大人の再会
「A-25番までの方はこちらの列にお並びください!」
「この番号はそちらの列ではないです!あちらです!」
そんな会場の案内人の言葉を聞きながら僕たちは他の人とは違う入り口へと向かう。
「このチケットで大丈夫ですか?」
僕たちは他の人が入れない柵の張られたエリアにいるスタッフの人に大川から渡されたチケットを見せる。
「関係者席の方ですね。はい、今柵をどかしますので。そのまま奥に進んでその先のゲートにいる係員にもう一度こちらを見せていただければ大丈夫です。」
そう言われ、僕たちは奥のゲートから会場へと入っていく。
僕たちが進んでいる通路の横では、一階席を手に入れたファン達が開演を今か今かと待っていた。
そんな一階席を手に入れたファン達よりも前の素晴らしい席で見ることができるのが、僕たちの向かっている関係者席だ。
ここはライティングの関係などから、誰かしら出演者との関係がないとここから鑑賞することはできない。
それもそのはず。ここはライティングに邪魔されることなく、出演者の表情がくっきりと見えるのだ。
確かにこの席は特別な関わりがあるからこそ見ることのできるスペシャルな席なのだろう。
「そういえば、小さい頃の大川さんってどんなんだったんだろう……。」
僕はふと思ったことを口に出してしまった。
「小さい頃はあんなに生き生きした声はしてませんでした……。もっと暗くて、自分を無理やり押さえてたような感じでした。」
「そうだったのか……。」
「でも、私と2人きりの時には元気な感じになる時もありました。でも、今と比べれば控えめなものでした。あの子は小さい頃両親に怯えていましたから……。」
「それに関しては、本当に申し訳ないと思ってるわ。」
小村さんが話していると、彼女の横に見覚えのある女性が座った。
「さ、紗智子さん……。どうしてここに……!?」
小村さんは一気に警戒するような声になり、紗智子さんに話しかけている。
「あら、そんなに警戒しないでほしいの……。ちゃんと愛とは話し合って仲直りしたのよ?」
紗智子さんがそう言うと小村さんは少し警戒が解けたのか、聞く耳を持つようになった。
「そうだったのですね……。確かに思えば後半、あなたは父親を止めようとしてる時もありましたからね……。」
「そう。私はあの人に流されちゃってたの……。でも、途中からそれがおかしいってことに気づいたの。実際、あなたを解雇した数日後に私は愛を連れて家を抜け出した。あなたを泣く泣く解雇したのもそう言う理由なの。」
そう言う紗智子さんの顔は一言では言い切れない顔だった。
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