見違えるように
「ここだけど、正直中がどうなってるかは親に任せたから僕も初めて見るんだ。」
恐る恐る扉を開けてみると、なんと石造りだった床にはラグが敷いてあり、机や椅子に小さなカセットコンロまで置いてある。
「すげぇ……生活はできそうだな……。」
問題のベッドだが、昔僕たちがよく座っていた大きな木箱を再利用したようで、綺麗になった木箱の上には布団が敷かれている。
最初に送られてきた時は絶望的な汚さという印象しかなかったこの小屋が新築同様のように綺麗になっているさまに僕はただただ驚きが隠せなかった。
「適当に整えただけだから汚く見えるかもしれないけどごめんなさいね……。でも、清潔なのは間違いないから。」
僕たちが中を見ていると、入り口から母親がそう言ってくる。
「よく数日でここまでできたなぁ……。」
僕がそう呟くと母親はここまでにするまでの大変さを語り始めた。
「本当大変だったのよ?お父さんは仕事があるとか言って中々片付けの手伝いに来てくれないからほぼ1人でやっていたようなものだったのよ……?」
そう言って頭を抱える母親に大川がフォローを入れる。
「でも、ほぼ1人でここまでやったのだとしたらすごいですよ……。過去に私が須井くんの部屋を掃除した時なんか2人でやりましたもの……。」
「あら、やけに部屋が綺麗だなと思ってたら大川さんと一緒に掃除してたのね。もうそんな時期から一緒にいたなんて……お母さん感激だわ。」
早速自分のゾーンに入り込んでしまった母親に、僕と大川は苦笑いしながら反応をしておく。
「あ、そこのカセットコンロとかは自由に使って大丈夫だからね。夜にコーヒーとか飲みたくなった時とか使ってちょうだい。」
急にゾーンに戻った母親はまた小屋の中の設備の説明を続ける。
「お風呂だけは向こうの家の方に行かないとないからそこだけはごめんなさいね。」
そんなこんなで説明が終わると、母親はまた家の方へと夕飯の用意をしなきゃと言って戻って行った。
「あ、私も手伝います……!」
「僕も行く……!」
大川に続いて僕も母親を追って家へと向かう。
家に入るとなにやら揚げ物をしている匂いがしてくる。
「あら、2人ともご飯はまだよ?」
そう言って母親は山菜のようなものを天ぷら粉につけて揚げている。
「いや、手伝いに来たんだよ……。」
そう言うと母親は目を輝かせ始める。
またゾーンに入ってしまったようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます