第4話 冒険者の街☆


「おお、すげぇ」

 ユウトは、街の様子を眺めた。

「本当にすごいわ」カナミは微笑んだ。

「ひと、ひと、ひとだ!」

「あふれんばかりの人たちです」

 ユウトは指さした。「あっちには、変わった店があるぞ」

 その店に向かった。店は、トンガリ屋根に、煙突が一本立っていた。

「ここは何屋だろう」

「きっと、魔法道具屋よ」カナミは言った。

「俺、そう言うのに詳しくないから分からない」

「なら、行って確かめてみましょうよ」

 店の中に入ると、緑色の不思議な煙が浮かんでいた。

「おい、これ大丈夫か?」ユウトは首を傾げた。

「店の奥に人がいるから、大丈夫なんでしょう」

 ユウトは、棚になった赤黒い石を手に持った。

「これ何に使うんだろう」

 カナミは説明書を読んだ。「説明書によると、投げて爆発。爆発の範囲は、いえが一軒が吹っ飛ぶ程度!」カナミはひとみを白黒させた。

「おお、すげぇ威力」

 ユウトは手に持った。「これ落とすとどうなるんだっけ?」

「いや、やめてくださいよ」

 ユウトは手から、おとさ……ない。

「はぁ、脅かさないで下さいよ」

 カナミは文句言を言いながら、石を棚に戻した。

「こんな危ないもの、そこら辺に置くないでほしいです」

 ユウトは肩をすくめた。

 それから、店主に話しかけた。「なあ、俺お金ないんだけど、何か買えるもの無い?」

 店主は目を見開くと言った。

「帰れ!」

「そこを何とか」ユウトは手を合わせた。

「お前、冷やかしだろ」

「冷やかしじゃねぇよ。みて楽しいでいたんだ」

「そう言うのを冷か知っていた生んだ。それにさっき、店の商品で遊んでいただろ。落とすとか、落とさないとか!」

「ああ、たしかに」

 店主は、鼻を鳴らした。「ああ、言うのが一番迷惑だ」

「悪かったよ」ユウトは言った。「でも、俺が金持ちになった時のために、いろんなものを見て回っておきたいんだ!」

「お前が金持ち? なれるのか?」

「なれる。それにここは冒険者の街だろ」

「では、一つくらい教えてやるか」

「おお、頼む」

 店主は頷いた。「この世界には、価値のある魔道具がある。例えば、これだ」

「おお、何だそれ」

「魔法のキューブ!」

「ただの、四角い箱じゃねぇか」

 店主は、ユウトの頭をなぐった。

「バカ言うな、これはこの店の中でも価値のある品物じゃ」

「どう価値があるんだよ」ユウトは首をひねった。

 店主は、キューブに命じた。すると、キューブは、まちの模型となって姿を変えた。

「おお、すんげぇ!」

「このキューブは、命じればその近くの場所に姿を変える!」

「そんなに価値あるものなのか?」

 カナミは言った。「とてもすごいわよ。例えば、森で迷ったときにそれを使えば、その地形を把握はあくできるし、洞窟どうくつや、ダンジョンとい呼ばれる場所で使えば、その地形を理解できる!」

「エクセレント!」店主は言った。「そっちの姉ちゃんのほうが、頭が言いみたいだな」

「みたい、じゃなくて、いいのよ」

 ユウトは説明した。「カナミは、お嬢様だから、教養があるんだ」

「ほう、お嬢様か!?」

「そうだ」ユウトは頷いた。「でも、暴力を振るうんだ」

「何、それは危険じゃな」店主は、頷いた。「わしも、妻にたまに暴力を振るわれる」

「女って、みんな暴力を振るうのか?」

 店主はしみじみ語った。「女とは、狂暴きょうぼうな生き物じゃのじゃ」

 店主のよめが奥から言った。

「あんた、何か言ったかい?」

「いや、何も」

「本当なの? そう。じゃ、洗濯と、夕飯の支度と、ペットのおやつを買って来なさいよ」

 店主は首をふった。「男に命令してんじぇねぇ!」

「行かないつもりなの?」

 店主は小声で行った。

「暇になったら、すぐに行くから!」

「じゃあ、頼んだよ」

「はい」店主は、ユウトに振り向いた。

「女ってのは、ああいう生き物なのさ」

 ユウトは震えながら頷いた。

「それで、その箱、いいな」

「やらんぞ」

 ユウトは頷いた。「俺が、金持ちになったら、買いに来る!」

 そのとき、突然キューブが浮かび上がり、ユウトの手の上に収まった。

「ああ、何てことだ」店主は頭を抱えた。

「何、どうしたの?」

「魔法のキューブが持ち主を選んじまいやがった」店主は頭をふった。「たまにあるんだ。魔法の品物が、持ち主を選んじまうことが」

「これ、もらっていいのか?」

「いや、ダメだ」店主は首をふった。「本当の子というと、それはうちの家宝だ!」

「でも、俺の手から離れてくれない」ユウトは、キューブを机に置いた。

 だが、キューブはユウトの手に戻った。

「くそぅ。困ったな。たまにこういうことがあるから困るんだ」店主は、ユウトを見た。

「お前、本当にキューブに選ばれるだけの、男なのか?」

「さあな」ユウトは肩をすくめた。

 カナミは言った。「ユウトは、本物の男です」

「なぜ、分かる」

「昔の事だけど、私が森に出かけて魔物に襲われたことがったの」

「それで」

「ユウトは、魔物相手に戦ってくれたんだけど、その魔物凄く強くてどうしようもないって事がありました」

「ほうほう、それで」

 カナミは頷いた。「そのとき空は晴れ渡っていたのに、突然黒い雷雲かみなりぐもが空を覆って、雷が落ちてきたの。それで、雷は魔物に直撃して、黒焦げに。彼には、不思議な力をあるわ!」

 店主は頷いた。「つまり、本物だと」

「ええ、そうです」

 ユウトは肩をすくめた。

「なら、試させてもらおうか?」

「何を?」ユウトは首を傾げた。

 店主は、店に置かれていたリボルバー式の拳銃を取り出した。

「見ての通り、じゅうじゃ」

「それで」

「一発だけ、弾を込めるから、自分のこめかみに当てて、引き金を引いてみろ」

「本気か」

 店主は頷いた。「もし、ゲームに勝ったら、もう一つプレゼントしてやる」

「何を?」

「間違いなくこの店の至宝。魔法の地図をくれてやる」

「すげぇのか?」

「勿論。地図は、辺り一帯の地形を記録する。一度行ったことのある場所なら、どこでも、表示してくれるから、すごく便利だ」

 ユウトは困惑した。「それ本当にすげぇのか?」

 カナミは言った。「すごいわよ。私たちは、未開の地にいるのよ。行った場所を地図が記録してくれたら、便利なだけじゃなくて、地図を買いたいっていう人は、きっといくらだって出すでしょうね」

「よし乗った」ユウトは、リボルバー式の拳銃を手に取った。

「チャンスは一回だ。玉が込められているのは、六発中、一発。もし、あやまって弾が飛び出せば、脳天が吹き飛ぶ。でも、もしうまくいけば、この店の至宝である、魔法のキューブと、魔法の地図をプレゼントしてやる! 脳みそが飛び散る確率は、16%だから安心せい」

 ユウトは弾が中に入っているのを確認し、リボルバーを回してセットした。

「これでいいな?」

「ああ、あとは引き金を引くだけだ」店主はユウトを見た。

「怖くなったか?」

「いいや、全然」ユウトは笑った。「せっかく、おっさんが至宝をかけてくれているだったら、俺の魂をかけないとな」

 ユウトは、こめかみに拳銃を当てると、引き金を引いた。

「勝負はお前の勝だ」店主は頷いた。

「いいや、まだだ」ユウトは、ふたたび、引き金を引いた。

「もうやめろ。もう二回も引き金を引いとる!」

 ユウトは頷いた。「あと玉は何発残っている?」

 店主は驚いた。「お前まだやるつもりか!?」

「ああ」ユウトは頷いた。「これは俺とコイツの戦いだ。俺は、最後の一発になるまで引き金を引くつもりだ!」

「なぜそこまでする?」

「俺は、未開の地の奥まで到達する本物の男になるからだ」

 店主は言った。「たまげた男だ! まだ引き金を引いてないのは、六発中、四発だ。当たり、その中の一発だ!」

「つまり、残りは四発って事だな?」

 店主は頷いた。「だが、ここでやめても十分だぞ」

 ユウトは構えた。「俺は、中途半端はしねぇ」

「行くぞ」

 一発、二発、ユウトは、引き金を引いた。

「残りは、二発。辺りを引く可能性は、50パーセントだな?」

「全部やり切るつもりか!?」

「男が、男の勝負をしたんだ。俺は、あんたの意気込みに答えてぇ」

「もう、お前の勝ちで構わねぇ」店主は言った。

「安心しろ! 俺は、負けねぇから」

 ユウトは、引き金を引いた。

 結果、ユウトの勝利だった。

 店主は、大きく吐息をらした。

「お前の勝だ!」

「じゃあ、このキューブと、地図は貰って行くぞ」

「ああ、もう好きにしてくれ」

 ユウトは地図と、キューブをもらって立ち去った。

 店主は、天井を見上げた。「久々に本物の、男を見たよ!」

 奥からおかみさんが叫んだ。

「あんた、家宝を人にあげちまうとはね」

「いいんだよ。久しぶりに本物の男に出会った!」

「ふん。これからは、気合入れて働きなよ」

 店主は肩をすくめて仕事に戻った。

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