商談

「いらっしゃーい。そんなに綺麗な部屋じゃないけどゆっくりしていってね。」

そう言って案内されたリビングは、とても広く大川の家と同じくらいか少し大きいくらいの広さがあった。

「ひ、広い……。」

僕はその広さに驚きつつも、真ん中に置いてある丸い低めのガラステーブルのところに腰掛ける。

ビーズソファーが置いてあり、そこに腰をおろすと、なんだかそこに吸い込まれるような感触になる。

「それ、気持ちいいでしょ?私もそのクッションお気に入りなの。お客さん用にも何個か買っておいてよかったぁ〜。」

そう言って小村さんは僕たちにお茶とお菓子を出してくれた。

「こんなものしかないけど、ごめんね。」

そう言って出されたお菓子もお茶も、僕たちが普段飲んだり食べたりしているものとは全然質が違うものだった。

「いや、十分です。いや、十分過ぎるくらいです。ありがとうございます。」

そうお礼を言うと、小村さんは嬉しそうだった。


「ところで、今日はどうして私たちを呼んだのですか?」

「あ、そうだ。それ聞こうと思ってたんです。話したいことはこの前話せたような感じだったから……。」

そう言うと小村さんは良くぞ聞いてくれましたのような顔をして、こちらへずいっと顔を寄せてくる。

「実は私、今アイドル業務とかしてたりの経験を活かして、そこら辺の広告事業のところにいるの。それで、よければ愛ちゃんたちのグループを紹介できたらなぁ……。って思って。」

「なるほど……。それは私だけで決定できることではないので1回持って帰りますね。相談して大丈夫そうならまた連絡します。」

「相談してくれるだけでもありがたいよ……。最近はなかなか仕事を貰えなくてね……。基本的に全部自社で賄ってるところが多いから、わざわざ外部に発注する人が少ないの。」

そう言って小村さんは少し寂しそうな顔をしながらクッキーを齧っている。

ポロポロと口から溢れたクッキーをあぁと言いながら集めている小村さんを見ながら、僕と大川は少しクスクスと笑った。


「あ、今笑いましたね!?そう言うの良くないですよ!?」

「ごめんなさい……ふふふ……でも、ちょっと面白くて……。」

「でも、そう言う大川もなんかさっき一瞬……ははは!」

「あ、須井くんそれは言わないお約束ですよ!?」

「いつ約束したんだよそれ!?」

「私が心の中で約束しました。」

「なんだよそれ!?」

「2人とも、やっぱり仲がいいですね……。やっぱり付き合ってるだけありますね。」

そう小村さんに言われ、なぜか僕たちは同時に顔をそっぽにむけてしまった。

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