アイドルのお叱り

「んじゃ、俺はこれ以上空気が悪いのは嫌だし、帰るわ!じゃあな!」

そう言って片岡は逃げるように僕の家から荷物を集めて出て行ってしまった。

「全く……。最初から都合が悪く感じるならそう言ってくれれば私も、もっと色々考えたんですけどね……。」

そう言って大川はため息をつく。

「いや、もっと考えるって……絶対そんなにいい方向には行かなかった気がするんだが……。」

そう言うと大川は見たことのないような笑みを浮かべた後で、そうかもしれませんねとだけ呟いて僕の家の中をウロウロと歩き出す。

「さて、片岡君もいなくなったことですしそろそろ須井くんへのお叱りタイムですかね?」

そう言って大川はソファーから僕を追い出して、向かいの硬い木製の椅子に座らせた。

「さて、須井くん?今回片岡君が契約を結んでくれたり、悪用はせずにいい方向で使ってくれていたからいいですけど、普通に考えて私たちの合成音声が送られているって言うのは結構問題だと思うんですけども?」

確かに言われてみればそうだ。普通に考えて本物そっくりの合成音声なんて悪用しようと思う人が手にしたら一瞬で終わりのものだ。

「本当に、片岡君が悪用していなくて良かったですね。」

「そうだな……。本当にそこは僕の不注意だ。すまなかった。」

そう言うと大川は僕に詰め寄ってきてこう尋ねてくる。

「いえいえ、もっと重要な謝罪があるのではないですか?須井くん?」

「え、ちょっと待ってくれ……心当たりを考えてみるから……。」

そう言って考えようとしていると、大川が僕の頭を軽くぽこんと叩いてくる。

「まだわからないんですか?じゃあ私からお叱りとして伝えますね。」

そう言って大川は一瞬スッと息を吸った後でこう言ってきた。

「どうなるかもわからないような危ない協力関係は絶対にやめてください。本当にもう!」


そう言って大川は会計演算システムが動いている途中の僕のサングラスを一瞬見た後で、何も言わなくなる。

「まぁ、もうやってしまったものは仕方がないです。二度とこんなことが無いように。それから監視資する対象をこれ以上増やさないように。元はと言えば片岡君の色々を止めるのも特に問題なく止めるようにするのが理想、いや、そもそも頼らない事こそが真の理想でしたからね?」

そう言いながら大川は何かあった時の修正方法が目立つやり方しかない僕を見てため息をついてきた。

僕にとっては僕も大川の結んだ契約もどちらも荒治療だと思っている。けど、乗りかかった船だ。もうやり切るしかない。

それは多分、大川もわかっているのだろう。

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