契約と監視役
「はぁ……それじゃあ結局須井くんは今日は私達に嘘をついてて、しかもこんな綺麗事言ってる胡散臭い人と組んでいた……と。」
「いやぁ……その言い方はちょっと……。」
「でも、簡単に言えばそう言うことですよね?」
そう言って大川は僕と片岡の方へとグッと顔を寄せてくる。
「おぉ、怖い怖い。でもよぉ、俺が情報を追って止めてなかったらもっとやばいことになってたかもしれないんだぜ?例えばマスコミがその会話内容を入手して……とかなぁ。」
大川の気迫を前に片岡は口調こそ変わっていないものの、言葉の圧は無くなっていた。
「それは私だって分かってますよ?けれど今2人がやってるのって危険な行為だって分かってますか!?」
「それはそうだけどさ大川、じゃあ止めなかったら止めなかったで機密情報がバラされるんだよ……。どっちを取るかってなって僕はこっちを取った。」
「はぁ、本当に須井くんは何を考えているのですか……。でも、もう初めてしまったものは仕方がありません。今回は許します。けれど、この胡散臭い人が少しでも裏切るようなそぶりを見せたら、すぐに私は突き出しますからね。」
大川はそう言って僕たち2人を脅してきた。
「おいおい、さっきの話聞いてなかったのかよ。俺は改心してお前らの手助けをするためにやってるんだって言ってんだろ?」
「そうは言っても一度はあんなことをした人です。何をするか分かりませんので。」
「たく、分かったよ。んじゃ、こうしよう。今お互いに契約を交わすんだ。お互いのルールって奴だな。それを破ったらアウトってのはどうだ?」
「それでいいならいいですよ。契約には慣れていますので。」
そういうわけで片岡と大川はお互いに契約を結んだらしい。僕にはその内容の大事な部分しか伝えてくれなかったが、それでもお互いに本気で契約をしたというのだけは分かった。
大川側は片岡が裏切ったまたは、グレーゾーンを超えてアウトゾーンに入った場合以外は通報をしない。
片岡側は大川と僕を裏切らない、グレーゾーンを超えないということを契約したらしい。
そして僕はと言うと、それぞれがその契約を破ってないかを監視する監視係だ。いちばん面倒くさい立ち位置でもあり、いちばんやりたくない立ち位置でもある。
「それじゃあ、そういうことで成立だな。」
「そうですね。成立ということで。」
これから片岡の探りが終わるまでずっと2人を監視しなくてはならないと思うと、僕は気が重くて仕方がなかった。
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