懐かしの場所
「お、待ってたぞ!」
父親の書斎から小屋の方へと行くと、トランプをしていた村川が僕の方へ手を振ってくる。
「ほらほら、うちらと一緒にちょっと出かけよ〜!」
そんなことを言われてスマホ以外の荷物も持たずに4人で小屋から出てきたが、どこへ行くかも何も知らされていない。
「それで、どこ向かってんだこれ?」
そう聞くと大川が内緒です、とだけ言って僕の背中を押してくる。
今向かっている方向は昔は神社があったが、もう何年も前に無くなってしまい何もない更地になっている方向だ。
「なんかこの前古民家に泊まった時にそこのおばちゃんに教えてもらったんだよ。ここの奥なら星がよく見えるって。」
「今日は流星群の日なんだって〜。うちはもうお願い決めたけど、みんな決めた?」
流星群か。お願い事を流れている3秒の間に願い事を言うと叶うと言われている。
『付き合うとかそういうのはどうなんだ?』
父親の言葉が頭の中でまた浮かび上がってくる。
「いっそのことお願いしてみようかな……。」
僕は誰にも聞こえないような声量にして、そうボソッと呟く。
「須井くんもお願い事を決めたみたいですね。無事にお願い事が通るといいですね。」
神社の跡地と聞くと少し縁起が悪いように聞こえてしまうかもしれないが、夕紅祭りなどを行なっている今の神社が移転をする際にしっかりとおあ祓いをしたらしいので、エセオカルト現場のような状態になっているというわけだ。
「なーんだ、幽霊だとかなんとか噂されてる土地だけど全然綺麗じゃねぇか。」
そう、村川のようにきた人はこう呟いてそそくさと帰ってしまうのだ。
しかし、僕も小さい頃はよくそうだったのだが、ここに望遠鏡を持ってきてみんなで星を見た李、春にはお花見のイベントが公式的に開催されたりと、地元の人にとっては馴染み深い場所なのだ。
道が暗いので分かっていなかったが、確かにこの道には見覚えがある。
「よし、着いたぞ。ここだって話だけど……。あんま見えなくね?」
そう言って村川は空を見上げるも、木に邪魔されて見ることができない。
「もう少し奥に行ってみたらどういうことかわかると思う。」
僕はそう言って3人を神社の本殿跡地の方へと案内する。
「な、何これ!?え、うちここまで凄さはプラネタリウム以外で見たことないんだけど!?」
小松が声を上げるのも無理はない。明かりがほぼないこの場所では暗い星もくっきりと見えるのだ。
「あ!見てください!」
大川が指差した先には流れ星。
僕はそっとさっきのことをお願いした。
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