予告

「この前は楽しかったですか?」

土曜日、大川はお昼前に僕の家でフライパンを眺めながらそう聞いてくる。

「楽しかったけど最後はちょっと悔しかったな……。」

「たこ焼きパーティーで悔しいって、何があったんですか……。」

「まぁ、色々と……な。」

大川には口が滑ってもじゃんけんでハズレくじを引いて、焦げたたこ焼きだらけのお皿を引かされたとはいえなかった。

「まぁ、楽しそうならよかったです。それにしても今日は午後から、明日は一日休みが貰えてよかったです。ずっと踊って歌ってだったので正直休みたかったので……。」

そう言って大川はパンケーキを大皿に乗せてテーブルへと持ってくる。

「悪いな……疲れてるのに。」

「いえ、いいんですよ。これが私のやりがいなので。はい、こっちが須井くんの分ですよ。」

「おう、ありがとうな。」

タコパの後で大川が日曜が1日フリーであることを聞いていた僕は、何をしたいかを聞いてみると大川からは水族館カフェに行きたいと返事が帰ってきた。

水族館じゃなくていいのかと聞くと、大川は人混みだろうからゆっくり休めないので水族館カフェの方がいいと言ってきたのだ。

村川と小松の2人に確認してみると、予定は空いているので大丈夫だと返ってきた。

僕はそこで日曜日に4人で予約を入れ、明日大川にサプライズとして用意をすることにしたのだ。


「あ、大川。明日朝からここに来てくれないか?」

「朝からですか?大丈夫ですけど……。どうしたんですか?」

「内緒だ。まぁ、楽しみにしててくれ。」

明らかにぎこちない誤魔化し方をすると、大川は何かを察したようにわかりましたと返事をしてきた。

「明日は少しおしゃれをしてこなきゃいけないかもしれませんね……。」

そう言って大川はにっこりとしながら、自分の作ったパンケーキをナイフで一口サイズに切って口に入れ込んでいる。

「ほら、須井くんも食べないと冷めちゃいますよ?」

そう言って大川は僕のお皿にもう一枚のパンケーキを取り分けてくれる。

「ありがとな。」

「いえいえ。今日のはうまく行った自信があるので温かいうちに食べて欲しいんです。」


その大川の言葉に甘えて僕はパンケーキを一口食べる。

「お、今日はいつもよりもふんわり仕上がってるな!」

「そうなんですよ。」

すごいですよねと言って、大川はふふんと胸を張ってくる。

そんな可愛い大川に明日はたくさん休んでもらいたい。

僕はスマホの予約画面を眺めながらそう思っていた。

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