第3話 となりまちは要塞都市だった!


「な、何だこれ」

 ユウトは驚愕きょうがくした。となりまちは巨大要塞ようさいになっていた。へいは高くそびえ、城壁じょうへきには、見張りの兵士が立っていた。素晴らしく巨大で大きな建造物だった。

「すげぇな」

「入ってみましょう」カナミは言った。

「おい、おまえたち、通行証は?」見張りの兵士は言った。

「持ってないけど?」

「それなら入ることはできない」

 ユウトは肩を落とした。

「じゃあ、通行はどこで手に入れられるの?」カナミは言った。

 兵士はにやりと笑った。

「危険な人物じゃないと分かれば、街の中で発行してもらえる!」

「それじゃあ、入れじゃないじゃない!?」

 やがて、一人の兵士がやって来た。その手には、気絶した男の姿があった。その顔はれあがり、意識はなかった。

「こいつは無断で侵入しようとした犯罪者だ!」

 ユウトは抗議した。「そんな、いきなり殴らなくたっていいだろ」

「そうです。可哀そうです」

 兵士は二人をにらんだ。

「お前たち、もしかしてこいつの仲間か!?」

「ち、違うです」

 二人は兵士たちに囲まれた。

「何だよ」ユウトは、兵士に言った。

「怪しいな。最近この辺りでものまねザルという捕食者たちが、街に侵入したと聞いた」

「俺は知らねぇぞ」

 兵士は説明した。「ものまねザルは、人の姿に化け、街の中に侵入する悪い奴らだ。村に入れば、人間や、ほかの種族たちを捕食して食ってしまう奴らだ!」

 ユウトは首をふった。「俺たちはそんなことしない!」

「それは本当かな?」

 次の瞬間、兵士に殴られて気絶していた男が目を覚まし、ユウトと、サナを指差した。「俺は、あいつらに頼まれたんだよ。俺が侵入する間、ちょっと時間を稼いでいてくれって。今考えたら、あいつらものまねザルだったのかもしれない」

 兵士は険し目つきになった。「本当か?」

「嘘じゃない。本当だ!」

 ユウトは、焦った。このままでは自分たちが犯人に仕上げられてしまう。

 周りの者たちから、ざわめきが始めた。

「動くな! そこの女も、まとめて二人だ!」

 ユウトは息を飲んだ。

「俺たち、となり村から来たただの人間だ!」

「証拠はあるのか?」

「そんなものはない。だけど、俺たち悪いことしてないぞ」

 兵士は抜き身の槍を構えた。「証拠がないら、死んでもらうしかない」

「いきなり横暴だぞ」

「すまんな。ものまねザルに街を壊滅させられたそうになったことがある。だから、疑いがかかったものは、その場で処刑しょけいすると決まっている!」

「冗談だよな?」

 兵士は抜き身の槍を構えた。

「本気なのか……」ユウトは拳を構えた。いざとなったら戦うしかない。

「こ、怖いです」サナは震えた。

「大丈夫。いざとなったら、俺が守るから」

 兵士は凶悪な笑みを浮かべた。

「じゃあ、死んでもらおうか」

 男が一歩前に出た。

 兵士は槍を構えたまま後ろを振り返った。

「どいうつもりだ?」

「わたしは、ウォルクル。旅の剣士だ」

「それがどうした?」

 ウォルクルは言った。「さっきから聞いていれば、なかなかの演技だったな」

「何を言っている!」

 ウォルクルは、腰にあった剣を引き抜いた。

「抵抗すると、切り捨てるぞ」

 ウォルクルは、突然、兵士を切り捨てた。

 兵士はもがいたのち、絶命した。

「うわ。本当に兵士を殺しちまったぞ」

 その場にいた者たちが騒ぎ出した。

「お前、どうしてっんだよ」シュウは一歩前に出た。

 ウォルクルは説明した。

「見てみろ!」

 しばらくすると、兵士だったものがサルの姿へと変わった。

「これで、分かっただろ」

 兵士の本当の姿は、ものまねザルだった。

「紛れ込んでいたのか?」ユウトは尋ねた。

「最初から怪しと思っていた」ウォルクルは向きを変えた。その方向には、気絶した男の姿があった。先ほど、兵士に連れてこられた男だった。

 ウォルクルは、剣を構えた。

 すると、気絶したふりをしてた男は、慌てて逃げ出した。

 ウォルクル、剣は、投げた。

 それは男の腹に直撃した。血がき出した。そして、男は腹を抱えて暴れ回ると、しばくしてから絶命した。そして、本当の姿を現した。それは、もう一匹の、ものまねザルだった。

 サルはもう動かなかった。

 観衆から安堵の声があった。

 ユウトは、確認したいことが一つあった。

「もし、兵士や、こいつらが人間だったらどうするつもりだったんだ?」

 ウォルクル笑った。「お前は冒険者か?」

「なりたてだけど、冒険者だ」ユウトは胸を張って答えた。

「冒険者と名乗る者なら、ものまねザル程度の魔物に翻弄ほんろうされることはないだろう」

「どいう意味だ?」

 ウォルクルは笑った。「まず、冒険に出て、最初に出会うのがものまねザルだからな。ものまねザルの特徴だが、獣臭く、うそつきなのが特徴だ。あとは、変身しているときは、妙に落ち着きがなく、手足が震えている。あとは、不利だと感じると、すぐに逃げ出す臆病おくびょう者だ!」

「でも」

 ウォルクルは首をふった。「お前は一つ勘違いしているぞ」

「何をだ?」ユウトは、ウォルクルを見た。

「もしあの兵士にしても、もう一人の男にしても、あの程度で斬られるなら、そこまでということだ」

「そんなの良くねぇよ。命は大切なものだろ?」

 ウォルクル首をふった。「お前は、ここに何してきたのだ?」

「それは……未知の世界を冒険しに」

 ウォルクルは頷いた。「そう。冒険者だったな?」

「なら、覚えておけ。冒険者を目指すなら、命をけるべきだ」

「意味わかんねぇよ」

「ここは未知の世界のだぞ。兵士も、あの男も、この世界で生きるている以上、自分の身も守れるべきだ。ここは、弱肉強食の世界だ! ちょっと剣を振るった程度で殺されるようなら、私が殺さなくても他の捕食者にやられてただろう」

「だけど」ユウトは食い下がった。

 カナミは首をふった。「きっと、彼の言う通りです。ここは、冒険者の街。冒険者の街は、気楽な気持ちで遊びで来ていい街じゃないんです!」

 ユウトは納得できなかった。

「少年よ。もしお前が、真に冒険者を目指すのなら、まずは強くなれ。で、なければば、何一つ守れないぞ」

 ユウトは首をふった。「すべてを力だけで解決……」

 ウォルクルは剣をふたたび抜いた。「彼女を殺すぞ?」

 ユウトは息を飲んだ。

「ダメだ!」

「なら強くなることだ!」

「だけど」

 ウォルクルは首をふった。「心せよ。ここは夢と希望だけで生きて行けるほど、簡単な世界ではないのだ」

 ウォルクルは剣を収めると、二人の死者を見た。

「ここに転がっていたのが、お前たち二人だったとは考えてみろ……」

 ユウトは息を飲んだ。

 ウォルクルは向きを変えるとその場を立ち去った。

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