将来・過去

「淳、最近は元気に過ごせているようで良かった。」

夕食後、僕は父親の書斎で2人で話をしていた。

大川と小松、村川の3人は小屋の方に先に戻って行った。

「まぁ、大川と小松、村川のおかげかな。あの3人のおかげで充実した毎日が送れている気がする。」

そういうと父親はそうかと言って机の上に置いているコーヒーを喉に流し込む。

「それで、大川さんとの関係はどんな感じなんだ?」

急にきた父親からの質問に僕は飲んでいたコーヒーで咽せてしまう。

「え、いや急にそんなこと聞かれても……。」


「あー、聞き方が悪かったか……。こう……付き合うとかそういうのはどうなんだ?」

もっとダイレクトに聞いてくるようになってしまった。もうここまでくると答えるしかない。

「うーん……。一応形式上はそうだけれどもって感じだけどそんなに普段と変わってないな。」

そういうと父親は一瞬フリーズしてからこう呟く。

「いや……昔お母さんと俺が付き合った時を思い出したんだよ。結構状況が似ててさ。やっぱり親子なのかなぁと思って聞いてみただけだ。」

「2人の出会いも僕と大川みたいな感じだったってこと?」

僕は純粋な疑問をぶつける。


「うーん。少し違うんだけどな。なんか少し時間がかかってから実る感じが似てるなと思ってさ。」

「そういうことね。けど、大川はアイドルだしこれからもっと忙しくなってくるらしいんだ。それが落ち着かないことには動きをしようにもできないんだ。」

そもそも人気アイドルである大川と交流関係にある時点ですごいのだが、その先まで望むのは僕としては望みすぎではないかと思ってしまう。そんな思いがある僕としては今の関係のままでも十分なのだ。


「そうか……。まぁ、他人の関係に口出しするのも良くない。それに親とはいえ好奇心で失礼なことを聞いてしまったな。ごめんよ。」

「いや、心配してくれてるのは嬉しいよ。ありがとう。」

ふと本棚に目をやる。下の方を見ると、昔僕が夢中になって読んでいた本がまだ本棚に残っている。

「あの本、まだ取ってあるんだ。」

「そりゃあそうだろ。淳が本を好きになった入り口の本だからな。捨てられるわけがない。」

父親は本を大量に買う傾向があり、本棚から溢れてしまうのでよくもう読まない本は処分しているのだが、まさかこの本をずっと取っていたとは思わなかった。

「この本、家に持って帰ってもいい?」

そう聞くと父親はにっこりと頷いてきた。

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