前日談
「明日は早いんだっけ?」
「そうですね……。5時位には出発といったところですね。」
「いよいよだな……。大丈夫なのか?こんな時間までこっちにいて。」
「いいんですよ。こうしていた方が落ち着くので……。」
「そうか。ならいいんだけど。何か焼き菓子でもいるか?また母親が送ってくれたからさ。律儀に手紙まで付けてきてさ。」
僕は大川宛てに書かれていた手紙を渡す。
「わざわざ書いてくれたのですね……。後でお礼を言っておきます。」
そう言って大川は僕の母親からの手紙を読みながら色々な表情を浮かべている。
「どうやら私のライブのチケットのお礼も含めて送ってくれたみたいですよ。」
「なんかそうっぽいな……。こっちなんか大川さんと最近はどうかしら?とか書いてあって変わらないなって思っちまったよ。」
「でもそういうところも須井くんの母親らしいじゃないですか。私はあの方のそういうところ好きですよ。」
そう言って大川は紅茶を一口飲んだ後で、送られてきた焼き菓子からクッキーを選んでつまんでいる。
「あ、そうでした。ちゃんと私のイメージカラーのペンライトは買っておいてくださいね?」
「え、そんなのあるのか……!?」
「勿論ですよ。私のカラーは紫なので、ぜひ買ってくださいね。」
「そこまで言われて買わないってのは無いな。勿論買わせてもらうよ。」
「まぁ、他のグッズとかはいつも目の前で私を見ることのできている須井くんには必要ないかなと思うので。欲しかったら買ってください程度にしておきますね。」
「なんか一気に僕が特別な人感出てきたな……。」
「逆に特別じゃないと思ってたんですか?私にとって須井くんは特別な人ですよ?たとえば……。」
そこまで言ったところで急に大川は急に俯いて何も言わなくなってしまう。
「どうした大川。気分でも悪いのか?」
そう聞いても大川は何も答えない。
しかし、その数秒後に一言こう答えてきた。
「ずるいです。」
「え、何がだ?何か大川に対して嫌なことをしてたなら謝るけど……。」
「そういうことではないです。ただ……話の掴み出し方が上手すぎます。」
「えっと……というのは……?」
「分からないならいいです……。別にもう大丈夫なので。」
そう言って大川は立ち上がる。
「あ、怒ってはいませんので安心してください。でも、須井くんはもう少しだけ頑張って相手の心を読む練習をしてみてもいいかもしれませんよ?」
そう言って大川は玄関まで行き、明日待ってますからね、と言って帰って行った。
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