復帰した日常

あれから数日。僕も大川も何事もなかったかのようにいつも通りの生活へと戻っていっていた。

そして、大川が大ホールで公演をする日も刻々と近づいていた。

「あと1週間だっけか?楽しみになってきた……。」

そう言うと大川はそう言ってもらえると嬉しいですと僕に言ってきた。

「あ、だけど過度な期待はやめてくださいね……逆に私のプレッシャーになっちゃうので……。」

そう言って大川はえへへと私に笑いかけてくる。

「大丈夫、大川が期待とか大量の視線に実は弱いのは知ってるから。」

「そういうのをあんまり本人の前で言わないほうがいいですよ……。私だから良かったですけど……。」

そう言って大川は少し恥ずかしそうにこちらを見てくる。


「あ、今日はなんかいつもよりいい感じじゃーん?」

「おい、声デカいぞ……。」

「別にいいじゃん!うちと歩だってこうやってほぼ公にしてるようなもんだし〜?」

そう言って小松は道路の真ん中で村川に抱きついている。

「あのなぁ……通る人がすごい目で見てるからそろそろやめてくれないか……。」

「いいじゃーん!あの2人にラブラブ度負けてもいいの?」

「なんだよラブラブ度って……。」

茶番のようなことをしている村川と小松を僕と大川はクスクスと笑いながら見ていた。


「な、何?そんな笑わなくてもいいじゃん!うちらみたいなこと2人だってしてるじゃん?」

「い、いや……流石に道の真ん中で抱きついたりはしないかなぁ……。」

「私も良識があるつもりなので流石にそこまではしないですね……。」

そう言うと小松はショックを受けたように嘘ぉ……と言ってその場にヘナヘナと座り込んでしまった。

「おい、何やってんだ。遅刻するぞ?」

「だってぇ……歩ぅ……。」

そう言って小松はそのままヘナヘナしたまま動かない。

「はぁ……こいつしばらく動けないだろうし、先行くぞ。」


そう言って村川が歩き始めると小松はスッと立って追いかけ始める。

「あぁー!ちょっと置いてかないでよ〜!」

そう言って追いかけてくる小松を見て村川が僕たちの方を見てグッドサインをしてくる。

「あいつはああなった時に、今みたいなやり方すると勝手についてくるから。覚えとくと得だぞ。」

「何こそこそ話してるの〜!うちも混ぜて!」

そう言って背後から小松が追いかけてくる。

こうしてみるといつもの日常が戻ったような感覚がする。

僕はこうやって本当に大切にしたいと思える友達が少なかったから今までは……などと思った後で今は考えるのをやめようと思った。

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