過去のこと
「ほら、早く早く!遅れちゃうよ2人とも!」
「そんなこと言ったってこっちは着物があるので……小松さんたちもそんなに急がずに持ち物確認した方がいいですよ?」
僕と大川は両親それぞれの助けを借りながら、着物を着ていく。
「いやぁ、淳は相変わらずいい顔してるなぁ!」
父親はそう言って僕の着物を着付けていく。
「やめてよ、少し恥ずかしいから。」
そういうと父親はハハハと高笑いをしながら、僕の髪の毛をセットしていく。
「須井くん、こっちは用意できましたよ。そっちはどうですか?」
「こっちも用意できたぞ。行こうか。」
玄関を出ると、僕たちを待っていた2人は目をまんまるにしてこちらを見てくる。
「おいおい……マジのカップルの見た目じゃねぇかよ……。似合いすぎだろお前ら……。」
「うわ、2人とも眩しい……。うちにもその素晴らしい容姿を分けてよ〜……。」
そんな感じで2人は僕たちの方へと歩み寄ってくる。
「2人も次回から着物持ってきたらどうだ?着付けとかはうちの両親がやってくれるからさ。」
神社の方へと向かう道には既に多くの人がごった返しており、中々進めない。
「大川、一応迷子にならないように手、繋いどくか……?」
「あ、お願いします……?」
お互いに少し躊躇っているのか含みのあるような言い方になってしまう。
「あ、須井くん。りんご飴の屋台ですよ。」
誤魔化すためなのか、それとも目に入ったからなのかはわからないが大川はそう言って出店のりんご飴のお店を指差す。
「この豊作祭は各地の特産物を集めてそれを加工して屋台で売り出してるからなぁ……。ここの土地の力がすごいんだってさ。」
「だからわざわざ屋台に都道府県の名前が貼られているんですね?」
「そういうこと。それで、りんご飴買うか?」
そう聞くと大川は少し悩んでから買います、と答えてきた。
「大川ってりんご飴好きだよな。」
りんご飴を美味しそうに食べる大川を見て僕はそう尋ねる。
「はい。小さい頃たまにお手伝いさんがこっそり作ってくれたんです。本当はその頃の家のルールだとダメだったんですけどね……。それ以来思い出してたまに食べたくなるんです。」
「なるほどな……。そのよく出てくるお手伝いさんってのは誰なんだ?」
「私も名前は知らないんです。名乗ってくれなくて……。でも、昔は私を唯一可愛がってくれている人でした。」
そう言って大川は僕に昔の話をしていいですかと付け足してきた。
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