 カブは言った。「それで、お願いがあるんですけど?」

「俺は腹ペコで、話しなんか聞きたたくねぇ」

「それなら、ご飯をおごらせてもらいますので、話しを聞いてもらえませんか?」

 二人は移動してご飯やに向かった。

 ユウトは、大盛りのご飯と、料理をいくつも頼んだ。

「これは見ていて気持ちいいですな」

 ユウトは、ご飯に大盛りの野菜をかけて口に運んだ。

「うめぇ。これなんて飯だ?」

「これは、ハラペリーニュ草のサラダです。この地方の郷土料理です。だから、この辺りのものには、なじみの深い食事なんです」

「俺はこれが気になったぞ」

 カブは笑った。「では、ご飯を食べながらでいいので聞いてください」

「おお、任せろ」

「わたし、あなた方が魔法のキューブと、魔法の地図を手にれるのを見ていたんです」

「おう、そうか」ユウトはご飯をかき込んだ。

「それで」カブは言った。「実を言うと、本当は我々もそのキューブと、地図を狙っていまして」

「やらねぇぞ」

「でしょうね。あなたがたが、それらを手に入れたいきさつも見ていましたので」

「なら、話しは終わったな」

 カブは、ゆっくりと頷いた。

「そこで提案なのですが、我々が地図を欲しい理由は、未開の地図のどうしても通れない場所があるんです。その場所を地図やキューブを使って、調べて欲しいと思ってのことなんです」

 シュウは、ご飯を口いっぱいに、頬張ほおばった。

「う~ん。どうしよう?」

 カナミは肩をすくめた。「事情によります」

「それは、そうですね。いきなり頼み込んで、やれと言われても、ピンときませんよね」

「ええ、まあ」

 カブは手のひらを打った。「あなた方がこの街に来た理由は?」

「冒険者になる為です」カナミは答えた。

「よかった」カブは胸をなでおろした。「見た所、まだ冒険者になって間もないという風貌ふうぼうでしょうし、どうでしょう。依頼を引き受けてくれませんか?」

 ユウトは目を輝かせた。「依頼?」

「はい。そうです。冒険者として、我々の依頼を受けて頂きたい。勿論ただとは言いません」

「何かくれるのか?」

「もちろん」カブは微笑んだ。「金貨、三百枚と、それから冒険者登録をやらせてもらいます」

「冒険者登録って?」ユウトは尋ねた。

「この街は、始まりの街と呼ばれていまして、冒険者が集まる場所なんです」

「おう。それで」

 カブは頷いた。「冒険者登録をしておくと、探索たんさくに行く際、いろいろな特典があるんです。例えば、はじめて行く場所の情報とか。そこは、どんな場所で、どんな危ない場所か教えてもらえます」

「便利なシステムだな」

「まあ、冒険者は危険な職業でもありますから」

 ユウトはそっぽを向いた。

「だけど、俺はあまり興味ねぇな」

 カナミはユウトの頭にチョップした。「一応聞いておくです」

「どうしてだよ。俺は強いんだぞ!」

「どこから来るですか、その自信は……」

 ユウトは腕の筋肉を見せた。「俺は、はがねの肉体に、機転きてんや、機知が働くんだ」

 カナミは吐息といきを漏らした。

「確かにユウトさんは思いがけない行動をしたり、野生じみた直感があるけど、無敵って訳じゃないです」

「俺ならやれる!」

 カナミはもう一発、ユウトをなぐった。ユウトは机に向かって倒れた。

「いったんほっとくです」

 カナミは、カブの話を一通り聞いた。結局のところ、ここははじまりの大地で、冒険者が集まる場所だった。なぜ、冒険者が集まるかと言えば、世界は未知で覆われていて、この街が最前線であり、これより先の場所は、誰も踏み入れたことのない場所になっているからだった。

 そこを調査しようとした際、思わぬ障害が待ち受けていた。大地の奥へ進めないという、原因不明の障害しょうがいが発生した。

「それは困ったです」カナミは言った。

「我々は、何度も部隊を派遣はけんしたり、戻ってきた冒険者に事情を聴いたのですが、先に進めないと言うばかりで、みな黙ってしまうのです」

「なぜです?」

「結局、その原因が分からなんです」

 カナミは首を傾げた。

「ですから、ぜひあなた方にと?」

「キューブと地図を手にしたのが、私だたちだったから」

 カブは頷いた。

「わたしは、依頼を受けてもいいと思っているです」

「本当ですか?」

「ただし、条件があるです」カナミは言った。「報酬を倍にすることと、冒険者についての情報を、もっと詳しく教えてほしいです」

 カブは、ひきつった表情で頷いた。

 冒険者とは、つまり、まだ人々が踏み入れたことのない台地を、調査する集団だと理解した。

「つまり、冒険者になれば、食いぶちには困らないって訳ね」

「それはもう」カブは頷いた。「冒険者は、それだけ危険な職業でもあるので、人の手はいくらでも借りたい状況でして。依頼を受けて頂ければ、金銭面や情報面で、あらゆるサポートが受かられます」

「でも、その分リスクは高いということね」

「そんなところです」

 シュウは起き上がった。「俺は、冒険者になるよ!」

 カブは驚いた。「本当ですか!?」

「ああ、俺は目的が欲しかったんだ」

「それはありがたい」

「俺は、冒険者になって、未知の奥の奥まで調査して、その先にに何があるんか確かめてみてみたいんだ!」

「大変危険が伴いますよ」

「それでもだ」ユウトは頷いた。「俺は、これまでずっと一人で生きてきた。その間、いつも思っていた。俺は何のために生きてきたんだろう。どうして、存在しているだろうって。だから、もう、迷わねぇ。俺は突き進む! それが俺のやるべき事をやっと見つけた!」

 カナミは尋ねた。

「なら、ちゃんと私も連れて欲しです」

 ユウトは、カナミを見た。

「俺一人で行ってもいいんだぞ」

「あなた一人だけだと、すぐに死んでしまいます」

「そうかな」

「ユウトには私が必要です!」

 ユウトは頷いた。「俺にはカナミが必要だ。一緒に来てくれるか?」

 カナミは笑った。「その言葉が聞きたかったです」

「では、お二人さん」カブは言った。「あらめて、依頼を引き受けてくれますか?」

 二人は頷いた。

「依頼内容は、未開の地の調査です!」

 二人は頷いた。

「では、お願いします。最後に」カブは言った。「わたしは、冒険者ギルドの連絡係をしています。もし、何かあったら、尋ねてきてくださいね」

 二人は、カブと別れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る