未来像

「あぁ、ごめんごめん。なんかそういうつもりじゃなかったんだけど……。」

小村さんは何か言ってはいけないことを言ってしまったと思ったのか慌てて謝罪してくる。

「いや、そういうことじゃないんですよ……。そうじゃなくてその……。」

「その……あれだ。その……。」

僕たち二人ともそう口篭もって言葉が続かない。

おそらく考えていることは一緒なのだろう。

「大体言いたいことはわかったかも……。でもさ、付き合ってるならそういうのを気にしなくてもいいと思うよ。あ、あくまで私としてはね。」

あのライブの日より明らかにたくさん喋るなと思いながら、小村さんのいうことにも一理あるなと思うが、僕にはまだその覚悟が足りてないのだろう。

「まぁー、そのうち分かると思うよ。そういう大人の世界は。って言ってる私は彼氏とかもいないんだけどね……。」

そう言ってへへへと笑う小村さんに僕も大川も何故か吹き出してしまった。


「知らないのに言ってたんですか……なんか、やっぱり面白いですね。」

「まさかの宣言でちょっとびっくりした……突っ込みたくなっちゃったな……。」

「ま、まぁ私のイメージでもあるから、気にしなくてもいいんだけどね……。」

そう言って小村さんはまたへへへと笑ってきた。

「いや、よく考えてみれば確かにそうですね……。」

「お、大川、どういうことだ!?」

「そのままですよ。思えば私たちは付き合ってるにしては距離感が少し遠いような気がしてたんですよね……。」

「と言うと……?」

「今まで少し周りの目を気にしすぎていた気がするんですよね。」

「それは確かにそうかもな……。学校とかでももうほぼ知られているにも関わらず村川とか小松と一緒にいる時だけ距離が近い感じになってたもんな……。」


そんな話をしていると、小村さんが一言助言のように付け足してくる。

「私の知り合いに最初はそういう関係の人がいたんだけど、やっぱり最終的には公にする感じで付き合い始めてから関係性がガラッと変わったんだよね……。」

「失礼なければ聞きたいのですが、どう変わったんですか……?」

「簡単だよ。そのままずっとラブラブな感じでそのまま婚約まで行き着いたよ。」

小松さんがそう言うと、大川は一気に顔を赤らめる。

「け、結婚!?そ、そんな未来のことまではまだ私……。」

「わかってるよ。でも、そう言う未来もあるかもよってことも覚えておくといいよ。」

そう言って小村さんはカップに残っていたコーヒーを飲み干した。

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