弁明
「わざわざ自分から出て来るとはなぁ。こいつにあんなものを付けておいてよく堂々と出てこれるなぁ。あぁ?」
片岡は怒っているのか受付で見せていたような丁寧な言葉遣いはどこかへ向き飛んでいた。
「付ける……。付ける?あぁ!もしかして小型録音機の……事だったりするかい?」
そう言って斉藤さんは少し逃げ腰のような感じで聞いてくる。
「あぁ、そうだよ。ちょいと弄って逆探知したらあら不思議、お前のパソコンに送られてることが分かったんだよ。何を企んでたんだ?お?正直に言ってみろ!」
完全に目上や歳上の人に言う言葉遣いでは無くなってしまっている片岡を僕はただぼーっと見ていた。
ここで言論に加わると何か厄介になるか、話を拗らせてしまうだけだと思ったからだ。
「あ、ちょっと待ってくれないかな?少し誤解があるんだよ……。」
「誤解?なんだ、言ってみろよ。」
片岡が問い詰めると斉藤さんは説明を始めた。
「僕は須井君にとある人の電話番号を渡したんだ。ただ、それはまた別の人へ渡すための仲介役としてだったんだ。」
「それで?」
「でも、もし彼が別の人に電話番号をばら撒いたらどうしようか。そういう考えになっちゃったんだ。その結果、あんな行動に出てしまったんだ……。」
そう言って斉藤さんは俯く。
「だからってやっていいことと悪いことあんだろ?お?」
「もういいよ。片岡。」
「おい、須井止めるなよ。こいつ、そう言って俺らに嘘ついてるかもしんねぇんだぞ?」
「それでも反省はしてるでしょ?ならいいじゃん。それに、またこういう事されたら探偵さんに頼めばいいから、ね?」
そう言って僕は片岡の方を向く。
一瞬ぽかんとしていたが、片岡はすぐにそうだなと言って引き下がってくれた。
「須井君、本当に申し訳ない。不安な気持ちにもさせただろう。もう絶対しないと約束する。実際、君は他の人との関わりもあまりしていないようだし……。基本的に2人でいつも過ごしている感じだったから、安心したよ。」
どうやら片岡の偽盗聴器はしっかりと機能していたようでよかった。
「本当に申し訳なかった……。この通り!」
そう言って斉藤さんは急に僕たちに頭を下げてくる。
「あ、ちょっと、そんなにしなくても大丈夫です!頭をあげてください!」
そういうと斉藤さんはスッと頭をあげた。
「須井君。君は本当にいい子だよ。彼女を幸せにできるのはこういう人なんだろうなぁ。」
そう斉藤さんは呟いた後で勤務時間が近いからと僕たちに謝罪をした後でその場を離れていった。
「おい、須井。本当にあれでよかったのかよ。俺は納得できねぇんだけど。」
「まぁ、こっちの問題だしさ。いいんだよ、あれで。」
「まぁ、お前がいいならいいんだけどよぉ……。」
何か腑に落ちないような感じの片岡はそう言って僕の方を見てきた後で何かを思ったのかサッと目を背けてきた。
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