ついに決定!

「そういえば、須井くん。私、伝えたいことがあるんです。」

そう言って大川は僕に何かを言おうとしたようだったが、その後でこう言ってきた。

「やっぱり少し後にしましょう。今は誰に聞かれてもおかしく無いので……。」

そう言って大川はお稲荷さんの方へ一礼をすると、そのまま僕を境内の外へと引っ張って進んでいく。

「ちょ、大川どこいくんだ?」

そう言うと大川は、須井くんも知っている場所ですよとだけ言って僕をグイグイと引っ張っていく。


「さて、着きましたよ。」

大川に引っ張られること数十分。着いたのは夕紅祭の時に花火を見た高台の上だった。

「ここなら人も少ないですし、もし人がいても花火の音でかき消されるので……。」

そう言って大川は花火が一番よく見える真ん中の席に座って、僕に手招きをする。

「花火でも見ながらゆっくり話をしましょう。」


花火かぽんぽんと上がり始める。

最初は小さな花火が少しずつ上がっていく。

やがて、大きな花火が何発も上がっていく。周りの音はほとんど聞こえない。

「さて、この環境なら大丈夫そうですね。」

そう言って大川は僕に1つのことを伝えてきた。

「お、おい……。マジで言ってるのか?」

僕はその言葉を聞いて反射的にそう聞き返してしまった。

「私が須井くんに嘘を着いてたことありますか?」

「そう言われると……いいえと答えるしか無いんだが……。」

「そういうことですよ。ようやくこれでお互いに夢が叶うんじゃないですか?」


そう、大川が話してきたのはついに大川の所属するアイドルグループが大きな会場でワンマンライブをするらしいのだ。

しかも、僕を関係者席で見れるようにしてくれるというものだった。

今まで僕は大川がmegumiとして活動しているライブをチケットがいつも取れずにオンラインでしか見たことがなかった。

いつかは間近でこの目で見てみたいと思っていたが、まさか本当に叶うとは。

今回は大川の単独ではなく、事務所グループでの公演らしい。


「どうして私が聞かれちゃまずいと言っていたかわかりましたか?」

大川はそう言って口のところに指を当てて、他の人には内緒ですよと言ってきた。

「勿論、言うはずがない。大川が本当に伝えたいと思った人にだけ伝えてくれ。」

「はい。今のところは須井くんだけに教えることにしてます。小松さんと村川くんはちょっと検討してますけど……。」

そう言って大川は登っていく花火をじっと眺めている。

「綺麗ですね……。この花火みたいに沢山の人の視線をもっと集められるようなアイドルになりたいです。」

大川はそう言って天に手を伸ばしていた。

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