凄さの実感

「すみません、付き添いの人の分も含めて買いたいのですがよろしいですか?」

「3名さまの分まででしたら各種一個という条件の代わりに代理で購入が可能ですよ。」

その言葉に安心して、僕は紫のペンライトを3本購入する。

「買えたよぉ……。あの2人はどこに行ったんだろう……。」

そう思い、母親に連絡を入れようとしていると母親の方からチャットが送られてくる。

『お腹減ったでしょ?フードコートの席取ったなり!』そう言って4人席を撮った写真が送られてきた。

『そっち向かうわ。なるほどね。そっちはフードコートの席取り列に並んでたってことか。』

お互いに必要な列に並んで仕事をしていたと思えばいいのだろうか。ただ、フードコートの待機列は日陰なので少し腑に落ちないところもあるが、3人で並んでいたら確実に食いっぱぐれていたのでこれでよかったと思うしかない。


「暑い中お疲れ様〜!これ、買っておいたよ。」

席についてから母親が渡してきたのはフローズンドリンク。今の僕にはとても嬉しいものだ。

「暑い中並ばせて本当にごめんね……。何かお礼ができたらなって思って須井君のお母さんと2人で割り勘して買ったの。」

小村さんはそう僕に言ってくる。

「いや、気にすることはないですよ。それぞれやるべきことをやったんですから。」

僕はこうやって何か報酬があるとそれだけで満足してしまうような人間なのだ。将来騙されそうとかよく言われるし、見返りのためにやっているのかとか言われるが、少なくとも僕は見返りを求めて行動するような人ではない。

人をただ助けようという精神で助けたら勝手に見返りが来たりするだけなのだ。ただ、騙されそうというのは否定できないところがある。助けたいという気持ちで行動した結果、変な人に騙されるなんていうことがあるかもしれないからだ。

最近ではそういう事例も増えてきているらしい。気をつけなくては。


「そろそろ注文に行かないと混んでくるよ?2人とも行っておいで!」

母親に言われて僕と小村さんはそれぞれ財布を持って店をぐるりと一周見て回る。

僕はさっきフローズンドリンクを飲んで少し体が冷えているので、温かいものがいいと思い、ラーメンをチョイスし注文した。

小村さんは奥の方にあったハンバーガー屋で注文をしてきたようで、呼び出しブザーを持って戻ってきた。

「確かにすごい人だった……僕の前に10人とか並んでたもん……。」

「こっちもです……。ファストフード店のはずなのに回転が間に合ってなかったみたいで……。」

逆にいえばこれだけの人が大川達のライブを見にきているのだ。すごいことだと僕は改めて感心した。

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